キャリアアップに必要なものとは?知っておくべき4つの力と17の習慣

「キャリアアップが求められる時代」に知っておくべきこと

黙って毎日会社に行っていれば給料が上がり、将来が安泰だった時代とは違い、今のビジネスパーソンは何らかのキャリアアップをしながら個人としての価値を高める必要に迫られています。

そんななかで「今の仕事や会社でキャリアアップをするにはどうすればいいのか?」「転職や独立でのキャリアアップを実現するには何が必要なのか?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

ここではそうした悩みを抱える人のために、そもそもキャリアアップとはどういうことを意味するのかというところから、「キャリアアップに必要な4つの力」とその力を伸ばすために効果的な「17の習慣」を紹介します。長いのでチェックリストとして見返す用に使ってください。

【目次】
●キャリアアップとは何なのか?
●キャリアアップに必要な「4つの力」
・「戦略的に未来を設計する力」
・「自分について深く分析する力」
・「自分にうまく火をつける力」
・「人間関係をマネジメントする力」
●キャリアアップにつながる17の習慣
・戦略的に未来を設計する習慣
・自分について深く分析する習慣
・自分にうまく火をつける習慣
・人間関係をマネジメントする習慣

「キャリアアップ」の定義と必要なものを理解しよう

●キャリアアップとは何なのか?

まずはそもそもキャリアアップとは何かを明確に理解しておきましょう。「部長になる」「年収1,000万円を超える」など色々な答えがあるかと思いますが、概ねそれらは以下の4点にまとめられます。


1.目の前の仕事で結果を出す。
2.社内で昇進する。
3.転職して仕事の幅を広げたり、収入を上げる。
4.独立・起業する。

しかし、キャリアアップをこのように定義することはできても、「では実際にどんなキャリアアップするのか」という具体的な部分は定義することはできません。

「どこまで昇進するのか」「業界内で転職するのか」「業界を限らず、今の職種のエキスパートになるのか」あるいは「いくらの収入を目指すのか」「何をする会社で、どれくらいの規模を目指すのか」そうした問いに答えられるのは自分だけです。

つまりキャリアアップには用意された最適解はなく、自分の頭と体で見つけ出すものだということです。まずはこの大前提をしっかり理解しておきましょう。

●キャリアアップに必要な「4つの力」を知っておこう

とはいえどのようなキャリアアップを目指すにせよ、そのために必要な力というのはある程度共通しています。

それは
「戦略的に未来を設計する力」
「自分について深く分析する力」
「自分にうまく火をつける力」
「人間関係をマネジメントする力」の4つです。

以下ではこの4つについて解説します。

▼戦略的に未来を設計する力


はじめに必要となるのは未来を思い描く力です。なぜならたとえどんなに能力があったとしても、未来をしっかりと見据えて行動しているのとそうでないのとでは、最終的な結果に大きな差が生まれるからです。

例えば10kmマラソンを走るときに「1時間を切れればいいか」と思って走るのと「絶対に50分を切ってやる」と思って走るのとでは、レースまでに積み重ねる努力も、本番での緊張感も、ラストスパートの必死さも全く違いますよね。

私たちには大なり小なり「自分が思い描いたものを実現する力」というものが備わっています。その力のスイッチを入れるのが未来を思い描くという行為なのです。

本当に思い描いたものを実現したいのであれば、そこには戦略が必要です。企業でもビジョン=思い描く未来があって、それに対する経営戦略や事業戦略を設計し、そこから具体的なアクションプランを組み立てていきます。

個人がキャリアアップを目指す場合でも同じです。したがってキャリアアップを目指すのであれば、何をどうすれば自分が思い描く未来にたどり着けるのかを、戦略的な分析に基づいて設計する力が求められるのです。

▼自分について深く分析する力

戦略的に未来を設計するために必要なのが、自分について深く分析する力です。自分の未来についての戦略を立てようとしているのに、自分を理解できていなければ話が始まりません。

もし自分を理解できないまま未来を設計すると、給料が高いからという理由だけで「マネジメント職を目指す」と自分が本当にたどり着きたい未来とはズレた設計をしてしまう可能性もあり得ます。

キャリアアップの最終的なゴールは自分自身の充実感や幸福感のはず。それらを得るためには自分の能力や思いを事前に理解しておかなければなりません。

そのためには現在と過去の自分について深く分析する必要がありますし、それらをもとに自分の強みと弱みを把握しておく必要があります。そうして初めて「戦略的な未来の設計=キャリアアップ」が動き出すのです。

▼自分にうまく火をつける力


いざキャリアアップのために動き出せても、それだけで全てがスムーズにいくわけではありません。設計した未来が長期間であるほど、今の自分の能力を超えたものであるほど、障害と挫折の可能性も高くなります。

障害を乗り越えて、挫折から立ち直り、自分のやる気と行動を持続させなければ未来を実現することはできません。三日坊主ではキャリアアップは実現できないのです。

ところが挫けそうだからといってむやみやたらに自分にハッパをかければいいというわけでもありません。

本当は体や心がすごく疲れているのに、ハッパをかけて無茶をすれば怪我や体の病気、うつ病などの結果を招きかねないからです。

そうなればキャリアアップどころか、仕事を続けることさえ難しくなります。まさに本末転倒です。

だからこそ必要なのは「自分に無理やり火をつける力」ではなく「自分にうまく火をつける力」なのです。どうすれば自分のやる気が持続し、行動したくなるのかをきちんと理解しておくこと。

そしてそのために必要なアクションが実行可能な環境に身を置くこと。これが最終的にキャリアアップが実現するかどうかを大きく左右します。

▼人間関係をマネジメントする力


ここまでの3つの力が十分でも、思い通りにキャリアアップするにはまだ不十分です。なぜなら一人で成し遂げられることはたかが知れているからです。

仕事であれば、上司や同僚、他部署の人間、取引先の担当者やその上司……と色々な人が動いて初めて目の前の仕事の結果が出ます。

この人たちが動いてくれなければ結果は出ません。結果が出なければ自分の評価も上がらず、評価が上がらなければ昇進も難しいでしょう。

転職をするにしても相手の会社の人事担当者に動いてもらえなければ採用されません。起業する場合でもたくさんの人に協力してもらうことになります。

したがってキャリアアップには、人間関係をマネジメントしてスムーズに動いてもらう力が必要なのです。

キャリアアップにおいてメインで行動するべきなのは確かに自分です。しかしだからといって他人が重要ではないというわけではありません。そのことをしっかり理解して、人間関係をマネジメントする力を磨いておかなければなりません。

習慣が力を磨く


「戦略的に未来を設計する力」「自分について深く分析する力」「自分にうまく火をつける力」「人間関係をマネジメントする力」の4つの力に限らず、力というものは継続して磨かなければ成長しません。

しかし単に「継続しよう」と思い続けるだけでは、遅かれ早かれ疲れてしまいます。これは「飽き性」だとか「根気がない」「意志が弱い」といった問題ではなく、人間の性質のようなもの。

挫折を防ぐための最も手っ取り早い方法は「習慣化」です。意識しなくても半自動的に継続するようにしてしまえば、あとは自ずと力が伸びていくというわけです。習慣は継続を実現し、実現は成長を実現します。

以下ではここまで解説した4つの力を成長させてくれる、合計17の習慣を紹介します。ひとつ、ふたつと習慣化して、キャリアアップに必要な力を成長させましょう。

キャリアアップにつながる17の習慣

●戦略的に未来を設計する習慣

▼1ヶ月に一度、10年後の自分を五感で描く

1ヶ月に一度、10年後の自分を五感で描くことで、潜在意識に働きかけ、自分の心や体を「10年後の自分を実現するためのモード」に切り替えましょう。

私たちの心や体は普段は意識できない潜在意識によって、知らないうちにコントロールされています。この潜在意識のスイッチを入れるのが、五感を総動員した強く具体的なイメージです。

また10年後は「何が起きるかわからない未来」なので、今の自分の限界を無視して自由に思い描くにはちょうど良い期間設定です。

「戦略的に未来を設計する」というと得てして現実を出発点にしがちですが、それでは結局今の自分の物差しでしか考えられません。

自分が本当に実現したいキャリアアップを見つけるためにも、まずは「何が起きるかわからない未来」を思い描く習慣を身につけましょう。

▼1年に一度、「未来の歴史」を書き出す

1年に一度、「未来の歴史」を書き出す習慣を身につけると、思い描く未来への道筋のロードマップとともに「自分の選択次第で未来は変わる」という確信を手に入れられます。

これは「シナリオ・プランニング」という戦略思考の技法を利用したものです。手順は以下の通り。

1.将来の変化を起こしうる要素をなるべく多く書き出す。
2.その中から特に重要だと思われる2つの要素(ドライビング・フォース)を選ぶ。
3.縦に2つの要素がうまくいった場合、横にうまくいかなかった場合を配置した2×2のマトリクスを作る。
4.マトリクスのマスに現れた将来へのシナリオを、4つ全て詳細に書き出す。

こうして自分の「未来の歴史」を想定しておくと、自分が何をすればどんな未来になるかをイメージしやすくなり、望む未来にたどり着くために何をすべきなのかも明確になります。

それは自分の選択次第で未来が変わるという確信につながり、自分のキャリアアップと真剣に向き合うモチベーションにもなるでしょう。

▼毎年自分の中の「テーマ」を一つ決めて、それに基づいて行動する

毎年自分の中の「テーマ」を一つ決めて、それに基づいて行動するという習慣を身につけると、価値観や知識の引き出しが増え、未来をより戦略的に設計できるようになります。

現時点の価値観や知識だけに頼って未来を設計していると、必ず盲点が生まれます。その盲点を減らすには、価値観や知識を増やし、より広い視野を持つしかありません。テーマを一つ決めて行動するのは、効率的に視野を広げるための作戦です。

というのも「制約条件の理論」と呼ばれる理論よれば、問題を起こしているボトルネックを一つ解決すると、必ず別の部分のボトルネックに突き当たるので、それを一つずつ潰していけば全体のパフォーマンスが改善するからです。

例えば「今年は心理学を勉強しよう」とテーマを決めて、本を読んでみたりセミナーに参加したり、あるいは周囲の人間と接してみたりします。

そのなかで「相手の心理をあやつるための話術が足りない」と気づくことができれば、次の年は話術をテーマに自分の行動を決めていけばいいのです。

そうしているうちに価値観や知識の引き出しが増え、より広い視野で未来が設計できるようになってくるはずです。

▼「教えてください」を口癖にする

同じように自分の視野を広げてくれるのが「教えてください」という口癖です。完璧主義の人やプライドの高い人というのは、得てして「なんでも知っていないといけない」と考えがちです。

そのため自分の専門分野や趣味、あるいは本来知らなくてもいい分野においても「知らないから教えて」という一言が言えない場合が少なくありません。

しかしこうした知ったかぶりを続けると、自分の知っている範囲でしか考えたり、話したりできなくなってしまいます。

これでは視野が狭くなり、未来の設計においても盲点が増えてしまいます。これを手っ取り早く防いでくれるのが「教えてください」を口癖にするという方法です。

もちろん以前教えてもらったことを何度も「教えてください」と言うのはNGですが、たいていの場合は快く教えてもらえるはずです。

●自分について深く分析する習慣

▼半年に1回「好き」を100個書き出す

より早くキャリアアップを実現するために効率的な方法は、「自分の強みを徹底的に伸ばす」という方法です。

半年に1回「好き」を100個書き出すという習慣を身につければ、自分の強みを意識するきっかけになります。

やり方は簡単で、ただひたすらノートなどに自分が好きだと思うコト・モノを書き出していくだけです。

それぞれの好きが矛盾していてもかまいません。まずはひたすら書き出しましょう。いざ100個を書き出してみると、矛盾しているものでも緩やかな共通点があることに気づくはずです。

その共通点こそがそのときの自分にとっての「好き」の基盤です。人は好きなものに対しては多少体力的、精神的に辛くても、気にせず没頭できます。

それが何よりの強みとなるのです。この「好き」を100個書き出すというワークは、自分が強い分野を見つけるためのものなのです。

▼1週間に1回以上、日記やブログを書く

1週間に1回以上、日記やブログを書くという習慣を身につければ、自分の思考や価値観を深く掘り下げる力が鍛えられます。

部屋の掃除の最中に出てきた小学校や中学校の作文を読んで、「あの頃の自分はこんなことを考えていたのか」と当時の自分を客観的に見られたという経験はないでしょうか。

1週間に1回以上、日記やブログを書いていると、こうした経験を意図的に引き起こすことができます。

そうして自分の思考や価値観を客観視することで、「どうして自分はこう考えたのか」「次に同じ状況になったらこう考えてみよう」と原因追及や改善策につながったり、「前もこんなことを書いていたな」と自分の行動や思考の癖に気づくきっかけにもなります。

こうした体験を繰り返していると、わざわざ文章化しなくてもリアルタイムで自分を客観視できるようになり、自分について深く分析する力が鍛えられていきます。

▼1日の最後に他人から言われた「ありがとう」を思い出す

1日の最後に他人から言われた「ありがとう」を思い出す習慣を身につけると、他人から見た自分の強みを知ることができます。仕事において役に立つ自分の強みというものは、他人から感謝される言動に現れるからです。

したがって「丁寧にやってくれてありがとう」「細かいところまで気を遣ってくれて助かるよ」そうした言葉を1日の終わりに振り返り、自分が日頃どんな言動で感謝されているのかを知れば、仕事において役に立つ自分の強みが浮き上がってくるのです。

ちなみにこの習慣は、1日の終わりを「ありがとうと言ってもらった記憶」で締めくくれるので、心安らかに眠れるという副次効果もあります。

▼ストレングスファインダーを利用して、定期的に見直す

ストレングスファインダーとはアメリカの世論調査や人材コンサルティングを手がけるギャラップ社が開発したツールで、177個の質問に解凍するだけで34種類の資質から強みの源泉となっているトップ5の資質を分析してくれます。

またトップ6〜34の資質の順位もわかるので、強みだけでなく弱みも把握できます。このツールは世界各国数百万人の利用実績を持ち、自己分析はもちろんチーム作りの現場でも有効活用されています。

ストレングスファインダーは有料のツールですが(料金は下記参照)、科学的な手法に基づいた自分の強みと弱みを把握できるため、自分について深く分析するにはもってこいです。

このツールの診断結果を定期的に見直し、強みを意識して行動するだけでも思い描くキャリアアップに近づけるのではないでしょうか。

① TOP5のみを知りたい($19.99=約2,300円)
② 既にTOP5の結果を持っていて、6〜34の順位を知りたい($69=約8,000円)
③ 新規でテストを受けて34資質すべての順位を知りたい($89=約10,700円)
引用:ハート・ラボ・ジャパン

●自分にうまく火をつける習慣

▼「ちょっとした背伸び」をする

いくら努力をしていても同じようなことを毎日続けていると、成長の度合いも鈍るうえに緊張感もなくなってモチベーションも下がってきます。

この問題を解決してくれるのが、「ちょっとした背伸び」をするという習慣です。背伸びをするとそれまでのバランスが崩れて緊張感が生まれ、その緊張感が脳や体のパフォーマンスを引き上げてくれます。

パフォーマンスが上がれば嬉しくなってモチベーションも上がるので、好循環が生まれるというわけです。

具体的には「慣れない仕事に挑戦する」といった仕事分野で背伸びをしてもいいですし、「敷居の高い割烹店に一人で行ってみる」など仕事以外の分野でもかまいません。

背伸びがうまくできれば「自分はできる」という自信につながり、仕事の分野でも背伸びができるようになっていきます。

▼やるべきことをルーティン化する癖をつける

「やるべきこと」というのは得てしてモチベーションが出ないものです。しかしキャリアアップするには、少なからずやるべきことをこなさなくてはなりません。この問題を解決するのがルーティン化するという習慣です。

例えば人脈作りに気が進まないのなら、ネットワークのカテゴリ別にアクションプランを作成し、あとは何も考えずにひたすら計画を実行に移すだけにしてしまいます。

モチベーションに依存すると、モチベーションがなくなった瞬間に手が止まります。それならばモチベーションがゼロでも実行できるくらい、準備してしまえばいいのです。

あらゆる「やりたくないけどやるべきこと」をルーティン化してしまえば、残るは自分がやりたいことだけ。そうなればモチベーションも上がり、自分に火をつけられるというわけです。

▼1日の最後に「自分で決めたこと」をピックアップする

人はたとえその仕事が必要だとわかっていても、「やらされ仕事」になった途端にやる気が削がれてしまうもの。「やりなさいと言われた瞬間にやる気がなくなった」というのは、学生のみならず社会人でも同じなのです。

しかしこれを逆に考えるとやらされ仕事にならなければ、やる気が維持しやすいということです。

1日の最後に「自分で決めたこと」をピックアップするという習慣を身につければ、自分がちゃんと主体的に行動できているかどうかを確かめることができます。

もし主体的な行動が確認できればモチベーション維持になりますし、できていなければ「明日は最低3つは自分で決めて動こう」と方向を修正できます。

▼常に「自分は正しい」と思える行動をする

やらされ仕事と同じくらい、人のやる気を削ぐのは「自分が間違っていると思う仕事」「自分が正しいかどうかわからない仕事」です。

確かに理屈だけで「正しい/間違っている」の判断ができる場面もありますが、生きていれば道徳心や感情でしか判断ができない場面にもたびたび遭遇します。

そういったときに何が正しいかを自分の頭で考えて、「自分は正しい」と確信を持って行動できなければ、あっという間にやる気を削がれてしまいます。

だからこそ常に「自分は正しい」と思える行動をするという習慣が必要になるのです。

この習慣を身につける方法は色々ありますが、テレビやネットのニュースを見たときに毎回「自分は何が正しいと思うか」「なぜそう思うか」の2つを考える癖をつけるのがおすすめです。

何が正しいかを自分の頭で考える訓練になるだけでなく、ニュースにも詳しくなれるので、まさに一石二鳥です。

●人間関係をマネジメントする習慣

▼キーパーソンには「弱み」を見せる

決裁権を持つ取引先担当者の上司、人事考課を担当する直属の上司、製造ラインを牛耳る工場長……仕事をスムーズに進めるためにはこうしたキーパーソンとの関係をいかに良好に保つかがポイントとなります。

ではどうすればキーパーソンに気に入ってもらえるのでしょうか。それがキーパーソンには「弱み」を見せるという習慣です。

一般的には、重要な役割を担う人にはいいところを見せたいと思うかもしれません。しかしそれは完全に逆。上役になる人というのは親分肌・姉御肌の人が多く、頼られると嬉しいと感じる人が多いからです。

したがって相手の得意分野で相談できることがあれば、むしろ「教えてください」の精神で積極的に相談するべきなのです。

それが「自分を頼ってくる可愛いやつ」というイメージを相手に与え、困ったときに助けてくれる関係を作ります。

ただしなんでもかんでも相談するのはNGです。考えることを放棄した相談と、考えることを進めるための相談の区別にはくれぐれも注意しましょう。

▼いざというときは「現場の人間」を尊重する

確かにキーパーソンとの付き合いは重要です。しかし現場で実際に手を動かすのは、同僚や後輩、事務スタッフの人たちであることも忘れてはいけません。

いくらキーパーソンに気に入られても、現場の人たちとスムーズに連携がとれなければ、思うような結果は出ないからです。

したがって何かトラブルが起きたときは、真っ先に現場の人たちを尊重し、間違っても責任をなすりつけたりしないようにしなければなりません。

もし一度でも責任を押し付けてしまうと、「何か問題が起きた時は真っ先に上にいい顔をする人」のレッテルを貼られてしまいます。一度貼られたレッテルをはがすのは簡単ではありません。

いざというときはまず現場で手を動かしてくれていたのは誰かを考え、頭を下げる。それが自分のために動いてくれる人間関係を作ります。

▼「部分否定」で嫌いな人・苦手な人をなくす

仕事をしていれば嫌いな人や苦手の人の一人や二人は必ずいます。しかしだからといって距離を置いてしまうと、そうした人たちがキーパーソンだったり、現場の人間だったりしたときに、キャリアアップに支障が出てしまいます。

「部分否定」で嫌いな人・苦手な人をなくすという習慣を身につければ、このような状況を防ぐことができます。

自分が嫌いだったり、苦手だったりする人にも、どこかしら必ずいいところがあって「あの人は良い人だ」という人もいます。

かといって自分が「この人のここが嫌い」と思う部分を無視することはできません。それならば「自分の嫌いな部分は嫌いなままで、その人のいいところはいいところとして認める」という部分否定の姿勢をとればいいのです。

これができれば「あの人のやることなすこと全部が嫌い」という全部否定から抜け出し、これまでより付き合いやすくなるはずです。

▼「褒めるため」に人間観察をする

誰でも自分を褒めてくれる人は好きになりますし、実は「褒めた方も褒められたような気持ちになり、嬉しくなってパフォーマンスが上がる」ということが心理学の研究から明らかになっています。

したがって誰かを褒めるのは、人間関係も改善できて自分の仕事力も上がるという一石二鳥の行為なのです。

しかしだからといって「とりあえず褒めておけば良いだろう」はNGです。そうした態度は簡単に見透かされ、むしろ「リップサービスの多い軽い人」という印象を与えかねません。

そこで必要になるのが「褒めるため」に人間観察をするという習慣です。相手が力を注いでいるところはどこか、気を配っているところはどこかをじっくり観察し、そこをピンポイントで褒めるのです。そうして初めて、褒めることの一石二鳥のメリットを享受できます。

▼「まずその人のためにできることをする」で味方を増やす

キャリアアップを見据えて人間関係をマネジメントするのであれば、単なる「知り合い」を増やしても大した意味はありません。

大切なのは困ったときに助けてくれる人間をどれだけ増やせるかだからです。そのために身につけておきたいのが「まずその人のためにできることをする」で味方を増やすという習慣です。

誰もから好かれ、困ったときにも助けてもらえる人というのは、たいてい「ギブの達人」です。誰かの役に立つ言動をしているからこそ、それが自分にも返ってくるわけです。だから「まずその人のためにできることをする」。すると相手もきっと自分のために何かお返しをしてくれるはずです。

このお返しは、返報性の原理といって「何かを与えられると、何かを返したくなる」という人の心理を表したもの。つまり誰にでも活用できるテクニックといえます。

互いに助け合いを繰り返していけば、徐々に「困ったときはお互い様」の関係が生まれ、キャリアアップを支えてくれる人間関係へと育っていくでしょう。

「まずその人のためにできること」が見つけられないという人は、繁盛している飲食店などに行って、店員がどんなサービスをしているかを観察する癖をつけましょう。

「入店したときは外が寒いから暖かいおしぼりだったが、清算のときは室内で温まっているから冷たいおしぼりだった」など、「ギブの達人」が何を考えているかを勉強できます。

まずは「自分にとってのキャリアアップ」を思い描くところから

様々な視点から「戦略的に未来を設計する力」「自分について深く分析する力」「自分にうまく火をつける力」「人間関係をマネジメントする力」の4つの力を磨くための習慣を紹介してきましたが、とにもかくにもまずやるべきは「自分にとってのキャリアアップ」を思い描くことです。

思い描く未来があるからこそ、自分の強みをどうしようとか、モチベーションをどう管理しようとか、誰と関係を深めておくべきだとかといった考えが生まれてくるからです。さて、あなたにとってのキャリアアップとは何ですか?

参考文献『キャリアアップのための戦略論』
『サラリーマンのキャリアアップは人間関係が9割』
Career Supli
自分にとってのキャリアアップをイメージするところから始めましょう。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部