【インタビュー&特集記事】
観光とIRとをテーマとした議論は多く見られる。民主党の前原誠司元代表は2009年の政権交代時には国土交通大臣に就任し、民主党においてIR推進法案の議論が進められた2012年においては、党の政策を取りまとめる政策調査会長の立場で党内におけるIRの議論を見守っていた。現在はIR議連の副会長でもある前原氏へ「観光とIR」「民主党におけるIRの議論」を中心に話を伺った。
――前原先生は民主党では代表、政策調査会長、政府でも外務大臣、国交大臣などの要職を歴任され、IRの議論においても推進の立場で長年にわたって民主党内はじめ議論をリードされてきました。はじめに、先生がIR推進法案に携わることになったきっかけについてお聞かせいただけますか。
前原 2009年になりますが、国交大臣を務めていた時に観光を所管していたということもあり、様々な方からIRに関するご提案を聞く機会をいただきました。そのため、当時私が任用した溝畑宏観光庁長官にIRについて研究するようにお願いをしましたが、私自身も海外の事例について研究を始めました。しかしはじめは頭が古かったもので、カジノというとギャンブルというイメージが根強く、裏の社会との結びつきなども連想してあまり良いイメージは持っていませんでした。ラスベガスについても、ギャンブル一本やりというような漠然としたイメージを持っていました。しかし研究を進めるにつれてラスベガスも最近は以前のイメージから大きく変わり、シンガポールなどを見てもIRとして家族で楽しめるリゾート施設に変わっているということがわかってきました。それ以来、IRについて国際観光に資するものとして、前向きにとらえるようになりました。ちょうど国交大臣のときにインバウンド(訪日外国人)を増やそうという機運が高まったことも、そのきっかけのひとつですね。
――先生は2009年の政権交代により、鳩山政権の国交大臣としてかなり思い切った政策をなさいましたね。
前原 それまでの公共事業をかなり減らしました。おそらく歴代の国交大臣の中で自ら公共事業を減らしたのは私がはじめてだと思いますが、日本は財政が厳しく、財政赤字がGDPの2倍を超えている状況にあります。人口減少・少子高齢化が進んでいるのであれば、出生率を高めるための政策や、安定した社会保障政策に対してしっかりと予算を回すべきでしょう。公共事業を増やすということはこれらの逆の発想ですから、私が国交大臣に就任した際に「やはり公共事業は抑制的にならざるを得ない」ということを国交省幹部の方々に訓示として申し上げました。
――インバウンドを増やそうとした理由は何だったのでしょうか。
前原 当時、公共事業を減らすことと同時に税金を使わない経済対策の検討を進めていました。まず、インフラとして新たに作るものは出来るだけ抑制し、その使い方に工夫を凝らす「作るから使う」へ転換を進め、利便性の向上を目指していました。その一方でお金がかからない成長戦略を検討するということで、インバウンド観光を重要政策と位置づけました。
――インバウンド増のための具体策として、どのような政策を行いましたか。
前原 ひとつはまずビザの緩和で、これは観光客数が多い中国から始めました。それからLCCの導入要請を全日空に対して行い、これがピーチ・アビエーションの設立につながりました。それから羽田空港が国際化を進めたことで、成田空港が危機感を持って発着枠を増やしてくれたということも影響があったかもしれません。また「作るから使う」ことのひとつの具体例として、オープンスカイ協定の徹底も挙げられます。当時、国際便の就航にはその都度2ヶ国間で協定を結ぶ必要がありましたが、オープンスカイ協定の締結を徹底することで、路線ごとに取り決めを行うことなく98ある日本国内の空港を海外の空港とダイレクトにつなげることができるようになりました。これにより自由にチャーター便や定期便を飛ばすことが可能となり、国際便を増やす環境を備えたことでインバウンドを増やしていく下地を作ったということです。
――大臣として様々な政策を打っていたのですね。
前原 そういった政策を打ち出していく中で、他にも何かないだろうかということで力を入れたのがメディカルツーリズムとIRです。IRについては我が党が政権与党だったので、古賀一成先生、小沢鋭仁先生をはじめとする先生方にIR議連を作っていただいて、政府とともに国会議員の側でも取り組んでいこうということで研究を始めていただきました。
――先生は海外におけるIRの事例についても研究されてきたということですが。
前原 IRを実際に運営しているシンガポールやマカオの事業者の方々と実際にお会いをして、現状についての説明を受けました。もちろんそれ以前から観光庁や溝畑長官からも報告を聞いていましたが、そういった方々が海外からお越しになった時に詳しくお話を伺うことで、理解がさらに深まりました。溝畑さんも2010年の観光庁長官就任以来、IRについて研究されていると伺っています。
――溝端先生は「IR推進協議会」の発起人のひとりとして、IR推進法案のバックアップをされていますね。今年5月に正式にIR推進協議会が発足したということは、IR推進法案成立への期待が高いことの証だと思います。
(第2回へ続く・月曜掲載予定)
(構成:佐藤亮平、小池隆由 企画・撮影:佐藤亮平)
カジノIRジャパン
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