自分をしっかり持っている上に、献身的なまでに人に寄り添おうとするところが、すてきだなぁと思っています。周りからの性的マイノリティに対する印象を自ら打破してきた努力によって得た強さであり、優しさなんでしょうね。
自分を持ちながらも、献身的なまでに人と寄り添う
ボクテ(藤堂 誠)の魅力は、どんなところだと感じていますか?
そもそもボクテは、アマチュア漫画家として「金沢の鬼才」と呼ばれていたほどの実力者。誰よりも貪欲にプロを目指し、秋風先生(豊川悦司)のアシスタント業務もひたむきにこなしている人物です。でも、自分のことだけを考えるのではなく、どんなときもアシスタント同士でフォローし合おうとするんですよね。本当に懐が深いなぁと思います。
ただ、自分のことに関しては、鈴愛ちゃん(永野芽郁)やユーコちゃん(清野菜名)に頼らず、弱い部分を見せようとしない。そういうところにも芯の強さを感じますね。ボクテの魅力でもあり、ちょっと心配なところでもあります。
「かわいげのある等身大の男の子」に
ボクテの「ゲイ」という設定に対しては、どのように向き合っていますか?
ゲイの描き方については、クランクインする前から監督とプロデューサーに何度もお時間をいただいて、ディベートを重ねてきました。僕にはこれまでにも違う作品で性的マイノリティの役を演じた経験がありますが、やはり絶対に“イロモノ”にはしたくなくて。作品全体から見たボクテの役割は果たしつつも、表面的にならないよう、責任を持って役を作っています。
たとえば、男性の心を持ち、男性のことを好きなボクテが、なぜ女性っぽいしゃべり方をするのか、という部分。80~90年代の性的マイノリティの方々を取りまく環境について調べたり、実際に当事者として当時を過ごした友人に話を聞いたりする中で、声色や口調を変える人それぞれに「意図」があると分かり、役にも反映させていただきました。
姿勢や所作は女性っぽく見えると思いますが、僕としては純粋に「美しさ」を心がけています。たとえば、漫画を描いているとき、ボクテは猫背にならず背筋をピンと正していたりしていますね。
トータルで見たボクテが、「かわいげのある等身大の男の子」になっていたらうれしいです。
同じ夢を持つ者どうしで頑張る、部活のような雰囲気
鈴愛、ユーコとのアシスタント同士のお芝居では、どんなことを意識していますか?
オフィス・ティンカーベルでは3人とも気を張って働きますが、秋風ハウスに帰ると等身大の若者どうし。かわいらしい掛け合いも、たくさんあります。同じ夢を持つ者どうしで頑張る、部活のような雰囲気を表現したいと思いました。
鈴愛ちゃんに対するボクテは、最初からウェルカムな姿勢ですね。序盤ではカケアミを教えてあげましたが、何気ないシーンでも鈴愛ちゃんをチラッと気にするような演技を取り入れています。
3人が仲よくなってからは、鈴愛ちゃんが女性として悩んでいる部分をユーコちゃんが支えて、ボクテは男性の視点から助言するイメージでしょうか。それぞれに役割があって、いい関係だなと思います。
ただ、ユーコちゃんがデビューしてからは、3人の関係も少し変わっていきますね。アシスタント仲間の中で誰がデビューできる、できないというのは残酷な話ですが、ボクテは人一倍、漫画家になりたい気持ちが強いので……。
ボクテは失敗にきちんと向き合い、這(は)い上がるはず
ボクテが鈴愛の『神様のメモ』のネタを盗み、秋風先生に破門されてしまいました。ボクテの行動を、志尊さんはどう思いましたか?
漫画家になりたいという貪欲な気持ちから、周りが見えなくなって、先急いでしまう……。いつもどおり優しいボクテのまま、誰にも相談せずやってしまったところに、リアリティを感じました。
お芝居に関しては、本当にボクテの気持ちの筋道が見えるようにしたくて。それもあり、序盤の優しいボクテの中にも、芯の強さを感じられるよう演じてきたところがありました。
いざ破門のエピソードになると、あとは振り切って、等身大の18歳を演じるだけだった気がします。突発的にとった行動で、人を喜ばせたり裏切ったりして、一喜一憂してしまう……。そんな18歳のリアルを表現できていたらうれしいです。
ボクテはオフィス・ティンカーベルを去ってしまいましたが、自分の失敗にきちんと向き合い、反省できる人であるはず。ドラマ全体のテーマにも通じるところですが、きっとまた這い上がれると思っています。ボクテが選んだ道を、これからもしっかり表現していきたいです。