- ( 1 ) 産経が『米兵日本人救出デマ』の記事を削除した同日、BuzzFeed が「産経を批判する側にもフェイクあり」と語る根拠とは !?
- ( 2 )「唯一の報道検証の専門サイト」を自認する日本報道検証機構 (GoHoo) は、どんなファクトチェックをしているのか !?
唯一の報道検証の専門サイトを自認する日本報道検証機構 (GoHoo)、もちろん熱いエールを送りたいところだが、しかし、ファクトチェックを担うというこの GoHoo サイトがどのような検証活動をしているのか、ちょっとつっこんで GoHoo を検証してみたい。
( 1 ) 産経が『米兵日本人救出デマ』の記事を削除した同日、BuzzFeed が「産経を批判する側にもフェイクあり」と語る根拠とは !?
2月8日。
名護市長選挙をはさんで、やっと2か月後、産経新聞が『米兵日本人救出』が事実確認していなかったことを認め、謝罪と記事の削除をした。
その同日、BuzzFeed が、「産経新聞をフェイクニュースと批判する側も、フェイクを流してしまった」という記事を書いた。
しかし一体どのメディアが2か月間、あの産経記事を批判したのか、そして産経に関するフェイクを流したか、そのソースは書かれてはない。
BuzzFeed が引用しているのは、元産経新聞の記者で、今は NPO 日本報道検証機構 GoHoo の立上げ管理人をしている楊井人文の発言である。
2012年3月、GoHooの開設・運営を主な目的として、元産経新聞社記者・弁護士の楊井人文が中心となって立ち上げ、同年11月には一般社団法人へと法人化した。
いや、むしろ沖縄2紙以外に、産経新聞のデマを積極的にファクトチェックしようとしたメディアや機構が、実際にあっただろうか。
楊井氏が主宰する GoHoo「日本報道検証機構」は、産経のフェイクニュースをファクトチェックしようとはしなかったのか。
以下、楊井氏の主張を読んでみよう。
<< 抜萃 >> 沖縄2紙を「日本人として恥」と批判した産経新聞の記事削除 問題がはらむ危険性とは BuzzFeed
批判する側にも「フェイク」が
政治家や著名人、メディア報道などのファクトチェックを推進するNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」事務局長で弁護士の楊井人文さんは、2月8日に都内で開かれた会見で、一連の問題についてこう言及した。「産経新聞が十分な取材をせず、不確実な情報のまま沖縄の新聞を『日本の恥だ』と強く批判したことは、非難に値することです」
「産経新聞の沖縄をめぐる報道はネット上で批判されました。当然といえば当然です。しかしこの時、産経新聞に対する事実に基づかない批判が横行していたのです」
どういうことなのか
「根拠に基づかず、産経新聞が全く何も取材せずに報道したという情報が流されていたのです。多くは、『米軍にも取材も何もせずにデタラメを書いた』『何も取材せずに捏造していた』というものでした」
「しかし実際は、産経新聞は海兵隊に取材をしている。海兵隊も当初は『日本人を救助した』というツイートを流していて、米メディアも報道していたのです」
懸念される分断
実際、産経新聞の検証でも楊井さんの指摘と同様のことが記されている。本紙那覇支局長は「トルヒーヨ氏の勇敢な行動がネット上で称賛されている」との情報を入手。救助を伝えるトルヒーヨ夫人のフェイスブックや米NBCテレビの報道を確認した上で米海兵隊に取材した。この際、沖縄県警には取材しなかった。
米海兵隊第3海兵遠征軍からは12月6日に「別の運転手が助けを必要としているときに救ったトルヒーヨ曹長の行動は、われわれ海兵隊の価値を体現したものだ」との回答を得た。
産経新聞を「フェイクニュース」と批判する側も、「フェイク」を流してしまった、ということだ。楊井さんは、この一連の現象が「フェイクニュースについて話す人たちが、ファクトチェックをしようとしていない」例だったと指摘。こう憂いた。
「私が危惧を覚えるのは、事実に基づかない発言や報道で、今回のように異なる立場の人たち同士が分断を広げていくことにあります。これが、いわゆるフェイクニュースの根本的な問題です」
「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)は、きちんと事実に基づいて議論できる社会を目指している。非常に難しい取り組みになるが、そういうことのできる仕組み作りをしていきたいと考えています」
元産経の記者だった楊井氏が、どれだけ古巣を大切にしているのかは知りようがないが、
まずここにはいくつか、ファクトチェックを専門とする日本報道検証機構の管理者、あるいはファクトチェックの専門家として明確にしなければならない大切なソースが欠落している。
下記にいくつか検証したい。
A. 揚井氏「産経新聞に対する事実に基づかない批判が横行」とは、具体的にどの社の記事か明示せよ。
「根拠に基づかず、産経新聞が全く何も取材せずに報道したという情報が流されていたのです。多くは、『米軍にも取材も何もせずにデタラメを書いた』『何も取材せずに捏造していた』というものでした」
記事を書く際、受身形は不正確で曖昧な表現になるので、回避するのがのぞましいが、楊井氏はここであえて受身形を使っている。受動態で書くならば、どの新聞社がそんな情報を流したのか、ソースを明記すべきだろう。
産経新聞のデマを突破した上記の琉球新報の記事を確認してみればよい。「謝罪も何もせずでたらめ書いた」『何も材せずに捏造した」などに該当する箇所は全くない。全く書いていない。それどころか、産経がどこで何を取材したか、きっちりと取材し二重三重に裏取りをとったうえで書いている。
何重にもファクトチェックを重ねてデマであることを証明しようとしてきた側が、そんな荒い言葉で産経記事を叩いたりするわけがない。
また BuzzFeed がファクトチェックの大切さを標榜するなら、「産経新聞を「フェイクニュース」と批判する側も、「フェイク」を流してしまった」とは、まずどの記事を指しているのか、それをしっかりと示してから語るべきだ。ソースがなければ、印象操作と同じである。
B. 揚井氏「産経新聞は海兵隊に取材している」というが、産経新聞は裏取り取材ではなく海兵隊からコメントをとっただけ。
これまで見てきたように、高木桂一氏はいつものように手登根氏から情報を仕入れたのち、警察にも裏取りせず、また、海兵隊からはこんな短く曖昧なコメントを受け取っただけだった。
これが、揚井氏のいう産経の「取材」の内容だが、
これは、一体「取材」なのか?
よく考えてもみてほしい。いったい何の裏取りの言質となっているか。まるで抽象的な黙示文学のように、すべてを示しているようで、具体的には何も示していない。
体裁よくいって、これは海兵隊の裏取りではなく、「感動的なコメント」をとってきたに過ぎないのだ。
もちろん、軍は宣撫活動を含め様々な情報戦略をとる。こうしたわざと曖昧にした抽象的な言葉が何を意味するか、理解できないのは、ジャーナリストとして致命的としか言いようがない。
C. 揚井氏、産経が「確認」したというが、その確認は「裏取り」でも「取材」でもない。
揚井氏はほかにも産経が「確認」したものとして、トルヒーヨ曹長の家族の SNS の書きこみや、NBC などを見たというが、そんなものは誰でも「確認」できるものであり、実際、我々ですらそれらを何度も「確認」した。だが、それは「裏取り」でもなく、ましてや「取材」ですらない。
高木桂一氏はつねにこういう「取材」を繰り返してきた。
D. 揚井氏の文脈でいくと、産経ではなく、むしろ産経を批判している者たちが分断を広げている、というように読める。
揚井氏と BuzzFeed は、産経に対する「根拠に基づかない」批判の例をひとつもあげることなく、産経新聞を「フェイクニュース」だと批判する側も「フェイク」を流し、分断を広げていると語る。
これはいったい、何を語っているのだろうか。
そもそも産経が拡散してきたデマとヘイトが、断続的に沖縄ヘイトとデマを醸造し続けてきたとき、本土メディアは一体何をしていたのだろうか。
遠い目で沖縄デマを眺めているだけの側が、沖縄デマやヘイトに対して声をあげる側を「根拠なし」と批判するのは簡単な話だ。
しかし、肝心の、日本報道検証機構は、この二か月もの間、一体なにをどう検証してきたのだろうか。
( 2 )「唯一の報道検証の専門サイト」を自認する日本報道検証機構 (GoHoo) は、どんなファクトチェックをしているのか !?
この揚井氏の日本報道検証機構は、日本のファクトチェック機構を担う新星として注目されてきたが、どのような活動をしているのか、現在までの活動をデータで見てみたい。
➡ GoHoo によると 誤報多しはダントツで朝日らしい。
今日現在までで GoHoo が検証した記事。誤報記事がダントツで朝日新聞が多いというのは、どういう基準で検証対象記事を選んでいるのか、どうやら GoHoo は産経新聞にとても甘いようである。
➡ GoHoo が行ってきた沖縄記事ファクトチェックはカテゴリー別でわずか10件
驚きだが、GoHoo が行ってきた沖縄関連「誤報」チェックはカテゴリーでみると、わずか10件。
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➡ GoHoo の「ファクトチェック」によると「在日米軍基地の7割超が沖縄に集中しているという言い方は間違い」らしい
たとえばこれだ。
また、「在日米軍基地の7割超が沖縄に集中している」という言い方は間違いです。「在日米軍基地の面積の7割が」というのが正確な表現で、それはハンセン、シュワブなどの広大な海兵隊基地と演習場が置かれている結果なのです。いかにも主要な米軍基地の機能の7割もが沖縄に集中しているような言い方は、日本のマスコミが好んで使ってきた誤った表現なのです。
このように、ナイ氏の言説は戦略的根拠地・日本列島に展開する米軍基地の実態を把握しておらず、「在日米軍基地の7割超が沖縄に集中している」という表現も、日本のマスコミの言い方に乗っかっている面があることを知る必要があるのです。
朝日新聞は、そのナイ氏を「対日政策に詳しい」としていますが、まるで軍事専門家のような扱いです。これでは誤解を増幅するだけです。
はい!?
どうやら、GoHoo によると「在日米軍基地の7割超が沖縄に集中しているという言い方は間違い」らしい 。それでこの記事はフェイクニュースなのか !?
しかも、しっかりと読んでもらいたいが、ナイ氏は「機能の7割」など、どこにも書いていない。もう、ここまでくると、朝日新聞に難くせをつけているとしか言いようがない。
ここまで細かいチェックをしておきながら、びっくりするのは産経の沖縄ヘイトデマ記事へのチェックはどこにあるのか、ということだ。
➡ Gohoo は産経の沖縄フェイクを検証してきたのか
最近の GoHoo ツイッターアカウントを見てみよう。
報道ステーションや朝日新聞に対しては相変わらず手厳しく批判。
しかし、どうも不思議である。
この GoHoo リストには、産経による一連の「米兵日本人救出デマ」、「宮古島女性市議デマ」、「米軍基地産業に依存デマ」、など、ひとつもこの中に入っていないのだが、GoHoo にとって産経は免罪特別枠か、腫物か何かだろうか。
唯一の報道検証の専門サイトを自認する日本報道検証機構 (GoHoo)、もちろん熱いエールを送りたいところだが、
公平で中立であるべきファクトチェック機構が、もし産経を「特別扱い」しているなら、大問題だ。
少なくとも、揚井氏の、産経デマが吹き荒れたあの2ヶ月間、「産経新聞に対する事実に基づかない批判が横行」していたという話は「誤報」である 。
12月9日の産経「米兵日本人救出」記事から、2月8日の謝罪と訂正記事にいたるまでの2か月間、
圧倒的に横行していたのは、
沖縄ヘイトと、
沖縄2紙への事実にもとづかない批判だった。