政治経済
【現地緊急報告】米朝首脳会談に見た シンガポールのスゴすぎる「仕切り力」
Text by Jun Komatsuzaki / COURRiER Japon
金正恩朝鮮労働党委員長を出迎えたシンガポールのバラクリシュナン外相 Getty Images
米朝首脳会談は幕を閉じた──。このイベントで得をしたのは米国か、それとも北朝鮮か。おそらく、そのどちらでもない。真の受益者は、シンガポールだ。現地シンガポールからレポートしよう。
「おもてなし」のウラにあるもの
前日ギリギリまで実務者協議が続くなど、じつは直前の直前まで米朝首脳会談の開催は危ぶまれていた。
果たしてトランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党は、本当に会うことになるんだろうか? ぼくも、そんな疑念が晴れないままにシンガポールに降り立ったメディア関係者の一人だ。
今日の今日まで、ぼくのように右往左往していたメディア関係者は数多い。実際、会談前日の夕方には、「土壇場で会談中止が決まり、失意のうちに金正恩は平壌へ戻る」との未確認情報も飛び交った。
そんな難しい状況がギリギリまで続くなかで光ったのが、ホスト国シンガポールの動きだった。バリバリと、そして粛々とメディア対応を取り仕切ったからだ。
シンガポールは、米朝首脳会談を「建国史上最大のメディア受け入れイベント」(シンガポール政府情報通信省)であると位置づけていた。彼らは、米国・北朝鮮とは別のリングで、「絶対に負けられない戦い」を続けていたのだ。
そして、ぼくの実感からすれば、シンガポールはこの戦いで「完勝」したように思う。
歴史上に残るほどの仕切り屋=ファシリテーターぶりを、「たったの」(シンガポール政府関係者)2000万ドルの出費で、全世界に印象づけることに成功したからだ。
まず、シンガポールのファシリテーターぶりがいかんなく発揮されたのが、世界中のメディア関係者を受け入れる国際メディアセンター(IMC)での対応だ。それは、まさに「おもてなし」というにふさわしいものだった。
IMCの雰囲気は、なんだかAppleやGoogleやAdobeが開催する年一度のカンファレンスみたいだ。下手を打てば自分たちシンガポール政府を批判するかもしれないメディアたちに対して、突き放した雰囲気がいっさいない。
だが、おもてなしのウラには「世界中から集まったメディアに、シンガポールのファンになって帰ってもらう」という、したたかな国家意思が明確に感じられる。