紛らわしいThunderbolt 3とUSB Type-C (USB-C)の違いについて調べてみました。
はじめに
最近のPC界隈で最も分かりにくいネタの1つが「USB Type-C」です。特にThunderbolt 3が絡んでくるとスペック表などで「Thunderbolt 3 (USB-C)」といった訳わからん表記がされるため、完全に初見殺しの様相を呈しています。
私も最近PCを新調しようとした時にこの壁にぶち当たり、あまりの分かりにくさに半分キレながらThunderbolt 3とUSB Type-Cの違いについて調べましたので、その内容を備忘録として残しておこうと思います。
USB Type-Cとは端子の形状の1種
まず何よりも先にハッキリとさせておかなければならないのが、「USB Type-Cはただの端子の形状の1種である」という点です。
よく間違えやすいのですが、「USB Type-C=USB 3.1」ではありません。USB Type-Cだからといって必ず転送速度が早いわけではなく、USB 2.0なUSB Type-Cポート・ケーブルも存在しています。
また、必ずしもUSB PDに対応しているわけではない点にも注意が必要です。最近は特にノートPCでUSB Type-Cの採用が進んでいますが、そのUSB Type-CポートからPCを充電できるかは機種によって異なります。
「USB Type-Cは端子の形状の1種」「”USB Type-C=USB 3.1″ではない」「”USB Type-C=USB PD対応”ではない」という3つのポイントを理解したら、次に移りましょう。
Thunderbolt 3の動作原理
次はThunderbolt 3の動作原理です。
一言で言うと、Thunderbolt 3はUSB Type-Cに実装されているAlternate Modeという仕組みを利用して動作しています。
Alternate Modeとは
Alternate Modeとは、USB Type-Cポート/ケーブルを使用して別の規格の信号を流す規格のことです。
流せる信号としてはDisplayPort、Thunderbolt、HDMI、MHLの4種が策定されています。(2017年9月時点)
基本はUSB Type-C
Thunderbolt 3はUSB Type-CのAlternate Modeという仕組みを使って動作しています。つまり、基本はUSB Type-Cです。
基本がUSB Type-Cということは、「Thunderbolt 3ポート=USB Type-Cポートの1種」ということになります。ですので、PCに搭載されているThunderbolt 3ポートはもれなくUSBデバイスを扱うことが可能です。
「Thunderbolt 3 (USB-C)」という表記
PCのスペック表でよく見かける「Thunderbolt 3 (USB-C)」といった表記ですが、あの表記こそがThunderbolt 3とUSB Type-Cを分かりづらくさせている元凶であると私は考えています。
というのも、Thunderbolt 3はUSB Type-CのAlt Modeという仕組みを利用して動作しているからです(さっきから何度も言っていますが)。言い換えれば、Thunderbolt 3ポートとは「Thunderbolt Alt Modeに対応したUSB Type-Cポート」となります。
ですので、「USB Type-C (Thunderbolt Alt Mode対応)」といった表記の方がより実情に即しており、なおかつユーザーも「Thunderboltの信号も流せるUSB Type-Cポートなんだね」と理解しやすいと思うのですが……どうでしょう?
ポート
Thunderbolt 3ポートでは以下の3種類のデータ転送を行うことができます。
- USB 3.1 Gen 2
- DisplayPort 1.2 (Alt Mode)
- Thunderbolt 3 (Alt Mode)
USB 3.1 Gen 2
USB Type-Cポートの1種なので当然といえば当然ですが、Thunderbolt 3ポートはUSBのデータ転送を行うことが可能です。
Can I connect USB devices to a Thunderbolt 3 port?
Yes, Thunderbolt 3 ports are fully compatible with USB devices and cables.
ただ、Thunderbolt 3ポートと普通のUSB Type-Cポートではある1点が決定的に異なっています。それは、「Thunderbolt 3ポートはもれなくUSB 3.1 Gen 2対応している」という点です。
最初に説明しましたが、USB Type-Cとは端子の形状の規格です。そのため、見た目は同じUSB Type-Cポートでも中身はUSB 2.0だったりUSB 3.1 Gen 1だったりUSB 3.1 Gen 2だったりします。
一方のThunderbolt 3ポートですが、USBに関してはUSB 3.1 Gen 2対応で統一されています。機種ごとに性能の異なるUSB Type-Cポートと比較してアドバンテージと言えるでしょう。
DisplayPort 1.2
1つ上に書いたUSB 3.1 Gen 2の件と同じく、Thunderbolt 3ポートはもれなくAlt ModeによるDisplayPort 1.2のデータ転送に対応しています。
Can I connect DisplayPort devices to a Thunderbolt 3 port?
Yes, Thunderbolt 3 ports are fully compatible with DisplayPort devices and cables.
こちらもUSB Type-Cポートでは対応・非対応が機種ごとにバラバラな機能なので、もれなく対応しているというのはThunderbolt 3ポートのアドバンテージとなります。
Thunderbolt 3
言うまでもない気がしますが、Thunderbolt 3ポートはAlt ModeによるThunderbolt 3のデータ転送に対応しています。
ただ1つ注意点があって、一部機種のThunderbolt 3ポートは規格の上限まで性能を発揮することができません。Thunderbolt 3が内包するPCIeの信号はPCIe 3.0 x4が上限ですが、SSDにPCIeの帯域を使っている等の理由でPCIe 3.0 x2となっている機種が存在しています。
- MacBook Pro 13″ w/ Touch Bar (Late 2016) … “PCI Express の帯域幅に制限されます“
- XPS 13 (9360) … “PCI Express Gen 3 x 2レーン“
まとめ
「USB Type-Cポート」と「Thunderbolt 3ポート」の違いをまとめたのが以下の表です。
USB 2.0 | USB 3.1 Gen 1 | USB 3.1 Gen 2 | DisplayPort 1.2 (Alt Mode) |
Thunderbolt 3 (Alt Mode) |
USB PD での給電 |
USB PD での受電 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
USB Type-Cポート | ○ | 機種による | 機種による | 機種による | 機種による | 機種による | 機種による |
Thunderbolt 3ポート | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 機種による | 機種による |
一言で言ってしまえば、「全部入り=Thunderbolt 3ポート」です。ただ、全部入りなのはあくまでデータ転送に関してのみであって、USB PD関係はThunderbolt 3ポートであっても機種によって対応・非対応が異なります。
ケーブル
次はケーブルについてです。
まとめ
とりあえず結論を先に載せておき、下に注意点を書いていこうと思います。
USB接続 | Alternate Mode接続 | USB PD | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
USB 2.0 | USB 3.1 | DisplayPort 1.2 | Thunderbolt 3 (20Gbps) | Thunderbolt 3 (40Gbps) | 3A | 5A | ||
USB Type-C ケーブル |
USB 2.0 | ○ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ○ | ケーブルによる |
USB 3.1 | ○ | ○ | ○ | ケーブルによる | ✕ | ○ | ケーブルによる | |
Thunderbolt 3 ケーブル |
パッシブ (~1m) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ケーブルによる |
パッシブ (1m~) | ○ | ○ | ○ | ○ | ✕ | ○ | ケーブルによる | |
アクティブ | ○ | ✕ | ✕ | ○ | ○ | ○ | ケーブルによる |
アクティブ・パッシブとは
アクティブ・パッシブというのは、「信号を補正・調整する機能を持っているかどうか」を表しています。
一般に信号調整機能を持ったケーブルをアクティブケーブルと呼び、そういった機能のないケーブルをパッシブケーブルと呼びます。これはThunderboltに限った呼び方ではなく、ケーブル全般で使われる呼称です。(HDMIケーブルの例)
アクティブケーブルは(ほぼ)Thunderbolt 3専用
Thunderbolt 3ケーブルで1番注意すべきなのがアクティブケーブルです。
その理由は、Thunderbolt 3アクティブケーブルはUSB 3.1でのデータ転送や、Thunderbolt 3以外のAlt Mode接続(つまりDisplayPort Alt Mode)をサポートしていないからです。(かろうじてUSB 2.0でのデータ転送はできる)
パッシブケーブルはUSB 3.1ケーブルとしても使える
Thunderbolt 3パッシブケーブルはUSB 3.1なType-C to Type-Cケーブルとしても使用することができます。
例を挙げると、Cable MattersのThunderbolt 3パッシブケーブルはThunderboltとUSB-IFの両方の認証を取得しているらしいです。
「40Gbps対応=アクティブケーブル」ではない
「40Gbpsでのデータ転送はアクティブケーブルのみで、パッシブケーブルでは20Gbpsまで」という勘違いをしやすいのですが、実は違います。
そもそもなぜアクティブケーブルが信号を調整するかというと、そのままではノイズや減衰で40Gbpsもの速度を確保できないからです。つまり、ノイズや減衰の影響が小さければ、信号を調整せずとも速度を確保できる、ということになります。
そんな訳で、ケーブル長を0.5mにすることによって転送速度40Gbpsを確保したパッシブケーブルが各社から販売されています。
結論
基本的には1~2mのThunderbolt 3パッシブケーブルを買っておけば、Alt Mode対応のUSB 3.1なC to Cケーブルとしても使えるので間違いないです。スペック的には1m未満のTB3パッシブケーブルが最強ですが、ケーブル長が短すぎて使える場面が限られます。
40Gbps対応のケーブルが必要となってくるのは外付けGPUボックスや5Kディスプレイといったハイエンド環境が主なので、そういった場合にのみアクティブケーブルを買えば良いと思います。(アクティブケーブルは高価ですし)
Thunderbolt 3ケーブルまとめ
アクティブケーブル
メーカー/ブランド | 製品名/型番 | 転送速度 | USB PD | 長さ | Amazon.co.jpリンク | メーカー製品ページ |
Apple (Belkin) | HKK22ZM/A | 40Gbps | 3A | 2m | Apple | |
Belkin | F2CD085 | 40Gbps | 5A | 2m | Amazon.co.jp | Belkin |
Cable Matters | 107012シリーズ | 40Gbps | 5A | 1m / 2m | Amazon.co.jp | Cable Matters |
CalDigit | TBT3-A10B-540 | 40Gbps | 5A | 1m | Amazon.co.jp | CalDigit |
TBT3-A20B-540 | 2m | Amazon.co.jp | ||||
StarTech | TBLT3MM1MA | 40Gbps | 3A | 1m | Amazon.co.jp | StarTech |
TBLT3MM2MA | 2m | Amazon.co.jp | StarTech |
パッシブケーブル
メーカー/ブランド | 製品名/型番 | 転送速度 | USB PD | 長さ | Amazon.co.jpリンク | メーカー製品ページ |
Anker | A8486011 | 40Gbps | 5A | 0.5m | Amazon.co.jp | Anker |
Apple | MQ4H2FE/A | 40Gbps | 5A | 0.8m | Apple | |
Apple (Belkin) | HKK12ZM/A (F2CD082ds0.5MBK) | 40Gbps | 3A | 0.5m | Apple | |
Belkin | F2CD081 | 20Gbps | 3A | 1m | Amazon.co.jp | Belkin |
F2CD084 | 40Gbps | 5A | 0.5m | Amazon.co.jp | Belkin | |
Cable Matters | USB-IF認証品 107002 | 40Gbps | 5A | 0.5m | Amazon.co.jp | Cable Matters |
20Gbps | 1m / 2m | Amazon.co.jp | Cable Matters | |||
Plugable | TBT3-40G50CM | 40Gbps | 3A | 0.5m | Amazon.co.jp | Plugable |
TBT3-20G1M | 20Gbps | 1m | Amazon.co.jp | Plugable | ||
TBT3-20G2M | 2m | Amazon.co.jp | Plugable | |||
StarTech | TBLT34MM50CM [ブラック] | 40Gbps | 3A | 0.5A | Amazon.co.jp | StarTech |
TBLT34MM50CW [ホワイト] | Amazon.co.jp | StarTech | ||||
TBLT3MM1M [ブラック] | 20Gbps | 1m | Amazon.co.jp | StarTech | ||
TBLT3MM1MW [ホワイト] | Amazon.co.jp | StarTech | ||||
TBLT3MM2M [ブラック] | 2m | Amazon.co.jp | StarTech | |||
TBLT3MM2MW [ホワイト] | Amazon.co.jp | StarTech |
所感
ポートについては基本的に上位互換なので良いですが、逆にケーブル周りは非常にややこしくて厄介です。
USB Type-CケーブルもThunderbolt 3ケーブルも端子の形状は同一なのですから、アクティブなThunderbolt 3ケーブルはUSB 3.1やDisplayPortとの互換性を何としてでも維持するべきだったと思います。
参考
■Thunderbolt
https://thunderbolttechnology.net/
■USB IF – USB Type-C Specification Rev 1.2
http://www.usb.org/developers/docs/