【動画】アライグマ スパイダーマンもびっくりの能力

木だけでなく壁も登る。「害獣」と嫌われるが、意外な能力の持ち主だ

2018.06.15
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25階建てのビルを登るアライグマ。米ミネソタ州セントポール、人々が見守る中、未明になって屋上にたどり着いた。(解説は英語です)

 2018年6月12日、1匹の痩せたアライグマが世界中の人々の心をつかんだ。(参考記事:「動物大図鑑 アライグマ」

 アライグマは動画の中で、ミネソタ州セントポールのUBSタワーを懸命に登っている。数階登った時点で、行き詰まったように見えたが、アライグマは地上に降りるよりも登り続けるしかないと覚悟を決めたようだ。途中、仮眠を取ったり、毛繕いのために休んだりしながら、25階建てのビルを登り続けた。この間、このアライグマの動画がインターネットに氾濫した。

 13日未明、アライグマはビルの屋上に到達。キャットフードとケージに迎えられ、捕獲された。

 仮面をかぶったような顔をしたアライグマ。この動物の特技は登ること以外にもある。さっそく、アライグマが持つ能力を5つ紹介しよう。

1■とにかく適応能力が高い

 都市化が進むにつれ、私たち人間はアライグマの生息環境を変えた。森林はコンクリートジャングルとなった。環境の変化に適応できない生物が多い中、アライグマは順応しているようだ。特に、抜け目のなさでは、都会のアライグマのほうが田舎のアライグマより上だ。

 カナダ、トロントにあるヨーク大学の心理学教授スザンヌ・マクドナルド氏は2014年、ふたが付いたごみ箱の底にキャットフードを置く実験を行った(マクドナルド氏はナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラー)。田舎のアライグマはごちそうのにおいを嗅ぎつけると、ごみ箱の底を目指した。一方、都会のアライグマは、ごみ箱のふたに襲いかかった。(参考記事:「【動画】なぜか進んでバケツに入るアライグマ」

 マクドナルド氏は2014年、ナショナル ジオグラフィックの取材に対し、「私たちは絶えず、新しいごみ箱や鍵を生み出しています。彼らが生き残るには、私たちが使っているものを理解しなければなりません」と述べている。

2■感覚が鋭い

 かぎ爪が付いた小さな手足は、動画のとおり登るのに最適だが、この手足は驚くほど触覚が鋭いことは知られていない。

 アライグマは普通の哺乳類に比べ、手足に4〜5倍の感覚細胞を持つ。しかも、感覚信号の処理をつかさどる脳の部位のうち、実に75%が触覚に使われている。

 マクドナルド氏は過去のインタビューで、「彼らはものを見なくても、頭の中にイメージを浮かべることができます。文字通り、手足で見ているのです」と説明している。

3■とても賢い

「カラスと水差し」というイソップ物語の内容を模した有名なテストがある。まず、くちばしが水面に届かない水差しを用意する。小石を水差しに落とし、水かさを増やさなければ、水を飲むことはできない。カラスはこのテストに合格することで知られる。

 2017年の研究によれば、このテストに合格するアライグマもいる。(参考記事:「【動画】アライグマが有名な知能テストに『合格』」

 アライグマの実験では、シリンダーに水を少しだけ入れ、マシュマロを浮かべた。そして、研究者がシリンダーに石を落とし、水位を上げる。すると、8匹中2匹が同じ行動を取り、おやつを手に入れた。独創的な方法で、研究者たちを驚かせるアライグマもいた。そのアライグマはシリンダーを倒し、マシュマロを手に入れたのだ。

4■教え上手

 母親をまねて学ぶ動物は多いが、アライグマも例外ではない。2015年、アライグマの母親が子どもに木登りを教えている姿が動画に収められた。

 母親は何度も子どもを木につかまらせ、その間、落ちないように注意を払っていた。12日のアライグマの冒険が証明しているように、木登りの能力は森の中でも外でも生き延びるのに不可欠だ。

5■仲間の顔を見分ける

 仮面をかぶっているようなアライグマの顔は、人を楽しませるためだけのものではない。マクドナルド氏によれば、このおかげで、互いを見分けることができるという。(参考記事:「【動画】史上最高にかわいい? 3匹のアライグマ」

文=MAYA WEI-HAAS/訳=米井香織

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