「半分、青い。」の世界観をつくる要素の一つ、美術セット。
今回は秋風羽織の漫画事務所「オフィス・ティンカーベル」について、美術担当の掛幸善デザイナーに聞きました。
色にアクセントをつけて、画面が映える空間に
台本には「モノトーンか何か、センスのいい空間。リッチでクール。」と書かれていましたが、秋風先生はモノトーンの衣装が多いので、バブル期のトレンドや画面映えを考慮して、彩度の高い色を加えました。まず思いついたのが、赤と黒の「鉄骨」。そして、当時の建築物に使われていた着色された壁。壁面に彩度の高い色を取り入れたいと思い、蛍光ピンクを採用しました。壁面イラストの中にもピンクが入っていたりと、色でアクセントをつけています。
それぞれの位置関係を意識した、机の並び
実際にプロの漫画家さんの事務所へ伺い、机の並びなどを参考にさせていただきました。それぞれの登場人物の位置関係を意識し、できるだけ自然なお芝居の動きになるようにしたいと考えていたのですが、ただ四角い机を組み合わせて並べると、変な隙間が空いてしまいます。そこで3人の距離感と位置関係を自由に設定でき、かつ不自然に見えないようにするためにも、デスクは特注で作ろうということになりました。
位置関係については、まず左耳が聞こえない鈴愛が最も右側に座るはず、ということから始まり、秋風先生は最も左側、ボクテは秋風先生が椅子に乗ったまま近づいてくるから秋風先生に近い方がいいか、などと他のデザイナーや演出と話し合って考えました。また台本のなかに「8人アシスタントがいた」という内容のセリフがあったので、ちゃんと合計8人が座れるスペースを作っています。
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▲秋風のデスク。椅子と机、文具も黒で統一しています。 -
▲アシスタントのデスク。人物のポージングを確認するためのデッサン人形や、曲線をひくための雲形定規など漫画を描くための道具を一式そろえています。
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▲この時代ならではのカラーインク。今はパソコンを使ったり、イラスト用のペンを使うので、カラーインクを使っている人は少ないかもしれません。 -
▲コピー機やファックス、コードレス電話などは、1980年代後半から90年代初頭の、できるだけ当時の物をそろえました。
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▲1999年は、このモニターを置くだけで時代が表現できます。 -
▲ロフトは床板を張らず、メッシュ構造の床材を使用。窓の前にあるチ椅子も網目状のデザイン。
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▲らせん階段は当時のトレンディードラマで多用していたので、それを参考に取り入れました。 -
▲「オフィス・ティンカーベル」と聞くと、やっぱり「ティンカーベル」(「ピーターパン」に登場する妖精)が真っ先に思い浮かびます。字体を細くして華奢(きゃしゃ)ないかにも女の子らしいイメージでデザインし、女の子の横顔のイラストも加えました。
2階は、バーカウンターやビリヤード台、サッカーゲームなど、秋風先生の趣味が詰まった部屋になっています。
最も苦労したのは、秋風先生が新しい作品を生み出すために集中するシーンで必要だった、隠れる場所の確保。ドラマの中では、バーカウンターの下に隠れていましたが、他の候補場所として、テーブルやビリヤード台などもありました。
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▲ゲーム台は当時のものを、レトロゲームを取り扱うゲームセンターの方からお借りしました。 -
▲ビリヤード台の下は、秋風が新作の構想時に潜り込む場所の候補にあがっていました。
1階は3階や2階と比べて、落ち着ける空間にしました。壁面は白などの落ち着いた色にして、石壁風の造作壁で重厚感を出しています。また秋風先生は日光が嫌いなので、あまり自然光が入らない部屋にしています。
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▲中庭は、実は日本庭園になっていて、石伝いに水がチョロチョロと池に流れています。奥に竹があり、松も植えられています。 -
▲奥にあるベッドスペース。ここもモノトーンでそろえています。
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▲人骨模型を置いて、秋風先生のちょっと変わり者で完璧主義な部分を表現。奥にはたくさんの書籍などを置いています。 -
▲キッチンスペースのタイルは市松模様でおしゃれに、かつ清潔感が出るように設計。