Ⅰ
「そんじゃあ全員の名前決まったから、職場体験の話するぞ」
生徒全員が席に着き、相澤が話す。
「期間は一週間、それぞれに来てる事務所をピックアップした紙を渡すからよく見て選んでくれ」
双蛇にもプリントが手渡される。
「いや多すぎる」
「この中から選ぶのはちょっと難しいな…」
轟が双蛇の受け取ったプリントを見て呟く。
プリント一面にびっしりと書き込まれた事務所の名前を見て少し引き気味の双蛇は気分転換に轟に話しかける。
「なぁ轟、お前どこにすんだ?」
「俺は…親父んとこ行く」
少し言葉をためて話す轟。
「…そっか…ってあれ」
「どうした?」
「いや、俺にも来てた」
名前を見てみると、確かにエンデヴァー事務所と書いている。
「まぁ憧れのヒーローとか居ないし、NO.2の実力を見せてほしい感じはある」
「お前さえよければ一緒に行くか」
「じゃあそうすっかな」
轟と双蛇―――クラスでもトップの二人は、全国トップクラスの男の事務所に行くことを決意する。
「持ち物何必要なんだこれ…服か?」
「服と、あとは必要最低限の道具でいいんじゃねぇか」
「そんくらい記載しといてほしいわ」
ぼやきながらも良く準備を進める為にメモをする二人。
「んじゃーお前ら、決まったら俺に教えてくれ。一週間と言う長い間お世話になるんだ、くれぐれも失礼のないようにしろよ」
相澤はそう言うとミッドナイトと共に教室から退出する。
プロという舞台をその眼で見ることのできるこのチャンス、雄英生―――ヒーローの卵たちはどんな経験をして帰ってくるのか。
それはまだ、誰にもわからない。
Ⅱ
「…んで、この事務所はなんなんだ」
「…でけぇ」
人気No.2ヒーローエンデヴァーの事務所に到着した双蛇と轟は、その大きな事務所に驚いていた。
「雄英と言いエンデヴァーと言い、何でこんなに建物がでかいんだ…」
自分が住んでた家がボロボロの廃墟で、悪の親玉(笑)とバカにしていたのを思い出す。その度に絞められていたが。
「とりあえず受け付けあるらしいから、そっち行こう」
「入ってすぐにあるって書いてるぞ」
とりあえず中に入る轟と双蛇。
「―――――待っていたぞ焦凍ォ!!」
「えぇ…」
受付で連絡しろと書類に書いてあるのに普通に迎えに来ているエンデヴァーに、これまで轟の言っていたイメージが変わっていく。
「何やってるんですかエンデヴァーさん」
「やはりお前も来たのか、紫村」
「…知り合いだったのか?」
やけに仲良さそうに話す二人に、轟が問う。
「いや、特には」
「これが初対面だ」
「……何でそんなに仲良さげなんだ」
若干双蛇に対し不満げな目を向ける轟。
幼い頃から自分を虐待レベルで厳しく育ててきて、母親を精神的に追い詰め病院に放り込んだ人でなしと雄英に入って最も仲のいい親友が仲良さそうだったら複雑にもなる。
「フン、こいつは個性と言いその精神性と言い非常に、非常に
エンデヴァーはその身から溢れる炎を感情の高ぶりと共に少し燃え盛らせ語る。
「まぁ、そんな理由だけを言ったところでどうにもならん。兎に角俺の事務所で何をやるか――――それを教えてやる」
ついてこい、そう言いながらエレベーターに向かうエンデヴァー。
「…んだよ、あのクソ親父自分勝手すぎだろ」
「まま、考えがあっての事だろ。確かにエンデヴァーさんのやってきたことは許されることじゃないけど―――」
「…わかってる。ただ一方的に憎むだけじゃ意味がない、少しは理解してやりたいとは思う」
「大人になったなぁ」
「なんだとテメー、蕎麦グミ食わすぞ」
「それは勘弁」
「無駄話をする暇はないぞォ!!この後すぐに保須に移動するからな!」
二人で話す轟と双蛇を見て、エンデヴァーは急かす。
「保須って事は、例のヴィランか」
「そうだ、ヒーロー殺し―――あれはそこら辺のヒーローの手に余る」
雄英体育祭の最中、飯田の兄が"ヒーロー殺し"と呼ばれるヴィランに襲撃されヒーロー活動を諦めるほどの重傷を負ってしまった。
「そういや飯田って今保須いってるよな」
「…確かに」
「ほう、飯田…飯田天哉か。あいつの個性も中々使い勝手のいい汎用性の高い個性だ。決勝戦は相性の関係もあったが、戦闘も救助もこなせる個性は貴重だからな」
エンデヴァーがそう言い、轟が驚く。
「…意外だな、アンタは俺以外の奴はどうでもいいんだと思ってた」
「フン、舐めるなよ焦凍。俺はこの国のトップ2だ。後進の育成、鍛錬、そして次世代の傾向―――これを把握し次の世代を育てる義務が存在する。勿論お前にはオールマイトを超えて1番になってもらうがな」
そう言いながらエレベーターに入り、階層を選択する。
「お前は俺への対抗心で、氷の個性しか使わないと―――幼い頃から言っていた筈だ。だが、雄英体育祭では炎の個性を使用し全力の闘いをした」
「…別に、アンタを許したわけじゃない」
「一向に構わん。大事なのは、お前が
そう言うとエンデヴァーは双蛇を見る。
「―――紫村。お前のその精神性が焦凍の目を覚まさせた。だからこそ、お前を指名した」
―――必ずこいつは、
「この一週間と言う短い間で―――更に飛躍してくれると思っている。さぁ――――――」
エレベーターが空き、エンデヴァーが出ていく。
周りにサイドキック達が道を作っており、モーセの様に割られている真ん中を歩いて自分の席に座る。
「――――よく来たな。ここが、
職場見学―――――開始。
繋ぎの話、体育祭であんだけ暴れときゃそりゃ興味惹かれますわ
ぶっちゃけオールマイトの所に行ってギチギチするのが一番なんですけど、募集してないんで使えませんでした。