・6歳以上の全体では52.0%の人がスマートフォンのみでインターネットを利用している(2017年)。
・従来型携帯電話とスマートフォンを併用している人は少数。年が上になるに連れてスマートフォンの利用者率は減り、従来型携帯電話は大よそ増えていく。
・世帯年収が上の人ほどスマートフォンでインターネットを利用する人の割合は増える。
若年層は圧倒的にスマホ
欧米からは遅れる形となったものの、日本でもようやく携帯電話の主流が従来型携帯電話からスマートフォンへとシフトしつつある。スマートフォンに利用機種が移行されるもっとも大きな理由は、インターネットへのアクセス機能のケタ違いの向上ぶりにあるわけだが、それでは現時点において、携帯電話を用いたインターネット利用状況はどのようなパワーバランスにあるのだろうか。総務省が2018年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の報告書・公開データを基に、その実情を確認する。
次以降に示すのは、該当利用端末を「モバイル端末(従来型携帯電話(PHS含む)以外にスマートフォンを含み、タブレット型端末は含まない)」に限定した「インターネットの利用率」。また各値は全体比(未回答者除く)における値。例えば「全体の従来型携帯電話のみの値は8.4%」と出ているので、調査対象母集団全体(携帯電話保有者やインターネットの利用者限定では無い)の8.4%が、過去1年間においては従来型携帯電話のみでインターネットを利用した経験があることになる。
若年層におけるスマートフォンの浸透ぶりが目に留まる。13~19歳では従来型携帯電話と併用している人も合わせると71.5%。そして20代になると従来型携帯電話からの乗り換え(かつそのまま併用)をしている人も合わせ、9割に近づく。従来型携帯電話のみの利用者は3%にも満たない。
30代以降は従来型携帯電話との併用も合わせ徐々にスマートフォンのネット利用者は減り、70代になると2割を切る。また、従来型携帯電話・スマートフォンの利用率の転換点は70代と80歳以上。表現を変えれば、80歳以上の「携帯電話によるインターネット利用」は「従来型携帯電話」経由メインであって「スマートフォン」メインでは無い。
世帯年収別では?
続いて所属世帯の年収別利用の実情。世帯年収が高くなるほどモバイル端末によるインターネット利用率は増加する。
一般的には従来型携帯電話よりスマートフォンの方がランニングコストは大きい。昨今、スマートフォンに近い機能を持ち、従来型携帯電話に近い料金プランを活用できる「ガラホ」や、仮想移動体通信事業者(MVNO)によって提供されるSIMカードを白ロム端末やSIMロックフリー端末に用いてスマートフォンとして使用することでコスト軽減を図る「格安スマホ」に注目が集まっているのも、ランニングコストによるもの。低年収の方がやりくりが厳しくなるため、スマートフォンまで手が出せない状況が確認できる。
年収が一定ラインに達すると、スマートフォン「のみ」の所有率はさほど変化が無くなる。いわば天井状態。2017年に限れば、世帯年収による携帯電話の利用率において、800万円以上はほぼ同率となる。800万円未満の世帯における低迷こそが、携帯電話経由での情報格差の問題、そして解消すべきポイントといえよう。
世帯構成では特徴的な実情が
最後に世帯構成別。回答者の所属する世帯の構成別で、利用傾向にどのような変化が生じるかを見たものだ。
単身世帯(非高齢者。高齢者は65歳以上)では金銭的にも余裕があり、自分で操作技術を習得できる場合も多く、モバイル端末によるインターネット利用率全体も、さらにはスマートフォン利用率も高い。一方同じ単身世帯でも高齢者のみでは、操作などを教えてもらえる機会も少なく、また自分の日常生活で携帯電話を利用する限りにおいては従来型携帯電話で満足していることもあり、スマートフォンの利用はごく少数となっている。そもそも論としてモバイル端末によるインターネットへの利用機会自身があまり無い。
ところが同じ高齢者でも、二世代にわたる世帯の構成員となると、高齢者単身世帯と比べてスマートフォンによる利用率がそれなりに高い値を示すようになる。回答者本人が高齢者でも、子供などに教えてもらえる機会がありえるため(無論双方とも高齢者の場合もあるが、互いに教え合うことで、一人よりははるかに楽になる)、技術的ハードルを超えやすいものと考えられる。
昨今ではスマートフォンと従来型携帯電話の中間的な立ち位置の「ガラホ」や「格安スマホ」がスマートフォンの代替的な立場として注目を集めている。特に後者は実質的にはスマートフォンと同じため、統計ではスマートフォンとしてカウントされることも多い。今後大きな伸びしろが期待できるのは、低コストを望む層に受け入れられやすい、「格安スマホ」と考えてもよいかもしれない。各スマートフォン関連の値の上昇にも、小さからぬ貢献を果たすだろう。
■関連記事:
パソコンよりも携帯経由で…シニア世代のインターネット利用率をグラフ化してみる
※通信利用動向調査
2017年分は2017年11月~12月に世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布および回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万6117世帯(4万1752人)、2592企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。過去もほぼ同様の条件下で実施されている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。