中日春秋(朝刊コラム)中日春秋「自由の橋」という名の鉄橋が韓国にある。軍事境界線にある板門店に向かう橋だ。もちろん自由に北に行くことができる橋ではない。自由どころか緊張のただ中にある。北に家族を残す人らは近くの金網に自由に再会できる日の訪れと南北の和解を願って、リボンを結んできた ▼板門店には「平和の家」や「自由の家」もある。「自由」「平和」はここでも現実とは正反対で、切実な願望であり、将来の目標である。だからその名は切なく響く ▼「完全非核化への確固で揺るぎない約束を再確認した」。そんな昨日の米朝共同声明である。期待に反し、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化の言葉はなく、日程も明らかではない。「非核化」は「自由」や「平和」と同様、願望や目標の領域を出ていない ▼トランプ大統領から拉致問題に関しての提起があったという。しかし、被害者家族が高齢化する中で、北に何らかの変化があったかが判然としない ▼成果はあいまいで、北に時間稼ぎをさせるだけに終わるのではないか。制裁を緩めるだけではないか。何度も裏切られてきた過去はそんな疑問をもたらす ▼それでも、である。米朝の首脳が握手して、会話を交わした。再び裏切るには、相当重い圧力が、金正恩委員長の側に、かかったのではないか。軍事境界線の向こう側にも希望のリボンが、結び付けられたのだと思いたい。 今、あなたにオススメ Recommended by |
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