人口減少社会の到来は避けられない。二〇四〇年には高齢者数がピークに達し、医療と介護を支える人材不足が深刻化する。あまり時間がない。長期的な社会保障の姿の検討を始めるべきだ。
医療と介護のサービスは支え手がいなければ提供できない。人材確保が最大の課題になる。
四十代の団塊ジュニアが六十五歳を迎える四〇年ごろは、総人口が今より約千六百万人減る。一方、七十五歳以上は約六百万人増え約二千二百四十万人でピークを迎えると推計されている。
団塊世代が七十五歳を超える二五年の次に迎える少子高齢化の節目で「二〇四〇年問題」と呼ばれる。これまでは二五年に向け社会保障改革と財政再建を実行する「社会保障と税の一体改革」で示した将来像しかなかった。
六月にまとめる「骨太の方針」を検討している政府の経済財政諮問会議が、やっと四〇年の社会保障の将来見通しを公表、議論のテーブルに載せた。医療と介護の効率化を進めても費用は対国内総生産(GDP)比で今より増える。税や保険料など負担増の再検討は避けられまい。
示された将来見通しの中で最大の課題は人材不足だ。医療や介護などの分野で必要な就業者数は千六十五万人に上る。就業者全体の五人に一人が就業しないと支えられないことになる。人手不足で他業種と人材の取り合いになるだろう。待遇も他業種より低いままでは人手が確保できず、サービスの質と量を維持できなくなる。
厚生労働省は、高齢者の健康寿命を延ばして医療と介護の必要量を減らし、ICT(情報通信技術)やロボットの活用などで生産性を上げ必要人員を減らすことを目指す。だが、仮に実現しても必要な人材はまだ九百万人を超える。不十分だろう。
社会保障の財源は企業業績や現役世代の賃金が上がればその分増える。成長産業の育成など経済成長につながる対策とも連動している。安倍政権はそれをどう育てるのか明確な処方箋を示していない。議論が手詰まりのまま放置することは許されない。
社会保障を支える対策の検討はこれからである。国民的な議論の場をつくり検討してはどうか。
一体改革では与野党が合意をまとめた。社会保障改革は負担増など痛みを伴う可能性があるだけに政治の責任は重い。明確な未来像が示されなければ、国民は判断できないし、協力もできない。
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