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【社説】

悪質タックル 監督が真相を説明せよ

 アメリカンフットボールの日本大の選手が、関西学院大との定期戦で危険で悪質な反則行為をした。ルール順守が最優先されるスポーツで何が起こったのか。指導者には真相を語る責任がある。

 謎だらけである。アメフットは東京大や京都大がかつて強豪だったように、知力も重要な要素となるスポーツだ。プレーブックと呼ばれる作戦指示書はチームによっては二百ページに及ぶものもあり、選手はこれらを頭に入れることが求められる。

 日大のアメフット部員は百人を超えるという。無防備な相手クオーターバックに背後からタックルして負傷させるなどラフプレーを繰り返した選手は、その中でレギュラーに近い位置にいた。選手は「『(反則を)やるなら(試合に)出してやる』と監督に言われた」と関係者に話しているというが、たとえそのような指示があったとしても、実行に移すことがどのような結果を招くか、十分に理解できたはずである。

 一方の内田正人監督は日大広報部の調査に対し「必死で頑張ってこい。戦え。厳しくやれ」などとは言ったが、違反しろという指示はしていないとし、両者の言い分は食い違っている。

 ヘルメットなどの防具を身に着けるアメフットは肉体と肉体が激しくぶつかり合う。そのためルールが細部にわたって決められ、選手を重大な事故から守っている。それでも本場の米国では脳に受けたダメージで競技経験者が若くして死に至る例が多いことが近年の調査で分かり、社会問題となっている。

 日大の同部OBで、二〇〇三年から一五、一六年を除いて指揮を執り続ける同監督が、これらの事例を知らないわけがなく、たとえ勝利の重圧があったとしても、悪質な反則行為を選手に指示したとは普通なら考えがたい。監督の厳しい表現に選手が過剰に反応した可能性もあり、日大側も「指導者の指導と選手の受け取り方に乖離(かいり)が起きていたことが問題の本質」と説明している。

 ただ、この問題が波紋を広げているのは、内田監督が公の場に姿を現さないことも一因としてある。

 監督の指示を選手が誤って解釈したとしても、その監督がルールを順守して対戦相手に敬意を抱く指導を徹底できず、チーム内に反則許容の空気をつくったことは事実だ。その責任を背負って真相を語る覚悟が、指導者も大学側も問われている。

 

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