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2018/06/15 21:20 - 2018/06/15

リズと青い鳥、繰り返し鑑賞後、感想吐き出しメモ【※ネタばれ全開注意!】Add Star


※6/15現在、13回鑑賞して0回の長文追記をしています。
( 現在、約1.1万文字、想定読破時間 : 22分 )
 

 
「リズと青い鳥」 の公開から8週がすぎました。
 
私は「響け!ユーフォニアム」の劇場版1,2が大好きで、
特にアニメ映画によく足を運ぶようになってから公開された
「届けたいメロディ」は何回もリピート鑑賞したのですが、
その頃から情報が入り始めていた「リズと青い鳥」については
 
「外伝、、なのかな? 響け!の雰囲気と違うから
 好きな方向とはちょっと違う作品になるのかも?」
 
と何となく距離を持って眺めていた状態でした。
 
その私が今は、リズ鳥8週目で13回の鑑賞をするまでに。

 

初回の鑑賞時は正直、かなり混乱をしていました。
凄いものを観てしまった、でも、アタマが追いつかない。
アタマが追いつかないというのは正しいのだろうか?
分かりにくいところなんて何もないのですよ、リズ鳥は。
でも アタマが感情を整理しきれない、そんな作品でした。
 
2週目に2度目の鑑賞をして、ようやく多少の整理が付く頃になると、
この作品が好きでたまらなくなりました。たった今好きになったんか。
それから、繰り返し、繰り返し、何度も何度も繰り返して、
この感情の洪水に呑まれる日々が続きました。
 
 
 
ではここから先は ネタばれ100% です。くれぐれも、くれぐれも
まだご覧になっていない方は、ここから先はご覧にならないようご注意ください。
 
---------- 8< ---------- キリトリセン---------- 8< ----------
 
 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
先輩、ネタばれとの相性、悪くないですか。
私は本編を鑑賞した人だけしか認めません。失礼します。
 
 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 


 
よろしいでしょうか!!
 
例によって吐き出したいだけなので推敲とか一切しませんぞ。
 
 
 
 
 
・「のぞみぞ尊い」とか言ったの誰だよどうすんだよこれ!!!
 
・みたいな、そういう気持ちです。尊い百合ですね、とかそういう気持ちで
観に行ったのが運の付き、やっぱり武田綾乃さんじゃないですか、
そういう意味でやっぱり「響け!」じゃないですか、なんですか、これ。
 
というのが最初の数回の感想でした。今はだいぶ落ち着きましたけど!! ふぅー・・。
 
 
・もうちょっと真面目に書くと、私はもう13回も「リズと青い鳥」を観ていて、
一度たりとも 「希美」視点 からブレることができません。100発100中です。
吹奏楽部を舞台とした青春部活物語であった「響け!」は、いつだって、
 
「真剣にやる、ってこういうことだ!」
 
というメッセージを私達に突きつけてきました。なんでダメ金じゃダメなの?
みたいな顔をしていた久美子が、本気で練習する部に変わってからはじめて
上手くなりたい!上手くなりたい!上手くなりたい!と泣きじゃくって
駆け回って、そこで初めて麗奈の本気が理解できるようになったように。
 
だから今回とにかく刺さったのは、希美がどんなに努力しても敵わないものを
眼前にしたときの絶望です。あの絶望は規模の大小はともかく体験したことが
ある人も多いでしょう。本気で何かに打ち込んで頑張って、
それでも「なんで、あんなのに敵うわけないじゃん」と思えるホンモノが現れる。
 
それがさ・・・なんで、なんで、みぞれなんだよ・・。
 
いつも隣にいた、あの内気な親友なんだよ・・。
 

・「物語はハッピーエンドがいいよ。」
 
何気ない言葉は常に自分に返ってくる。
希美とみぞれはずっと一緒にいて、ずっとすれ違ってる。
希美の手にはいろんなものが溢れていて、一方のみぞれの手には希美しかない。
2人の関係はずっとその繰り返し、前を歩く希美と、後ろからついていくみぞれ、
その前を歩いていた輝かしい希美の姿が、親友の手で崩されていくエピソード。
 
・希美は何を失ったワケでもないのです。ただ単に、みぞれが羽ばたいただけ。
希美は羽ばたきたかった。だから、他の何を手に入れても、自分が望む「それ」
だけは手に入れられなかった。親友は「それ」だけを手に入れた。
その親友が嬉しくなさそうなんだ、そんなのアリか。
 
・「傘木そういうとこやぞ」
 
というのはネットで良く見られるフレーズというか、みぞれを意図してか意図せずか
振り回して誘惑するイケメンホストのような希美の行動を茶化すフレーズとして
よく用いられています。傘木希美の「そういうとこ」の話はまたあとでしようか。
わたしとしてはむしろ
 
「鎧塚、そういうとこやぞ!!!!」
 
と何度スクリーンに向かって叫びそうになったことか。そういう話をしようか。
 
 
・色々すっ飛ばして、クライマックスの演奏が終わったあとのラストバトル(ハグ)。
希美が一度は廊下で避けた大好きのハグを、今度は理科室で逃げ場の無い
ところに追い詰めて強襲するみぞれ(言い方!)このときのやりとりは
既に多くの方が語っている通り。
 
「ありがとうみぞれ」
「ありがとう」
「ありがとう」
 
の希美の3連発で終了する、この「ありがとう」が「もういいよ」という拒絶を
含んでいるというのも、監督はじめ公式スタッフもすでに語っている通り。
このとき、3回目の「ありがとう」でね、みぞれがちょっと顔を赤らめて
嬉しそうな顔 をするんですよ。もう一度言いましょうか?
 
「鎧塚、そういうとこやぞ!!!!」
 
一瞬「仲直りできた!?」と喜ぶみぞれ。そのあとすぐ「よし!鞄取って来なきゃ!」
と精一杯の強がりを言って立ち去る希美。それを見てまたみぞれの瞳が曇る。
やっぱり元通りにはならないんだ、と気づくみぞれ。
おまえー! おまえー! 何も分かってなかったやんけ!
というのが希美過激派の主張ですほんとうにありがとうございました。
 
 

 
・このラストハグバトル。希美の瞳の動きが本当につらい。
振り絞るように「みぞれは、、努力家、だよ、、。」と返したあと、
みぞれの「希美の○○が好き」攻勢に何もいえなくなる希美。
その○○が好き攻勢の最初に ちらっと瞳がみぞれのほうを見る、ほんの一瞬。
 
「(みぞれは私の何処を好きって言ってくれるんだろう)」
 
期待しちゃいけない、期待して良いようなステージはもう終わってるんだ、
そう思っても希美は何かを捨てきれない。そういうとこある希美は。
この後も色々書くけど希美は自分で分かってて自分を追い詰めるとこがある。
 
みぞれが「希美の○○が好き」を連発するあいだじっと審判を待つ希美、
そして「希美の全部」と言われたときに放たれたリターンエースが。
「みぞれのオーボエが好き」。みなまでいうな、
「それで『全部』なんだね、私のフルートが好きって言ってくれないんだ」
という最後通告である。ところが、
 
このあと傘木希美は、待つんですよ。
 
私、何回目かの鑑賞から、この秒数を数えるようになりました。
じっと静かに待つ希美。画面がわざわざ水槽の中に切り替わる。
時間が経つことを示す描写。
 
その時間、なんと 「20秒」
 
・希美はそういう娘なんですよ。完膚なきまでに叩きのめされて、
絶対敵わないって教えられて、それでも「あとひと言」を待ってた。
 
「「私も希美のフルートが好きだよ」」
 
この言葉は、貰ったら貰ったで嬉しくない。言ってくれ、促してから
改めて発せられた言葉に、嬉しい要因なんか何もない。
でもね、それすら、それすら、みぞれは言ってくれなかった。
ずっとその言葉を待ってたのに気づけなかったんだね、みぞれ。
 
希美がたまりかねて吹き出して笑い出す。そんなにか、そんなに私はダメか。
「音大行くって言ってれば同等になれるかなって思って」
自虐の塊のようなことを言い出す希美は、最後に壮大な自虐をしたつもりだった、
私のフルートは悪くないって、誰か言ってよ、言って欲しいって
こんなに恥ずかしいくらいアピールしたよ、でも、それでも言ってもらえないんだ、
新山先生にも、みぞれにもさ・・・。
 
 
・そのあと、希美は鞄を取りに行くといって廊下を1人で歩く。
大きく息を吸って、溜めて、「ふぅ~・・・!」と、息を吐く。
 
希美はね、聡いから。聡い子だからこそ、他人を頼れない。
だから今回も1人で納得して解決しようとする、だけとアタマが追いつかない。
スクリーンの前の私達と一緒だよ。希美のアタマの中は空っぽでありぐちゃぐちゃだ。
私がこんなに望んだものを、どうしてあの娘だけが持ってるの、そのあの娘は
私の大の親友で、どうして、どうして私のこと「特別」だなんていうの。
 
考えようによっては「あてつけ」じゃん、完璧に自分の上に立った人から、
「あなたも音楽以外は凄いよ」 って言われて、そんなの、、、。
でも、みぞれは憎めない。あの理科室で希美をトクベツだというみぞれは
後光が差したかのように光り輝く存在として描写される。言うまでもなく
希美アイから見えるみぞれの姿であり、それはみぞれが希美にとって
「トクベツ」であることを示す。
 
みぞれにとって希美が 「親友として」 特別であるように、
希美にとってみぞれは 「奏者として」 特別だった。輝いて見えた。
 
みぞれは麗奈に詰められたとき、優子にこう言った。「希美は悪くない」
悪いのは希美を手放せない自分だと。
希美も理科室で同じように思ったに違いない。「みぞれは悪くない」
悪いのは、みぞれと一緒に羽ばたけない、羽を持たない自分自身なのだ。
 
・大好きのハグを強襲されて、希美が固まる。固まったあと、ぎゅっと希美を
抱きしめるみぞれに対して、希美は震える手に力を入れて、残りのHPを搾り出して
なんとかみぞれの腰に手を回して、「ぽんっ」と添える。それが精一杯。
 
希美が廊下でハグを拒絶したのは、こうなることが分かっていたからだ。
ちゃんとハグをし返したら、それは完全敗北を意味する。
そんなの希美が勝手に思ってることだけど、実力の差を認めてからの
「対等のハグ」は、もう貴方に敵いません、という証になる。
試合が終わったサッカー選手のユニフォーム交換か。
 
あーやられたやられた、今日の試合は完敗だよ、とでも言うつもりか。
次は負けないからな、なんて言えないのにね。
じゃあハグを拒絶するのか。私は負けてなんかいない、まだやれる、
アンタとは演奏でもう一度本気の勝負をするんだから! と、
みぞれを突き放す力が希美に残っているのか。そんな力が残っているはずない。
 
「希美、、、泣いてるの?」
 
希美は目を真っ赤に腫らして泣いた。画面に映っていないところで
「号泣」して いたと思うんですよ。あの希美がね。演奏中に悔し涙が
止まらなくなって、それでも力を振り絞って最後まで演奏した、
そのあと理科室に、誰も居ないところに行って、感情を抑えられなくなって。
 
希美はぎゅっと抱きしめ返すのでもなく、ハグを拒絶するのでもなく、
そっと腰に手を回して静かに置いた。そうしたかったのではなくて。
受け入れることも拒絶することもできなかったから、行き場の無い手が
そこに行き着いた。いかにも希美らしい。何でもそつなくこなすデキる人、
でも「天才になりきれない」一般人、希美は、このラストバトルたるハグで
自分がどうすべきかも自分で決めさせてもらえない。
「あのみぞれが」希美を1歩1歩追い詰めていくのである。

・希美は 足の動きが雄弁 だから本当に面白い。
理科室では窓際?に追い詰められた希美が、みぞれに押しつぶされないように
懸命に先制攻撃をする。みぞれが消極的な娘だから、何かを言おうとしても
希美が先んじて声を上げればみぞれは止まる、分かっているからこそ
希美は憎まれ口を止められない。みぞれを責めたくないから、
憎まれ口は自分を傷つける方向に向かう。
 
迫ってくるみぞれを押し返そうとして、半歩だけ足が前に出る、
怯んで半歩下がるみぞれ。それを見てまた半歩戻る希美。
しかしみぞれが決心して「聞いて!」と渇を入れてからは、
希美は防戦一方になり、希美の足は今度はじりじりと後退する。
後退するが逃げ場はない、壁際に追いやられていくのみ。
このシーンで特に象徴的な言葉がある。
 
「ふっ、昔のことでしょ。」
 
希美はこんなこと言う娘じゃない。そんなことも思ってない。
みぞれが傷つき、怒りそうな言葉を選んだ、そんなひと言。
悪いのは私だよ、みぞれは何で私を責めないの? 私を責めてよ。
 
・少しシーンを巻き戻して、優子、夏紀、希美の3人で話しているシーンを
覚えているだろうか。麗奈と久美子がいちゃいちゃする(?)のを窓から覗く
あのシーン。私はあの場面を 「家族会議のシーン」 と勝手に呼んでいます。
反抗期の希美、優子おかあさんが怒る、夏紀おとうさんがまあまあと抑える。
 
「みぞれは知ってるの?」
「知らないよ? なんで?」
 
なんで? は必要ない煽り文句だ。優子にそんなことを言う意味はない。
希美だって分かってる、そりゃみぞれに知らせておくべきだよ、当たり前じゃん。
みぞれだけが新山先生にスカウトされて悔しいから「自分も行く」なんて
言っちゃったのに、やっぱあたしの実力じゃきついわ、なんてみぞれに
言えるわけない。希美の負けず嫌いな心がそれを許さない。
 
でもそれは悪いこと、みぞれを裏切っていることになる。
だってみぞれは、希美と同じ学校に行きたいから音大を選んだのだから。
「なんで?」は優子に対する明確な煽りだった。
わたし、悪いことしてるでしょ? 責めてよ、叱ってよ。
 
優子は単純、というより正直だから、これを聞いてちゃんと怒ってくれる。
怒り始めた優子を夏紀が諌める。でも優子は抑えきれずに「あの時」のことを口にする。
「1年のときだって、勝手に辞めて、、またやりたくなったから戻ってきて、、」
このときの希美の表情は本当に見ていられない。
 
ぎゅっと握った手元のカット。顔を上げて希美が泣きそうになりながら笑う。
 
「やっと責めてくれるんだね。」
 
希美は責められたくて優子を煽ったんだ。ダメなことをしていると分かっていても、
負けず嫌いの心がどうすることもできない、だから、こんな私を誰か責めてよ!
優子が責めてくれて、「やっと来たよ」 という複雑な表情をする希美。
責められるのは辛いし嫌だ、でも自分は許されていいはずがない。
そんな希美の自虐がこの映画では延々と続く。
 
でも夏紀は、そんな希美を許しちゃうんだ。みぞれみたいに希美が大好きだから
とかでははなく。夏紀は去年、久美子にコテンパンにされたときの想いが
フラッシュバックするのかもしれない、南中のときから希美がずっと憧れの
デキる同僚だったからかもしれない。優子は 「みぞれは大丈夫?」 と言う。
夏紀は心の中でずっと 「希美は大丈夫?」 と言っていたのかもしれない。
 
希美がみぞれを振り回している?
同じくらい、みぞれが希美を振り回しているじゃないか―。
 

・優子には表が見えて、夏紀には裏が見える。
 
音楽室で集金の話から始まるシーンでも、夏紀は常に希美への助け舟を出す。
「みぞれのジョークじゃん」「確定・・じゃないけど」
なんだよそれ・・・と 場が凍りつく ところに
「もうすぐあがた祭だね」と話題の転換を図る夏紀。
 
夏紀のイケメンシーンといえばみぞれのバスケを代わってあげるシーンと、
上述の3人の家族会議シーンで話すときの「何でも話すってわけじゃないもんね」
というシーンが思い浮かぶけど、このピアノを囲んだ4人のシーンの
夏紀の振る舞いもとんでもなくイケメンだ。
 
希美はここでも無自覚なのか自虐なのか、「一緒に行こうよ、、、あがた祭」
と地雷を繰り出す。びびるみぞれ。その流れで 「一緒に」は「音大に」だろ!
なんでそこ倒置法にしたんだよ!というのが希美の希美たるゆえんである。
 
「優子と夏紀も行くよね?」でみぞれの足がこわばり、優子が再びフリーズする。
さすがの希美派の私もここはさすがに「そういうとこやぞ!」を希美にツッコミを
入れるシーン。夏紀はここでも優子に対して先手を取って止めにかかる。
一瞬をためらっていたら優子が「あんたねぇ・・!」と希美に応戦しかねない、
そんな空気を徹底的に読んで場をコントロールする夏紀パイセンかっけーっす。
 
優子が部長、夏紀が副部長とは、本当によくできている。みんなを引っ張っていく
カリスマも強引さも夏紀には無い。でもそれでいてさらに世話焼きで面倒見の良い
優子が最後に取りこぼす場所を、夏紀はよく見てる。これが希美が部長や副部長
だったら場が混乱しただろう。(南中では希美が吹奏楽部の熱血部長だったらしい)
去年のあすか先輩とはるか部長は真逆でしたけどね。あれは逆だったらはるかが
あすかぶちょーを抑えられるわけがないからね。
 
 
・希美の自虐シーンでもう1つ大切なのは新山先生とのバトルシーン。
 
ごめんなさい私リズ鳥観てるとき、毎回これらのシーンを 「バトル」 と読んでいて
アタマの中でその都度 「ゴング」 が鳴ってるんです。第○ラウンドだ!みたいな。
 
パンフレットバトル
新山先生バトル
廊下でハグバトル
家族会議バトル
クライマックス演奏バトル
理科室ハグバトル
 
いろんなバトルがあったなぁ、、、バトルものですよねリズバードは。
 
・この「新山先生バトル」で、希美はここでも自虐というか自爆をしに行く。
この日から新山先生とはしもっちゃんが指導に加わってくれて、
自由曲である「リズと青い鳥」を初めて2人の前で披露する。
デキに不満があるはしもっちゃんがクローズアップされたあと、
希美は新山先生に声を掛ける前にみぞれに声を掛ける。
「ソロのとこ、あとでもう一回やってみようか」
 
みぞれには何気ないひと言に聞こえたかもしれないけど、希美には凄く大事な
シーンだった。希美は、プロフェッショナルな2人の先生の前で、
自分のソロが大したこと無いと思われた ことを悟った直後だったのだから。
 
今まで「そうはいってもまずまずやれてるんじゃ?」と思っていた希美が、
そんなの嫌だ、という心に切り替わる。2人の先生が来る前の希美は、
滝先生に「感情的になりすぎる」とたしなめられてもまだ自身満々だった。
でもフルートの専門の新山先生に見限られたら、漠然とした不安が顕在化してしまう。
 
・みぞれには音大を薦めて、自分には薦めてくれない。
それが本当なのかを確かめに行くのが「新山先生バトル」。
「傘木・・・さん?」でもうクリティカルヒットだ。でも希美はめげない。
「今年も『木管』の指導、よろしくおねがいします!」
 
木管って言ったな、オーボエだけ見てんじゃないぞ、そういう意味だぞ、
という言葉を放ってから、数秒待つ。待つものの、希美は耐え切れない。
「雄弁」な足が一度「こつん」と床を叩く、これが希美の足クセ。
みぞれが髪を握るのと同じく、希美は床を蹴る。
動揺したり、心が動いたり、混乱したときに。
 
ここでも絞り出すように希美は続ける。「音大受けようと思ってて」。
ハグバトルの「みぞれのオーボエが好き」と同じだ。それを言ったら負けだろ、
という言葉を、耐え切れずに口にする。そして希美自身すら予見していたとおり、
「頑張ってね」と他人事のような言葉を返されてバトルは終わる。
そう、自分たちのソロ演奏の見せ場をたっぷり見せたあとの反応がこれ。
言うまでもなく希美の完敗だ。
 
希美は負けず嫌いで、頑張り屋で、そして、みんなから褒められる程度に
高校の部活のエース格であって。その彼女が、才能の差に絶望して自虐を繰り返す。
 
・「リズと青い鳥」の物語はわたしにとっても、希美派のみんなにとっても、
「特別になれなかった人の物語」。繰り返すが、その「特別」になれるかもしれない
親友のみぞれに「私にとってはあなたが特別」なんて言われるオマケ付きだ。
どうして自分じゃないんだよ、どうしてあの娘なんだよ。
 
本気で打ち込んだものに「キミじゃ無理だよ」と烙印を押されたときの気持ちが、
諦めなさいと言われたときの気持ちが、本気で打ち込んだことがある人にはわかるはず。
そうだよ「響け!」はずっと、「本気」が見せる視界の物語だったんだ。明も、暗も。

 
■映画大好きポンポさん杉谷庄吾【人間プラモ】
https://comic.pixiv.net/works/3728

 
私の好きなコミックに 「映画大好きポンポさん」 という作品があります。
映画の巨匠の孫娘であり自身も監督・脚本を手がけるポンポさん、
そのアシスタントを務める根暗な映画狂いのジーン君が、
ポンポさんに才能を見出されて映画監督を務めるという漫画です。
元々アニメ向け脚本だったのがpixivで無料公開されて大反響を得た作品で、
今でも無料で読めますので気になる方はぜひ読んでみてください。
 

 
その中でとても印象的だったのがこのシーン。ポンポさんはジーン君に
新作の脚本を読ませて「君はこの本の中で一番良いシーンはどこだと思った?」
と訊きます。ジーン君は即答であるシーンを挙げ、
「まさしくそのシーンを撮りたくてこの脚本を書いた」 という
ポンポさんはジーン君を信じて監督を任せます。撮影現場でそのシーンを
撮った瞬間に2人は目を合わせ、この作品が大作になることを確信するのです。
 
このポンポさんのシーンは本当に衝撃的で、何度読み返しても震えるのですが、
それと同じくらい、いや、大画面で観るという意味でそれよりはるかに大きな衝撃を
私に与えてくれたのがこのシーンでした。この映画はこのシーンが出るためにあった。
 
ハグのシーン? 最終演奏のシーン? それとも、反射光を当てるシーン?
 
そのどれとも違うシーン。ああ神さま、どうして私に、
 

 
 
「篭(かご)の開け方を教えたのですか・・。」
 
 
ああ、終わった・・・。希美は最終演奏の前に、完全にトドメを刺されていた。
最終演奏のバトルは希美が如何にして倒れたのかという過程を描写した
フィナーレイベントにすぎない、希美はその日が来ることを知って、
それがいつかという審判を待っていた。ここは毎回私を震え上がらせるシーンである。
 
一人で夕暮れの丘の上に佇んで風に吹かれる希美は、自分がみぞれの足枷に
なっているという事実に耐え切れない。いつだって自分のほうが前を歩いていた、
みぞれは後ろをついてくるだけだった、そのみぞれが飛び立とうとしていることを喜べない?
 
・共依存、といえば軽く聞こえるけど、実際になった人は自分がそうであるとは
気づかない、気づいたとしても自分がそうであると認める勇気を持てる人は少ない。
リズ鳥初回鑑賞のときはすぐさま、よりもいこと「宇宙よりも遠い場所」を
思い出しました。この2人の関係はまんま キマリとめぐっちゃん じゃないか。
 
その後のクライマックス演奏バトルでみぞれが「第三楽章、通しで演ってもいいですか」
と「殺っちゃっていい?」宣言をして(おい)、希美の顔が一気に曇る。
希美も「その日」を予見していたとはいえ、まさかそこまで打ちのめされるとは
思っていなかっただろう。
 
希美の元を離れて飛び立つみぞれの決心も簡単なものではない、だけど、
その覚醒した演奏があそこまで希美を刺すことになるとは、みぞれも想像して
いなかったはず。口を開けたままフリーズする橋本先生。はしもっちゃんも
まさにこのシーンだけのためにキャストされた存在だ。彼がフリーズしたからこそ
みぞれの演奏に説得力が生まれる、そして新山先生の 「怪物の誕生よ」 みたいなドヤ顔!
 
丘の上の希美が「青い鳥を逃がすときのリズ」なら、演奏が終わったあとの希美は
「青い鳥が飛び去ったあとのリズ」だ。覚悟はしていたけど、苦しみは「覚悟」
なんかで超えられるものではない。自分の愛してきた、頑張ってきた
フルートの音が、みぞれのオーボエの前で無惨に霞んでしまう。
目に生気が宿っていない希美の顔からカメラが引きで広がっていくところ
まですべて無音。ここで咳(せき)をした人は許されない希美過激派です。
でも自分も涙でむせそうになる、ぐっと我慢。
 
「響け!」の世界は、本気で頑張らなければ意味がない、いまこの時代だからこそ
真剣に取り組むことの意味を問うてくる。しかし、返す刀で「リズと青い鳥」は、
本気で頑張れば報われるなんて思うなよ、報われるために本気を出そうなんて思うなよ、
と突き刺してくる。
 
そうだ、よりもいのキマリたちとは別に、もう1人思い出す人がいました。
「まどマギ」の さやかちゃん。皆のために頑張ってる私はなんで報われないの?と
泣き叫んだ少女。まどマギもまた私にとっては「さやかの為の物語」だった。
 
 
・ハグバトルを経たあと、希美は一般受験の参考書をのぞみの目の前で図書室で借りて、
違う道を進むことをハッキリさせる。これが、ハッピーエンドだって??
 
・・・そうだよ、ハッピーエンドだよ。希美が自分を知り、みぞれが自分を知って、
それぞれに合わせた道を進む、お互いを縛り付けて歩く のはおしまい、
2人は一瞬だけ「別れ」たように見えるかもしれない。でも、「違うこと」を
認め合った2人は、これからもっと強くなれる。そう信じたことがハッピーだ。
 
「みぞれのオーボエを完璧に支えるから。今はちょっと待ってて。」
 
という希美の言葉に対して、みぞれはこう答える。
 
「私も、私もオーボエ続ける。」
 
答えになっていない。何も答えになっていない。でもそれは、2人が今までより
ずっと分かり合えて、近づいた証だった。音大には一緒に行ってあげられないけど、
コンクールは真剣に全力を出すから、という希美。希美がいるから、ではなく、
希美がいなくてもオーボエを続ける(音大に行く)と決めたことを言葉に出すみぞれ。
 
このシーンに至る動きは何もかもオープニングと真逆だ。校門で待っているのは
希美であり、みぞれはみぞれらしくもなく駆け寄ってきて一瞬だけでも
希美を追い越して前を歩く(しかしすぐ横並びになる)。そのあとは
いつもどおり希美が前を歩くが、階段を「降りる」シーン が登場するのは
劇中でここだけだ。つまり、希美が下からみぞれを「見上げる」のも、
ここだけということになる。ここで出るのが希美の「ちょっと待ってて」の言葉。
 
これは精一杯の、希美なりの精一杯の、小さな「懺悔」なんだ。
だから希美がみぞれを下から見上げるのは、これが初めてでなければならない。
「今までごめんね」のひと言が、それでもきっと、この自信家で負けず嫌いの
エースちゃんには言えなかった。あの理科室で「ありがとう(もういいよ)」と
言われても一瞬喜んでしまうほど逆の意味で鈍感だったみぞれが、
ちゃんと希美を察してあげられた結果が「オーボエ続ける」のひと言に詰まっている。
 
「みぞれは大丈夫―?」 (「希美は大丈夫―?」)
 
優子、夏紀、希美、みぞれの南中カルテットが臨む最後のコンクールは、
青春のクソデカ感情の集大成だ。雨降って地固まる、嵐で堕ちた青い鳥は
青く澄み切った空へはばたく。のぞみぞが奏でる第三楽章が関西に轟く日は近い。
 
あれ、希美のことしか書いてないな・・。



CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。


コメント代わりにひと叩き ( ・∀・)つ〃∩  → 合計: 10 へぇ

投稿者 CK : 記事URL | 雑談 | | 2018/06/15 21:20


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