なぜ? 広がる「記名制」ごみ袋

国内

千葉・野田市の朝のごみ回収風景。

ごみステーションにあるごみ袋だが、よく見ると名前が書いてある。

1つ1つ全部に名前が書いてあった。

ごみ袋1つ1つに名前を記入。

しかも、フルネームで。

野田市では、指定のごみ袋に名前を書いて出さないと、たとえ分別がルール通りでも回収してもらえない。

収集作業員は、「ルール違反なんですよ。名前が書いてないので、氏名書いて出してくださいってチェックして。(名前書いてないのは回収しない?)しないです」と話した。

野田市役所清掃計画課・小沼京治課長補佐は、「記名式を導入した理由ですけど、自分の出すごみに、自覚と責任を持ってもらって、分別のルールの徹底と減量化を図っていく考え方で導入したもの」と語った。

野田市では、昭和60年(1985年)ごろから人口の増加にともない、ごみも増え、平成に入ってからは、ほかの市の処分場に依頼する状況になっていたという。

それを受け、平成7年(1995年)から、名前の記入を求めるようになった野田市。

ごみ袋に名前を記入している野田市民は、「わたしは賛成。だって、自分でごみを捨てるってことは、責任を持って捨てるってこと。名前がないと、もっとでたらめになると思う」、「変なの勝手に捨てる人がいるから書かせてるんでしょうけど、面倒くさい。捨て方が面倒くさい、野田は」などと話した。

名前を書く手間が面倒だという声はあるものの、ルールを徹底するためには仕方ないという意見が多く聞かれた。

しかし、東京都内で聞いてみると、「この家、こういうもの捨てるんだねと思われたら嫌だな」、「名前!? 名前は書かないと思います」、「わたしも、ちょっとそれは...。個人の名前を出すことによって、それが解消されるかどうか、わからないから」、「正直嫌だなと思う。ばれちゃうというか、私生活をのぞかれるようで。請求書とか、破いてものぞかれたりする可能性があるのは怖いと思う」といった声が聞かれた。

プライバシー問題にくわしい、ひかり総合法律事務所の板倉 陽一郎弁護士は、「ごみっていうのは、プライバシーの塊ですよね。クレジットの明細であるとか、レシートは、経済状態もわかってしまいますし。髪の毛とか、やろうと思えばDNAだって採取できるわけですから」と語り、ごみ袋の記名式や、ごみの開封調査によるプライバシー侵害に警鐘を鳴らしている。

ごみ袋への記名式を導入している自治体は、決して少なくない。

その1つ、福岡・うきは市では、可燃ごみへの金属混入により、破砕機の歯が壊れる事故が相次ぎ、その修理代は、1回およそ50万円。

このことが、記名式を採用する理由の1つとなっていた。

板倉 陽一郎弁護士は、「分別しないと、(焼却炉が)壊れるとかっておっしゃってるところがありますが、結局、開封調査やって、中をわざわざ見て、誰だか調べて連絡してってやると、膨大な人件費がかかるわけで。人件費かけるくらいだったら、ほかのやり方を考えた方がいいんじゃないかという気はします」と語った。

記名式や開封調査による分別の効果とプライバシー。

いずれにせよ、分別への意識と住民1人ひとりの理解が不可欠。