休日、残業代などの規制を無くす恐怖の法案「高度プロフェッショナル制度」はなぜ立案されたのか。「小泉政権を指示した当時の有権者が原因」

残業代など無くす「高度プロフェッショナル制度」は「小泉政権当時の有権者が原因」か

記事まとめ

  • 『クローズアップ現代+』で竹中平蔵氏が「高度プロフェッショナル制度」推進と発言
  • 小飼弾氏と山路達也氏が小泉政権「聖域なき構造改革」の旗手、竹中平蔵氏の功罪を議論
  • 小飼氏は小泉政権で「日本人の4割は非正規に」と当時の有権者の選択の結果だと主張

休日、残業代などの規制を無くす恐怖の法案「高度プロフェッショナル制度」はなぜ立案されたのか。「小泉政権を指示した当時の有権者が原因」

休日、残業代などの規制を無くす恐怖の法案「高度プロフェッショナル制度」はなぜ立案されたのか。「小泉政権を指示した当時の有権者が原因」

休日、残業代などの規制を無くす恐怖の法案「高度プロフェッショナル制度」はなぜ立案されたのか。「小泉政権を指示した当時の有権者が原因」の画像

 5月30日放送の報道番組『クローズアップ現代+』(NHK)に、東洋大学教授の竹中平蔵氏が出演し、「働き方改革」に入る「高度プロフェッショナル制度」を推進する旨の発言をしたことが、インターネット上で話題になりました。

 これを受けて、6月4日の『小飼弾のニコ論壇時評』にて、小飼弾氏山路達也氏のふたりが、「働き方改革」の前身となった小泉政権「聖域なき構造改革」の旗手、竹中平蔵氏の功罪について「竹中氏を選んだのは小泉元総理。小泉元総理を選んでしまったのは我々有権者。原因は我々にある」と振り返りました。

左から小飼弾氏山路達也氏

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山路:
 今、高度プロフェッショナル制度【※】は、働き方の法案のひとつとして成立しそうなわけですよね? こうした働き方法案が成立して大丈夫なのかな? ということを心配している人が多いようなんですけども。

※高度プロフェッショナル制度
年収1075万円以上の一定の業種の労働者を、労基法による労働時間、休日等の規制の対象から外す制度。残業代の支払いも不要となる。

小飼:
 大丈夫じゃないんだろうけども、そもそも、なんでこういう法案が出たかというところまで戻すと、投票したみなさんが悪いという、身も蓋もない結論が出るわけですよ。

山路:
 すごい。いきなり身も蓋もないですよね(笑)。

小飼:
 そう、みなさんが選んだ小泉純一郎さんが、竹中平蔵さんを選んで、竹中平蔵さんが派遣の規制を撤廃したら、日本人の4割は非正規になったという。これもみなさんの選択の結果です。はい。

山路:
 「俺は選んでないが」というコメントも出てますけど(笑)。

小飼:
 だから、選べる人を選ぶことが、いかに大事かということですよね。我々が選んだ人が、更に人を選んでということなので、はい。

山路:
 しかし、そんなにみんな予想できないじゃないですか! と言いたくなりますよね。自分の選んだ人間が、更に別の人間を選んだ結果こうなるところまで、最初から全部は予測できないんじゃないですか?

小飼:
 それは予測できないでしょう。

山路:
 でも責任は取らなきゃいけないという。

小飼:
 そもそも一人ひとりが、きちっと、ああしたらこうなるというのを、完全に予測できたとしたら、実は選挙そのものがいらないんですよ。誰がそこにいても同じロジック、同じ結果が出るのであれば、ランダムに誰を選んでもいいということになるじゃないですか? それがわからないから、選挙をやっているわけですよね。

山路:
 それはそうですね(笑)。

小飼:
 もし、未来がわかるのであれば、選挙はいらないんですよ、本当に。

民主主義の主は、自らを傷つけることも許される

山路:
 どちらにしても結局、民主制であるかぎり、結果の責任というのは、投票した人間が取らなきゃいけないことは確かですもんね。

小飼:
 そう。民主主義の主というのは、自らを傷つけることも許されているわけですね。

山路:
 ああ。

小飼:
 プログラマーの格言で、「UNIXには、自分の足を撃つ自由がある。」という言い方があるんですけども、それがまさに民主主義ということですから。

山路:
 (笑)。それを言ったらすべての法案とか、正当なものになっちゃいそうな気がしますけど。

小飼:
 じゃあ、今の与党に投票しなかった人まで責任を負わなければいけないの? ということですけども、負わなければいけないんですよ。「あなたは身体を張ってでも止めましたか?」って、言われちゃうんですよ。だから民主主義って恐ろしいんですよ。

山路:
 ああ。その責任を、あまりみんな自覚していないということなのかもしれないですよね。これは今「働き方法案」で一番焦点になっているのが、高度プロフェッショナル制度と言われるところなんですけれども、この前、そのNHKのクローズアップ現代に出演した竹中さんが、「私はやっぱり高度プロフェッショナル制度を入れていかないと、日本経済の明日はないというふうに思うんです」と言っていたんですね。

小飼:
 竹中さんの言うことって、竹中さんが小泉さんに登用されて以来、拒否されたことある?

山路:
 はあ。

小飼:
 竹中さんの言うことをずっと聞いてきたわけで、その結果が今なわけです。その間、諸外国、例えば中国と比べて、日本は成長しました? 竹中さんの言うことを聞いてきた結果が出ているじゃないですか? 「お前の言う通りした結果がこれだよ」というのは、これ以上ない形で出ているんですよ。

「少子化だから不景気」という決めつけは危ない

山路:
 「人口の問題が大きいんじゃね?」というコメントも出てますけどね。

小飼:
 うん? 人口?

山路:
 つまり人口減少、少子高齢化の問題によって、日本の成長がゆるくなっているんじゃないのかという。

小飼:
 確かに日本が受ける少子高齢化の影響というのは顕著なんですけれども、減り始めたのはやっと最近です。これからガンガン減っていくんですけれども。だから「失われた20年」の間にも、人口というのは、しばらく伸び続けたわけですよね。

山路:
 はい。

小飼:
 出生率とかが減っても、人が死なない限りは、すぐには人口は減りませんから。それでも永遠に生られないので、いつか減る時が来て、それが始まったわけですよね。

山路:
 そうか、ようやくこれから本番。

小飼:
 はい。だから人口減少の影響とは言えません。他のそれをいったら、中国だって一人っ子政策のおかげで、日本よりも更にいびつな少子高齢化が控えています。

山路:
 労働生産人口は、減り始めたんでしょうか?

小飼:
 もう減っています。

山路:
 なんか恐ろしいことになっているわけですよね。

小飼:
 なんですけれども、本当に、あなたたちの言うことを聞いたら、こうなったというのはもうわかっているわけです。

詐欺師は、人の前にまず自分を騙す

山路:
 竹中さんも、このクローズアップ現代では、肩書きが東洋大学の教授になってたんですけども、ほかに重要な肩書きが抜けてたんじゃないかっていう(笑)。

小飼:
 そうそう。人材派遣会社の会長という、もっと大事な肩書きが抜けていたと。

山路:
 私は、最近その竹中さんと、経済学者の大竹文雄さんの『経済学は役に立ちますか?』という対談本を読んだんですけど。

小飼:
 経済学は役に立ちますか? 僕も経済学は役に立つかどうかはわからないけれども、竹中さんが役に立たなかったという実証は出ていますから。

山路:
 ディスるな(笑)。私がこの本を読んで、ここで言っている竹中さんの建前というのは意外に賛同できるところもあったりするんだけれども、結局、やっていることが全然違うというところもかなりあるんですよ。

 この本の中で、竹中さんは、「ヒアリングの対象になるような人たちがポリシーボード【※】の中に入っているのは問題です。露骨に言えば、被告人が陪審員の中に入っているようなもので、それが日本の霞が関の制度です。こんなことをしてはいけないのに、日本のポリシーボードでは、まさに利益相反が平気で行われている」と言っているんですよ。

※ポリシーボード
日銀政策委員会の通称。総裁、副総裁二名、審議委員六名で構成される、日銀の最高意思決定機関。

小飼:
 竹中さん自身が一番まずいよね。あんたはどうなの? という。

山路:
 あんたはどうなの? と、本を読んでて思いっきりツッコミたくなったりして、それは、さすがにどの面下げてというふうに思いましたけどね。「詐欺師はいいこと言うからね」ってコメントが付きましたけれども(笑)。

小飼:
 いや、でも、竹中さんレベルになると、自分を騙した上に、それに気が付かないという、そういうレベルだと思いますよ。その意味では無敵の人だと思います。本当に日本のためにいろいろ画策して、日本のためになったと、御本人は思っていると思いますよ。

山路:
 そういうデメリットを受けている人というのが、あんまり見えないっていうことなんですね。

小飼:
 そうそう。

山路:
 コメントで、「竹中さんは全部計算してこうなったのかな?」って書いてありますけど、彼は計算していたんでしょうか?

政治学者、竹中平蔵

小飼:
 彼は自分を信じていたと思う。

山路:
 なんかJ-POPの歌詞みたいな感じですね(笑)。

小飼:
 まったくその通りで、「政権にこうしなきゃ駄目だ。こうしなさい」と竹中さんが言ったことは通っている。なのに実際問題として、日本は成長していない。ここは、狂っていると思う。

山路:
 ああ。

小飼:
 でも、自分信者の竹中さんからしたら、ほぼ100%、竹中さんの言う通りに日本政府はやってきたんだろうけど、竹中さんの立場から言えば、あれは、まだ聞いていないじゃないかと。こういうのも何ですけれども、「労働者がいっぱい過労死して、路頭に迷っても、GDPさえ上がればいいじゃん」という考えはありうるわけで、実際に中国は、それに近い考えで、犠牲者はいっぱい出たけれども、成果は得た。日本は、犠牲者はいっぱい出ているけれども、成果は上がっていないわけですよ。

山路:
 本で竹中さんは、「現実の政策と経済学の間には大きな「隙間」があるということです。実際の政策を決めるには、政治的な過程を経なければなりません。国民の支持が必要で、その意味で大衆心理も無視できません」と言っています。

小飼:
 竹中さんは経済学者かもしれないけども、政治学者ですね。12割くらい政治学者で、マイナス2割くらいが経済学者なんじゃないかな?

山路:
 (笑)。

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