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【社説】

中国の国産空母 覇権唱えぬとは言うが

 中国は初の国産空母の試験航海を実施した。習近平国家主席は「永遠に覇権を唱えない」と言うが、原子力空母建造計画も浮上している。中国の軍備増強が地域の緊張を高めることを懸念する。

 二〇一三年に着工した初の国産空母は今月中旬、大連港を出航し試験航海した。動力設備の信頼性などの確認が目的とみられる。中国メディアは計画を一年前倒しし、一九年に就役すると報じた。

 中国はウクライナから購入した中古空母を改装した「遼寧」を一二年に就役させた。上海ではさらに先進的な装備を持つ二隻目の国産空母を建造中との情報もある。

 国産空母の建造について、中国筋は「主権と海洋権益を守る重要な手段」との見方を示すが、それだけではあるまい。

 軍のトップでもある習氏は今年四月、南シナ海で開かれた海上軍事パレードを閲兵し「世界一流の海軍建設」を唱えた。

 矢継ぎ早の空母建造は、世界最多の十一隻の空母を保有する米国に対抗し、空母を「世界一流の海軍」の中核と位置づけた軍備増強策であろう。

 「遼寧」は太平洋や南シナ海で戦闘機の発着訓練を繰り返し、中国軍は昨年夏から台湾を周回するように戦闘機を飛行させている。

 台湾への威嚇を強め、東南アジア諸国と領有権問題を抱える南シナ海で実効支配を強める行動をエスカレートさせるなら、アジア地域の緊張は極端に高まる。

 習政権二期目がスタートした昨年秋の共産党大会で、習氏は「歴史的三大任務」の一つとして「世界の平和の擁護と共同発展の促進」を掲げた。

 習指導部は発展継続には「平和で安定した周辺環境が必要」と強調している。それならば、大国の威信を誇示するような軍備増強で周辺国に疑心を抱かせるようなふるまいをするべきではない。

 〓小平時代に軍近代化を進めた劉華清・元党中央軍事委副主席は空母建設を「海軍の悲願」とし、「もし中国が空母を建造しなければ死んでも死にきれない」と述べたという。だが、〓氏は低姿勢で周辺国と対立しない「韜光養晦(とうこうようかい)」路線を取り、江沢民、胡錦濤の両国家主席も空母建設に抑制的な姿勢を続けた。

 周辺国は、空母建設を習政権が「強軍路線」にかじを切った象徴とみて不安を募らせている。「覇権を唱えぬ」との言葉は、額面通りには受け止められぬだろう。

※〓は、登におおざと

 

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