医療法人財団緑生会(以下、「当法人」といいます。)は、平成29年10月25日、東京地方裁判所において、株式会社フジテレビジョンに(以下「フジテレビ」といいます。)対し、民事訴訟(平成29年(ワ)第36244号)を提起しましたのでお知らせします。訴訟提起の理由は以下のとおりです。
フジテレビは、平成28年12月5日、当法人が運営する水口病院(以下「本件病院」といいます。)において勤務していた産婦人科専門医が、母体保護法14条1項が定める指定を受けないまま患者(以下「本件患者」といいます。)に対し人工妊娠中絶手術(以下「本件手術」といいます。)を行ったことについて報道をしました。
本件患者は、本件手術の6日後に死亡しました。行政解剖の結果、本件患者の死亡と本件手術との間の因果関係は不明と判断されました(なお、その後の警察発表で、因果関係は否定されました。)。しかしながらフジテレビは、関係者に対する取材等を通じ、本件患者の死亡と本件手術との間の因果関係が不明であること、本件手術を担当したのが産婦人科専門医であったことを事前に知りながら、一般視聴者において、
①医師の資格を持たない者が患者に対し本件手術をし、
②その結果、本件患者が死亡したと認識される構成で、上記報道をしました。
また、同月6日、本件患者の遺族が、本件病院で勤務していた医師数名を業務上堕胎罪で刑事告訴したことを報告する記者会見を行いました。報道各社によれば、この記者会見において本件患者の遺族は、本件病院から胎児が育っていないため人工妊娠中絶手術を勧められたとの発言をしたとのことです。
しかしながら、そのような事実はありません。フジテレビは、本件患者の遺族から、当法人が開示した医療記録を取得しており、そのことを事前に知っていたにもかかわらず、同日以後、概要「本件患者は、本件病院から胎児が育っていないと診断され人工妊娠中絶手術を勧められたことから、本件手術を受けた」との趣旨の報道をしました。
胎児が育っていない場合、当面経過観察とし、胎児の心拍がなくなった段階で流産手術をすることが一般的です。上記報道は、このような一般的な対応を本件病院がしなかったことを公表したものです。この報道により、インターネット上では、本件病院が対応を誤ったのではないか、あえて人工妊娠中絶手術を受けさせることで、流産手術をする場合と比較して高額の医療費の支払いを受けようとしたのではないかとの意見が多々見られることとなりました。
これらの報道を受け、インターネット上で「殺人病院」などと揶揄され、本件病院の名誉は回復不能な程度に毀損されました。その結果、本件病院は廃止を余儀なくされました。また、当法人の経営も立ち行かなくなり、既に東京都に解散の認可申請をしています。
本件病院に母体保護法違反があったことは事実であり、この点は弁解の余地のないものです。しかし、そうであるからといって、真実でない事実が真実のように受け止められる内容の報道をされることを受け入れなければならない理由はありません。上記フジテレビの各報道は、当法人にとって全く受け入れがたいものであり、今なお強い憤りを感じています。そのため、当法人はフジテレビに対し、冒頭で述べた訴訟を提起しました。
近時、医師法違反に関する報道について、フジテレビがBPOから放送倫理違反を指摘がされたとの報道がされました。報道後の混乱のため、当法人はBPOに対する申立てをすることができませんでした。しかし、申立てを行っていれば、放送倫理違反が認定される可能性は十分あったものと考えています。
平成30年2月21日
医療法人財団緑生会 水口病院