バッテリー切れを防ぐためにも、バッテリーの特性を知り、賢く使うことが大切。バッテリーの基本と、新常識を身に付けておこう 多くの人が、毎日持ち歩いているスマートフォン(スマホ)。ビジネスパーソンなら、かばんの中にノートパソコンやタブレットを入れている人も多いだろう。これらの端末を屋外で使うとき、問題となるのがバッテリー。無駄に電力を消費すれば、肝心なときに利用できないといったこともあり得る。バッテリー切れを防ぐためにも、バッテリーの特性を知り、賢く使うことが大切だ。そこでバッテリーの基本と、新常識を身に付けておこう。
Q1 バッテリーは、なぜへたる?
バッテリーは充放電を繰り返しているうちに、自然と充電できる容量が減っていく。これはバッテリーの特性上仕方がない。約3年半前に購入したノートパソコン「レッツノートRZ4」を調べてみると、当初は3万6020mWhまで使えたものが、現在は2万7470mWhに減っていた。工場出荷時より24%劣化したことになる。
劣化の主な要因は、内部の化学変化。充電池の内部には、プラス極とマイナス極があり、この間をリチウムイオンが移動することで充電と放電を行う。だが、長く使っていると、プラス極に薄い膜ができ、イオンが通りづらくなり、電池の性能が下がる。
Q2 バッテリーの寿命はどれくらい?
一般的にバッテリーの寿命は、工場出荷時の最大容量の半分以下になったときといわれる。では、どのくらいで半分以下になるか? こちらもバッテリーの性能によって変わるが、メーカーの多くは300~500回程度が目安としている(最近は劣化をゆるやかにする改善により、600~800回使えるものもある)。
充電回数は、0~100%の充電で1回分とカウントする仕組み。継ぎ足し充電の場合は、合計100%分の充電で1回分となる。充電回数は、0~100%のように100%分の充電をすると、1回分としてカウントされる。また60%、40%と継ぎ足し充電した場合も合計して100%になると1回分となる。充電回数は、メーカーの付属ソフトなどを使って確認できる。
充電回数は、メーカーの付属ソフトなどを使って確認できるQ3 継ぎ足し充電はダメと聞いたことがあるけど?
バッテリーは使い切ってから充電しないとダメというのは過去の話。継ぎ足し充電がダメといわれていた理由は、「メモリー効果」と呼ばれる劣化現象があったため。ただし、これはニッカド充電池やニッケル水素充電池などでの話。現在主流のリチウムイオン充電池はメモリー効果が起こらないため、継ぎ足し充電をしても大丈夫だ。
その代わり、「0%」や「100%」の状態だけは避けよう。
バッテリーにとって良くないのは、過放電や過充電と呼ばれる、「0%」や「100%」といった状態が続くこと。最近のスマホやパソコンは過充電にならないよう、100%になる前に充電を自動停止するものが多い。
もうひとつ避けたいのは高温。充電しながら負荷の大きい動画視聴やゲームなどをしていると本体表面温度が30度以上、場合によっては40度近くになることもある。またスマホのケースをしたまま充電するのも、温度が上がる一因になる。ケースなどは外して熱がこもらないようにしたい。
Q4 素早く充電するコツはあるの?
急速充電に対応していれば、充電時間を短くできる。最近のほとんどのスマホは、アンドロイドもiPhoneも電流(A)を増やした急速充電に対応している。
パソコンのUSB2.0端子の給電規格値は電圧が5V、電流が0.5A。そのため以前のスマホは電流を増強しても1A程度でしか充電できないものが多かった。だが最近は、1.5Aや2A以上で充電できるものが大半。急速充電に対応した充電器やケーブルをそろえれば、パソコンのUSB2.0端子の規格値で充電するよりも3倍以上の電力で充電可能だ。
最新の機種では、電圧も増やす急速充電規格に対応している場合もあり、さらに高速に充電できる。
急速充電器を使うことで電流を1.5~2.4Aに増強し、端末に供給する電力を増やしている。ただし、ケーブルも増強した電流に対応している必要があるQ5 「USB PD」って何ができるの?
対応製品が増えつつあるのが、「USB PD 」と呼ばれるUSBタイプC端子を利用した規格。従来の電圧5Vのほか、9V/12V/20Vが使え、電流も最大5Aまで対応するので、最大100W の電力を供給できる。
また、規格では対応端末が1台電源につながっていれば、ほかの対応機器に数珠つなぎで電力を供給できる。映像出力、データの転送なども可能なので、将来的には利用するケーブルが1種類だけで済むかもしれない。
USB PD では充電だけでなく、映像出力、データ転送なども可能。規格では機器を数珠つなぎにして複数の端末に電力を供給できるQ6 最新iPhoneが対応したワイヤレス充電って何?
最新のiPhoneが対応したことで、再び注目を集めているワイヤレス充電規格の「Qi(チー)」。充電台内のコイルで電力を磁力に変え、端末内部のコイルで再び電力に変換して充電するという仕組みだ。煩わしいケーブルから解放されるだけでなく、充電台によっては同時に複数台の充電にも対応しているのが魅力。当初のチーは、最大出力が5Wだったが、最近は規格が拡張され、最大15Wで充電可能な製品も登場している。
Q7 バッテリーが膨らんできたけど大丈夫?
長く使っているうちにバッテリーが膨らんできた。このまま使い続けてもいいものか? 破裂したりしないだろうか?
確かに不安だが、実際のところ、バッテリーが膨らんでも正しく使う分には安全上の問題はないとしているメーカーがほとんどだ。
そうはいっても気分が良いものではない。今にもスマホやモバイルバッテリー表面のカバーを押し破りそうなほど膨らんでいるようなら、一度メーカーや販売店などに相談してみるといいだろう。
内部のバッテリーが膨張したモバイルバッテリー。このまま利用するのは怖い気がするが、ほとんどのメーカーは動作に支障がないとしているQ8 カタログにある駆動時間は信用できる?
パソコンのカタログに掲載されているバッテリー駆動時間は、2014年4月発売モデルから「JEITA 2.0」という測定方法による結果が推奨された。移行期には2.0と以前の1.0の結果を併記していたが、最近は2.0だけを掲載している。
測定方法は下図の通り。1.0は輝度を最低にできたり、無線LANもオフにできるなど、最大限駆動時間が延ばせる条件だったが、現行の2.0は無線LANに接続してフルHDの動画を再生するなど、以前の1.0より厳しい測定条件を採用。実利用時に近い条件となっているので、それなりに信頼できる結果といえる。
現行の2.0は無線LANに接続してフルHDの動画を再生するなど、以前の1.0より厳しい測定条件を採用しているため、実利用時とカタログ値との差が小さくなっているQ9 バッテリーは飛行機に持ち込めないって本当?
リチウムイオン充電池は発火の危険があるため、飛行機への持ち込みに一部制限がある。特に注意したいのは、モバイルバッテリーだ。原則、手荷物としての持ち込みだけ可能だ。容量についても100Whを超える大容量のものは1人2個までとなる。また、160Whを超えるものは持ち込むこともできない。
パソコンやスマホは機内に持ち込むだけでなく、預け入れも可能。ただし、預ける場合は、電源をシャットダウンしないといけない。
手荷物として持ち込めるモバイルバッテリーは、容量によって制限がある。一般的な5000mAh~2万mAhなら、何個でも持ち込み可能Q10 短時間充電対応ってどういうこと?
「1時間の充電で8時間駆動」などと、短時間充電対応をうたったパソコンをよく見かける。その仕組み自体は急速充電とほぼ同じ。残量が少ないときは電力をアップさせて一気に充電する。そして100%充電すると劣化するため、残量が多いときは電力を落としてゆっくり充電する。
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次回「モバイルバッテリー 端子は速度チェックし使い分けも」では、自分に合ったモバイルバッテリーを選ぶときに知っておきたい6つのポイントを紹介する。
(文 原如宏、田代祥吾)
[日経PC21 2018年5月号特集「充電の裏テク」を再編集]
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