『あげくの果てのカノン』ついに完結、最終5巻出ました。
これはすごい作品出ましたね!
『あげくの果てのカノン 』について、めっちゃ語りたい。延々と意見を垂れ流していたい。そんな感じを持った久しぶりの作品です。賛否両論が吹き荒れると思いますが、自分にとっては本当に素晴らしい作品でした。
(『あげくの果てのカノン』2巻より)
人が人を一生好きだなんてあるのかしら?
この作品で繰り返し語られ、問いかけられる言葉です。心臓が焼け付くような恋でもいつかは風化してしまうのでしょうか。それとも一生好きでいられるのでしょうか。そして登場人物はみなどこへたどり着くのでしょうか。
読後感は保証しません。今回の最終5巻の内容に賛成できない方もいっぱいいると思います。でも、この作品の振り切れ具合にシンクロできる人にとっては、ものすごい良作に思えるでしょう。何度も気になって最初から読み直すような作品です。今回、『あげくの果てのカノン』について狂気というポイントで感想を書いてみたいと思います。
以下、ネタバレあります。
初穂さん vs メメちゃん
身元不明のまま農家で静かに暮らしてる初穂さん。でもSLCから持ってきたメメちゃんが暴走してしまいます。農家の子供に襲いかかるメメちゃんに初穂さんは立ち向かいます。
初恋の終わり
境先輩の記憶が徐々に消えていきます。本当に好きだったのに、他のことが自分の心の中に入っていきます。境先輩に対する初恋が消えて無くなるのを認めたくない、でもどんどん他のものに置き換えられていきます。
そして先輩がいない日常が来ることに気づいてしまいます。かのんちゃんの初恋が終わりを告げました。
みんな救われない
SLCで境先輩の同僚の的場さんは無残な姿になっています。修繕を行っている隊員はいずれ同じ末路をたどることになります。それは境先輩も同じです。
永田町消滅
お互いにゼリーの真実を求めていた境先輩と初穂さんは、ゼリー暴発のときに再び出会います。
かのん、逃げる
全てを置き去りにしてかのんは東京から、境先輩から逃げます。ただただ先輩を忘れるためだけに歩き続けます。
あれから10年
そして10年。かのんが東京から逃げ出して最初の3年は音信不通でした。そしてこのケーキ屋さんに勤めてから3年になります。
相変わらずのかのん
かのんちゃんは、いまはケーキ愛にあふれかえっています。
10年前とかわらない
(『あげくの果てのカノン 』1巻より)
10年前は境先輩について暴発していました。方向性は全然変わらないよね。
そして時間だけが……
10年間の時間をかけてかのんちゃんはここにたどり着きました。弟のヒロくんとの関係も、大人の対処でその傷がゆっくり治っていくことを知っています。
なのに、ね……
以下、ラストネタバレです。ご注意ください。
友人と立ち上げたケーキ屋さんに勤めて3年目。かのんちゃんはようやく平穏を見つけていました。東京を離れ、家族を離れ、そしてなにより境先輩から逃げて逃げてようやくたどり着いたのがこの場所でした。
もしも境先輩にもう一度会ったら、「何しにきたんだー!」って殴ってやる、っていうぐらいになっています。
でもね、現実はそうは簡単にはいきません。リアルって恐ろしいほど重みがあるものですね。
ラスト0 扉の向こう
かのんが卵屋さんの配達を受け取るために扉を開けます。すると予想もしなかった10年後の境先輩がそこに立っていました。
ラスト・1 もしも君がそばにいてくれたら、
一瞬のうちに駆け巡る妄想。
かのんちゃんは境先輩の姿を見て、ドラッグのフラッシュバックのように一気に思いが脳内を駆け巡ります。これがかのんちゃんが否定して、否定して、そして逃げて、逃げて、逃げいた理想が一気に噴き出しています。
ラスト・2 現実はかくも冷たい
現実は冷たい。フラッシュバックしているかのんに対して、境先輩は無機質です。ゼリー暴発でおそらく多大な修繕を行っていたに違いありません。きっと先輩はまた修繕のせいで全く別な人格になって、記憶も失ってしまっているに違いありません。
その時に店内からパッヘルベルのカノンが流れます。境先輩が高校の頃、ピアノで弾いていた曲です。そしてかのんの名前でもある曲。境先輩の表情が変わります。
ラスト・3 そして、あげくの果てのかのんちゃん
そして、かのんちゃんの瞳には境先輩の笑顔が……。
まとめ
これは、ものすごい作品ですよ。なんども読み返してみたくなる作品です。
自分たちって、普通でいいと思っていますか?思っていませんよね。でも常識からはずれるのはこわい。認められることで、立派なことで普通じゃないぐらい目立ちたいって誰でも思っていると思います。
でも、暴走する狂気を見てみたいとも思います。そして、どんなに理不尽でも、ルールを外れても、どれだけあきらめてもあきらめきれないような、まったく変わらない恋愛を見て見たいと思いませんか?
脳の回路がオーバーヒートするよな、ルールをぶっ壊すようなそんな恋愛。自分でも間違っているのに、どうしても止められない感情。そんなものを見てみたいとは思いませんか。
世間のみんなが「いいね」っていう作品はルールにのっとって、決して後ろ指さされるようなところがないものです。でも『あげくの果てのカノン』はそうじゃありません。結局不倫かよ、って言ったらそうかもしれないし。SFも不十分っていったらそうかもしれない(5巻だし)。
でも、どんどん変わっていく世界でのなかで、自分たちもどんどん変わっていきます。そのなかで変えられない愛情、自分でも逃げられないほどの情熱をみたいとは思いませんか。そんな作品が『あげくの果てのカノン』でした。
確かに変形して、みんなが祝福してくれるような幸せの形ではないかもしれない。境先輩もかのんちゃんもズタボロで、ようやくなんとか自分を保っているのに10年かかって出会うなんて、ふたたび悪い巡り合わせとしか言いようがありません。
でも、それが見たかった。
うろたえて、迷って、そして清々しく笑う先輩の姿にやっぱりときめいてしまうかのんちゃんが見たかった。きっとかのんちゃんは幸せになれない。それでも、境先輩を見ずにはいられないかのんちゃんが愛おしいです。
もしも読むのを迷っているなら、管理人はものすごいお勧めします。そして読後感は保証しません。
そんなすばらしい作品でした。まる。
世界を壊すカノンの恋が辿り着く先は? 高校時代の片想いから8年。 境宗介に恋い焦がれ、想い続けた高月かのんの恋は、 結果、永田町を大混乱へと導く。 親を裏切り、 兄弟を無視し、 友達を失い、 社会から疎外され、 それでも…かのんの心は境へと向かうのか。 「恋とは何か」その根源を問い続け、 全国の共感を集めた傑作が 遂に完結、第5集。 【編集担当からのおすすめ情報】 「尊いけど最低」「気持ち悪いけどわかる…!」など、 読者の皆様からのかのんや境先輩への強い共感に支えられた本作。 「一途な恋」へのファイナルアンサーを 一緒に見届けてください…!