『スクラム - 仕事が4倍速くなる"世界標準"のチーム戦術』という本を読んで面白かった部分を紹介したい。
『スクラム』の第五章「無駄は罪である」で、「一度に一つのことをする」という項目があった。
ここではマルチタスクがいかに無駄で、人間の脳の仕組みにマッチしていないかを説いている。
社会人になってから今まで、一度に複数のタスクを同時に回すことを求められてきた。
新人として配属されたとき、僕たちに業務を説明してくれた先輩は、
「うちの会社の人間はマルチタスクは当たり前だ。
皆が複数の仕事を回しているんだ」
と誇らしげに語っていた。
これは僕が新人の頃のチームに限らず、どの職場でも同じだろう。
社会人は、複数の業務を効率良く回していく能力が求められる。
それが当たり前だと思っていた。
そんな僕の常識にハッキリとNOを突きつけたのが『スクラム』だった。
僕たちは「マルチタスクなんて簡単だ」と思ってしまいがちだが、そもそも人間はマルチタスクに向いていない。
携帯電話で話しながら運転している人間がそうでない人間よりも事故を起こしやすい事実は、統計データが証明している。
自動車事故と携帯電話の関係について実験を行ったデヴィット・サンボンマツは2013年1月、NPRのブログの記事でこうコメントしている。
「人間は、得意だからマルチタスキングするのではありません。
注意力が散漫なため同時にあれこれやろうとするのです。
他のことに手を付けようとする衝動を制御できないということです」
『スクラム』では、優先順位をつけて、最も重要なものから一つずつ終わらせることを推奨している。
集中してやった方がいいひとかたまりのタスクは一気にまとめてやり、切り替えによるロスを防ぐ。
「TODOリスト」を作ることは否定しないが、全ての仕事に同時に手を付けてはいけない。
あれこれ手を付けて、中途半端に「半分できた」と言っても、それは何も生み出していないものと同じだ。
完了していないやりかけの仕事は、コストと労力がかかっていながら何も生み出さない。
まずひとつのタスクを終わらせることが大事なのだ。
正直に言うと、心の中ではずっと、作業の途中で別の会議が入ったり、複数の案件を頭を切り替えながらやりくりするのは非効率だと思っていた。
集中するたびに会議によってぶち切られ、会議後の疲れた状態からもう一度集中し直すのはどう考えてももったいないし、
一つのことに没頭していた矢先に別のタスクが降ってきて、その別のタスクにまたゼロから集中するのは間違いなく効率が悪い。
人間は機械のように急に100%の集中力を発揮できるわけではない。
また、一つのことを中断したら、再開するときは「思い出す」ことから始めなければならないため、それも効率が悪い。
結局、マルチタスクで複数の仕事を回しているように見えて、生み出している付加価値は案外大きくならないのが残念なところだ。
やった本人はたくさんの仕事に手を付けた気になれるが、結局作業は進まず、残業するハメになってしまう。
マルチタスクが非効率なのは業務に限らない。
何かを勉強するときも同じだと僕は思う。
僕の机の上には、山のように積み重ねられた本があった。
「あれもやろう、これもやろう」と片っ端から買った本である。
目の前に積まれた本の山を見ながら、ちびちびと色んな本をつまみ食いするような勉強をしていたときは、時間ばっかりかかった割に、何も身に付くことはなかった。
何かを身に付けることに成功ときは全て、一つのことに集中して、一気に最初から最後まで終わらせたときだった。
これは本当にそう。
だから、
「30分だけ金融の勉強して、次は30分英語。
終わったら15分読書して数学をやろう」
みたいな勉強は、ものすごく非効率だったと言える。
一番重要なものを決めて、一気に進めていかないと何も身に付けることはできない。
まとまった時間を確保し、一番大事なものにぶつけること。
それこそが、物事を習得するコツである。
これは僕が10年以上ずっと試行錯誤してたどり着いた結論だ。
もしこの記事を読んでくれている人がいるとしたら、
「中途半端につまみ食いする勉強方法」
には本当に気をつけてほしい。
受験勉強では万遍なく色んな科目の成績を上げていくほうが総合点が上がってよかったかもしれないが、社会人の勉強は受験勉強とは異なる。
中途半端な60点の能力を複数身に付けるよりも、100点の専門性を持っていた方が強いし、そもそも社会人は受験生のように潤沢な時間を勉強に投入することはできないのだ。
中途半端にやっていたら、60点も取れないだろう。
僕は受験勉強の癖が抜けずに本当に苦労した。
たくさんの時間を無駄にしてしまった。
中途半端につまみ食いするような勉強をしても、自信を持てるスキルはなかなか身に付かなかった。
一番大事なことに全リソースを投入すること。
限られたプライベートの時間で勉強するならなおさらだ。
優先順位をつけて、一つのことに全力を尽くすべきだ。
一つのことが身に付いてから、次の仕事に取り掛かることが大事だった。
- 作者: ジェフ・サザーランド,石垣賀子
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