第143.5話 ステータス偽装
レベルアップした異能の効果回です。
実質本編ですが、ページ数と話の区切りの都合上短編になりました。
よくあるステータスものの偽装とは趣が異なります。
「さて、そろそろ<
俺の異能の1つ、<
慌ただしかったから後回しにしていた検証をそろそろ始めようと思う。
「そう言えば、ご主人様の異能がまたレベルアップしているのよね」
「今度は一体どんな非常識が出来るんですの?」
説明する前からセラは非常識な事だと決めてかかっている。解せぬ。
「まあ、非常識な事には違いないでしょうね。ご主人様ですから」
《ですからー》
「…………」
テンプレ台詞をミオに取られたさくらが絶句している。
「それで、このステータス偽装と言うのは何が出来るんだ?」
他のメンバーもいるので、声に出してアルタに確認する。
A:ステータス表示にある項目の属性情報を偽装することが出来ます。項目自体を偽装することも可能です。
何か、プログラミングみたいな単語が出てきたな。
「項目とか属性って言うのは、プログラミング用語のオブジェクトとかアトリビュートと考えていいか?」
A:概ね間違っていません。
そう考えると、ステータス表示と言うのも見え方が変わってくるな……。
「ご主人様、プログラミングとか分かるの?」
「意外です……」
聞き覚えのない単語にマリアやセラは首を傾げているが、ミオとさくらは知っているだろう。ドーラ?ドーラは聞き流しているよ。
「ああ、元の世界で親友から『偏差値1でも分かるプログラミング講座』と言うのを受けた事があるから、ざっくりとした事なら分かるぞ」
「ターゲット層のレベルが低すぎない?」
「それくらい分かり易いって事だ」
親友、東の感性は理解できないところがあるからな。
もう1人の親友である浅井の感性も同様だ。……なんだろう、『お前が言うな』と2人から言われた気がする。
「とにかく、そう考えると大よそできることが予想できるな」
例えば、コレをこうして……。
「出来た。俺の称号に『剣帝』があるように偽装してみたぞ」
名前:進堂仁
称号:転移者、異能者、ダンジョンマスター、超越者、剣帝(偽装)
「これで<剣帝>のスキルが使えるようになるんじゃないか?」
A:使えます。
思った通り、ステータスを偽装すれば、項目の参照を偽装できるようだ。
あくまでも参照の偽装なので、偽装した物の中身、つまり能力は得られない。
空箱にマジックで『剣帝』って書き込んだようなものだ。『剣帝』の称号があるよ!とは言い張れるが、その中身は空っぽなのである。
「仁様、<剣帝>のスキルを使ってみますか?」
「ああ、別に使いたかったわけじゃないからいいよ」
マリアの問いかけに首を横に振って返す。
別に<剣帝>スキル自体に興味があった訳じゃない。俺の持ってない称号とスキルの組み合わせだったから試しただけだ。
「へー。面白いわね。普通、ステータスの偽装って言うと、他の人から見えるステータスを偽装する物ってイメージがあるけど、ご主人様のは違うのね」
「もちろん、そう言ったことも出来るんだろうけど、そもそもこの世界では、ステータスを認識している者の方が少ないし、他人のステータスを見られる奴はもっと少ないだろうからな」
むしろ、他人のステータスをそこまでガッツリ見える奴に、下手な偽装が通用するとも思えない。例えば、織原とか……。
俺は思いついたステータス偽装のアイデアをいくつか試してみる。
「後はただのスキルを
「そうですね。もし何らかの理由で、『祝福の宝珠』に触れることになったら、勇者ではない事がバレてしまいます……」
『祝福の宝珠』は俺とさくらも触った事のある、
(ギフト)がただのスキルとなった元勇者達は、
折角だから、勇者の
ついでに言うと、勇者の称号を持たないとダメージが軽減される<凶星>等のスキルも偽装称号で誤魔化すことが出来るようだ。
要するに魔王を倒すのは偽勇者でも良いと言う事になる。
「そう言う意味では、いつもの通りタイミングのいい効果だったと言う事ですわね」
「仁君ですから……」
《ですからー》
今度はさくらが面目躍如したようだ。もしかして、狙ってた?
「とは言え、俺自身にとってはそれほど大きなメリットは無いな」
役には立つだろうが、俺個人として嬉しいものではない。
「何で?称号とセットのスキルが使えるようになるんでしょ?便利じゃん」
「いや、そんな小細工して使ったスキルに価値なんてないだろ?面白くも無い」
ミオの疑問に答える。
ネタとしては面白いかもしれないが、小細工でスキルを使えるようになっても何も嬉しくないし、誇れない。試しに1回やるくらいで、主力にすることは絶対にないだろう。
「ご主人様的に面白くないんじゃ、メリットにはならないわね」
「そう言う事だ」
便利だろうが何だろうが、面白くない物は俺にとっての評価は低くなる。
「他の使い方としては、配下にある奴隷の称号を消しておいたり、ミラと成瀬母娘の年齢を元の年齢にしておくとかかな。それほど意味があるとは思えないけど……」
奴隷の称号を参照したり、年齢を参照したりする
そう言う
A:あるにはあります。
あるのか……。やっておいた方が良さそうだな。
余談だが、後にその事を
仕方ないので、称号を隠すのは基本的に任意にして、表舞台に立つクロード達一部の配下だけを強制にした。他にはトオルとカオルの姉妹とかルージュと言った王族組だな。
「ご主人様が称号の偽装に興味が無いのは分かったけど、ミオちゃんは使ってみたいスキルがあるのよね。ご主人様お願い!使わせて!」
「ミオがそこまで頼むって、一体何のスキルだ?」
「もちろん、『ダンジョンマスター』の称号と<迷宮支配>のスキルよ!すっごく興味あったの!」
目をキラキラさせていうミオに残酷な真実を告げる。
「悪いが、<迷宮支配>は偽装した称号じゃ使えないぞ」
「何で!?」
ミオが『ガーン』と言う文字が出そうな勢いでショックを受ける。
「『ダンジョンマスター』と<迷宮支配>は相互に参照し合っているんだ」
「???」
「つまり、両方とも本物じゃないと使えないんだよ」
言っている意味が分からない様子なので、もう少しかみ砕いて説明する。
「『ダンジョンマスター』の称号は<迷宮支配>のスキルがあることを確認しているし、その逆も確認をしている。加えて言うと、相手から確認されたことも確認しているからな。下手な誤魔化しは一切効かない。セキュリティが固いとでも言えばいいかな」
「そんなー……」
ガックリするミオを横目に今度はマリアが挙手をしてきた。
「仁様、<剣帝>の方は何故使えるのですか?」
「ああ、<剣帝>はセキュリティが弱いみたいだ。<剣帝>スキルと『剣帝』の称号入手は同時だから、<剣帝>が移動した時、最初の1回だけ称号を参照しに行くようだ」
ちなみに<迷宮支配>は能力を使うたびに参照しに行きます。
「たったの1回しか確認しないのですか?」
「そうだ。例えば今、マリアの『剣帝』の称号を偽装で消しても、普通に<剣帝>スキルは使えるぞ」
「何そのガバガバセキュリティ……」
ミオが呆れたように言う。
思っていた以上にスキルによって性質って違うみたいだね。
「ついでに言うと、『剣帝』と言う文字列で参照しているんじゃなくて、称号の中に『剣』と『帝』がどこかにあれば良いっていう判断基準だ」
例えば、『皇
「酷い手抜きですね……」
「ガバセキュリティここに極まるって感じね」
「ああ、元々評価の低かった<剣帝>スキルの評価がさらに下がったからな」
そして、相対的に<迷宮支配>の評価が上がる。
元々、<迷宮支配>の株はストップ高だったけどね。
マリアには悪いが、<剣帝>に食指が動かない訳だよ。
「でも、この異能のおかげ?せい?で、スキルや称号への見方が変わったわね」
「ああ、その点は評価しても良いと思っている。今は大した使い道が出なかったけど、意外と悪よ……コホン、活用できそうな能力だよな」
性別や種族を偽装して専用スキルを使う。
種族とスキルを誤魔化して魔王軍四天王ごっこをする。
年齢を偽装して子供料金でバスや電車に乗る。
可能性は無限大だ!
「さあ、皆もこの異能の使い道を考えてみよう!何か面白い使い道があったら、随時受け付けるから。アイデアを採用された方には豪華粗品!」
「誰に言っているの?何を言っているの?豪華なの?粗品なの?」
<
・ステータス欄にある項目を偽装できる。
・偽装の内容は「追加」、「削除」、「属性の変更」の3つ。
・効果、能力は得られず、参照される場合に誤魔化せるだけ。
作者に想像力を要求する恐ろしい異能でした。
セキュリティの話をしたのは、もし作者の想像もしていなかったような使い道が出来た時に「セキュリティ上できない」と言い訳をする為です。「調整中」。
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