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【社説】

島サミット 楽園でない実情知って

 太平洋島しょ国首脳らを招いて開いた「太平洋・島サミット」。海に囲まれ開放的な半面、基盤整備は遅れ、海面上昇という地球温暖化の直撃も受ける国々だ。厳しい実情を知る機会にしたい。

 太平洋島しょ国十四カ国の人口は計約一千万人、面積は日本の一・四倍だが、排他的経済水域(EEZ)は日本の四・四倍ある。マグロ、カツオなどの漁場としても重要な地域だ。

 小国だが、国連では一票ずつを持つ。関係強化には、日本の立場への賛成票を得たいとの思惑もある。

 戦時中、日本が委任統治をしたり戦場となったりしたが、対日感情は比較的いい。

 十四カ国中、六カ国が台湾と外交関係を持つが、最近では、ハコモノ建設など中国の支援を受ける国も目立っている。

 日本の呼び掛けによる島サミットは、一九九七年以来のつながりだ。各国のニーズを把握し、国際協力機構(JICA)を主体に支援を続けている。

 「楽園」のイメージが強い島国だが、国土は狭く産業は育っていない。生活物資は輸入頼りだが、海に囲まれアクセスは悪い。ごみの処理や電力の確保も難しい。地震やサイクロンなどの災害も多く生活は厳しい。

 温暖化による海面上昇で国土沈下が懸念されるツバル。護岸は崩れ、周囲には島内で処理できないプラスチックなどのごみが散乱していた。島を構成するサンゴの砂や小石を利用して海岸を再生し、運動会を開けるまでになった。

 多くの離島を抱える沖縄の自治体や企業によるノウハウ提供にも注目したい。島国が依存するディーゼル発電による電力供給を安定させるため、風力や太陽光による再生可能エネルギーを導入、微生物を利用した浄水場を整備するなどの事業に技術協力している。

 今サミットでは、洋上で物資を積み替える「瀬取り」を含む、北朝鮮の制裁逃れに深刻な懸念も表明した。

 ただ、サミットの準備会合では「自由で開かれたインド太平洋戦略の具体化に向けた連携」など日本の説明に、「反中国か」など戸惑いの言葉も出たという。押し付けがましさは禁物だ。

 福島県いわき市での開催は、東日本大震災からの復興をアピールする狙いもある。制約を抱える島国の取り組みは、災害など緊急時の対応にも通じる。島国を救う知恵を自らにも生かしたい。

 

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