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対策として、まず何を考えるべきか。

 今回5Gで初めて、重要なインフラの装置が中国の企業によって高いマーケットシェアを占められるという、今までなかったことが起こってしまうわけだ。これまで中国の政府や産業が取り組んできたことが、ついに実現できるようになる可能性があることに非常に危機感がある。中国は新興国の開拓に力を入れている。新興国の監視もできるし、これをテコに先進国でも同じようなことが可能になるのではないかと危惧している。

 5Gで中国製のインフラが増えていくと、そこには脆弱性または何らかの抜け道がある可能性を理解したうえで技術的な対策を打たなくてはならない。政府だけでなく、産業も一緒に考えていく必要がある。

 まず保護すべき対象をきちんと考える。5Gでどこの国の技術を導入するかを考えるのはその後だ。中国の技術を導入するのであれば、かなり大きなリスクを負うことになると思うが、その状況でクリティカルな情報を守れるかどうかを見極めなければならない。

 リスクがあるものは導入しないのが一番よい。だが、5Gのインフラにどこの国の技術を使うかという点に関して、一般的な企業に選択の余地はない。脆弱性や問題があり得るインフラになってしまったら、その状況でもクリティカルな情報を守るような技術を自分たちで探すか作るかしなければならない。私がTRUSTICAという会社に関わっているのは、インフラに脆弱性があっても守れる技術があるからだ。

 リスクを抱えたインフラは長期的な問題であり、アップデートやメンテナンスを継続していかなくてはならない。そして、5Gで相互接続された世界では、単にインフラを守るだけでなく、つながっているものすべてを守らなくてはならない。

インフラにつながるデバイスの脅威はどのように捉えているか。

 同じような技術レベルを持つものが複数あれば、消費者は一番安いものを購入する。リスクがあるデバイスから、リスクがあるインフラを使えば、リスクはさらに高くなってしまう。その点でベンダーの分散(マルチベンダー化)は非常に重要だ。5Gでも調達時に分散するのが理想だが、できないのであれば、リスクを下げるための対策を考える必要がある。

 ここでも政府のポリシー、政策が重要になる。米国は今、ファーウェイやZTEに対しセキュリティリスクの観点で大きな懸念を抱き、実際にアクションも起こしている。大事なことは、リスクを判定し、自国民にとって高いリスクがあるならばポリシー、政策をしっかりと守っていくことだと思う。