HINOMARUに詫びる理由なし

2018年6月15日(金)

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 いよいよロシアワールドカップ(W杯)がはじまった。

 私にとって、サッカーのW杯ほどわくわくさせてくれるイベントはほかにない。4年に一度、世界一周旅行に旅立つみたいな心持ちだ。あと何回見られるだろうか。

 死ぬ前に、もう一回現地でナマの試合を観戦してみたいと思っている。生活に余裕ができたら、次の大会か、それが無理ならそのまた次の大会を機に、半月ほどスケジュールを空けて開催地を訪れてみたいものだ。

 今大会は、自国の代表チームとは距離を置くつもりだ。応援とは別の気持ちで、各国の精鋭の戦いを観賞しようと思っている。それでも十分に楽しいはずだ。

 日本代表が勝つようなことがあれば、私は喜ぶだろう。しかし、負けることになっても、それはそれで溜飲が下がるはずだと思っている。両面作戦だ。勝てば勝ったで選手を誇りに思うし、負ければ負けたで自らのサッカーファンとしての見識を誇りに思うことになる。どっちにしても、私は拍手を惜しまない。

 と、そんなことを考えている折も折、ツイッターのタイムラインに奇妙な文字列が流れ込んできた。どんなテキストであるのかを示すために、引用できれば良いのだが、それはできない。シャイロック、じゃなかったジャスラックが目を光らせているからだ。日本音楽著作権協会に登録している音楽家の楽曲を引用すると、著作権使用料が発生する。このことが、わたくしども文筆家を様々な場面で苦しめている。

 今回は、ある楽曲の歌詞について書こうと思っているのだが、その歌詞を読者の目前に引用して示すことができない。このことを、私が大変に心苦しく思っているということをどうかご理解いただきたい。

 歌詞検索サイトにリンクを張っておこうかと思ったが、これが著作権の侵害になるものなのかどうかに、私は確たる知識を持っていない。

 ゆえに読者諸兄は、自ら曲名を判断し、各自検索して欲しい。もし、ジャスラックが何かを言ってきたら、歌詞のサイトも消されることになると思う。そうなったら、読者諸兄には、できれば架空の歌詞を暫時思い浮かべながら次行以降を読んでほしい。

 ご確認いただけただろうか。
 ごらんのとおり、不思議な歌だ。

 私は、初見で
 「うひゃあ」
 と思った。

 「気高きこの御国の御霊」
 「たとえこの身が滅ぶとて 幾々千代に さぁ咲き誇れ」
 「さぁ いざゆかん 守るべきものが 今はある」
 といったあたりの言霊の幸ふところに感じ入ったからだ。

 まあ、あえて言うなら、君が代風、軍歌風、愛国歌風といったあたりの周辺にある何かではあるのだろう。

 私個人は、この歌がどうだということではなくて、こういう出来物が、民放のサッカー放送のテーマ曲として選ばれる時代がやってきたことに強い印象を持たずにおれなかった。

 平たく言えば、びっくりした、ということだ。

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「HINOMARUに詫びる理由なし」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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