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【社会】

「共謀罪型捜査」に批判 法成立1年

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法が成立して十五日で一年。参院法務委員会での採決を省き、本会議で「中間報告」を行う異例の手法で与党が採決を強行し、市民らの激しい反発を招いた。警察庁によると適用例はまだないが、法律家団体などからは「プライバシー侵害や監視を強める共謀罪型捜査が行われている」と懸念の声が上がる。 (奥村圭吾)

 改正法は昨年七月十一日に施行。共謀罪の適用対象はテロ集団や暴力団などの「組織的犯罪集団」とされる。犯罪を計画したメンバーら二人以上のうち、少なくとも一人が現場の下見などの「準備行為」をすれば全員が処罰される。

 捜査機関は、ニセ電話詐欺や薬物犯罪などに有効だと強調してきたが、逮捕や家宅捜索などの適用例は一件もないという。

 共謀罪は、犯罪実行前の計画段階で捜査、処罰するため、通信や会話の内容、関係者の供述が重要となり、監視社会や冤罪(えんざい)を招く恐れが高いとされる。二百七十七の対象犯罪には組織的な逮捕監禁や威力業務妨害罪などもあり、市民団体や労働組合の活動も対象になりかねない。

 有志の弁護士らでつくる「共謀罪対策弁護団」によると、昨年十一月、選挙で野党系の統一候補を支援する勝手連の代表をしている東京都内の男性が名誉毀損(きそん)容疑で警視庁の家宅捜索を受け、パソコン三台とスマホ、携帯電話各一台を押収された。インターネット上のブログで発信した個人的な内容に関する容疑だったが、勝手連の事務所まで捜索された。パソコンの解析を終えて全て返却されたのは今年の六月だった。

 弁護団側は「個人的な話なのに何で市民団体の事務所まで捜索するのか。団体に目を付けられ、人間関係や活動内容を全て調べられたようだ。容疑は共謀罪ではないが、共謀罪につながってきたら怖い」と危ぶむ。

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