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【社説】

スルガ銀の不正 業績至上主義の歪みだ

 「優良地銀」のスルガ銀行で明るみに出た不正融資は、業績至上主義がもたらした歪(ひず)みにほかならない。超低金利の長期化で金融機関の経営環境は厳しいが、不正に手を染めていいはずがない。

 「何年か増収増益を続けてきて、業績を維持するためのプレッシャーを感じていた」

 社内調査の結果公表で会見した米山明広社長は、背景についてこう語った。銀行の業績至上主義を認めた格好だが、全容解明は外部の弁護士ら第三者機関に委ねるという。どこまで銀行が主体的だったのかなど核心について積極的に明らかにすべきだ。

 これまでにわかっているのは、こういうことである。「自己資金がなくても大丈夫」。年収数百万円の会社員らに一棟数千万円から数億円もするシェアハウスへの投資話を販売業者が言葉巧みに誘い、その購入資金の多くをスルガ銀が融資。三月末時点で、千二百五十八人に対して総額は二千三十五億円に上った。

 スルガ銀の明らかな不正は、販売業者が借入希望者の年収や預金残高などを改ざんしていたのを、「相当数」の行員が認識しながら融資していたことだ。

 スルガ銀は静岡県沼津市に本店を置くが、今回の融資の大半は横浜東口支店で実行され、関わった支店長らはすでに退職。立ち入り調査に入った金融庁は「(経緯を知る役職員の恣意(しい)的な退職は)検査忌避になり得る」と警告するなど、不誠実な事後対応も問題だ。

 一方、金融庁にも課題が突きつけられている。スルガ銀の高収益経営を地銀の模範であるかのように評価してきたからだ。

 スルガ銀は預金残高では地銀の中位だが、収益力で群を抜いた。それは個人向けの融資に特化し、主婦や転職直後の人など他行が及び腰となる借り手にも積極的に融資。迅速な審査システムを構築し、高金利の融資で高収益を上げる戦略をとってきたためだ。

 だが、やはり最高益を続けるなかで無理をしてきたのだろう。審査部門に対し営業サイドが恫喝(どうかつ)まがいで融資させるといったこともあった。金融庁の監督のあり方も問われなければならない。

 さらに出口の見えない日銀の異次元緩和も問題だ。地銀の平均貸出金利は1%を切り、預金金利との差である利ざやはわずかだ。

 メガバンクも併せ銀行業は今や構造不況業種で、金融仲介機能の低下は成長を阻害しかねない。これもアベノミクスの弊害である。

 

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