キャンパスで友人と談笑する星野さん=宇都宮大

 睡眠障害による不登校を繰り返しながら5年かけて高校を卒業し、今春、現役合格を果たした大学生がいる。宇都宮大農学部1年の星野清虎(ほしのしんご)さん(20)=小山市出身。「大学生になりたい」の思いで心身の不調を乗り越えた。星野さんを支えた母校、小山西高の教諭らは「学びたいことを見つけられて何より」と温かく見守っている。

 幼少期から朝起きることと集団行動が苦手だったという星野さん。「幼稚園や小学校も行きたがらない傾向」があり、学校に行かせようとする家族に抵抗するようになっていった。

 高校に進学すると、起床時間がどんどん遅くなり、夜は寝ようと思っても眠れない日が続くようになった。受診したところ、睡眠障害と診断された。「明日はなんとかしなくちゃ」と焦るほど、症状は悪化。遅刻したり、数週間にわたって休んだりすることが多くなった。

 高校1年で2回留年すると、同級生たちとも疎遠に。「気を使われるのは面倒くさい」。話し掛けられても、あえて会話を続けないようにした。家族とも顔を合わせたくなかった。「こんなことをしていていいのかとも思ったが、学校をやめるよりも高校生でいる方が楽」と在学し続けたが、2年になっても出席日数はぎりぎりだった。「自分が普通とは違う理由を聞かれても、うまく説明できないもどかしさがあった」

 高校3年の時、睡眠障害の薬の副作用で「自分でも訳の分からない長文」を書き、メールで同級生に送信してしまったことがある。「『やってしまった』と気付いて。まともになりたいと感じた」出来事だった。

 「勉強したい」「大学生になりたい」。足りない出席日数分の補習を受け、塾に通って受験勉強をしながら考えていたのは「これからどんな風に生きていくか」。

 大学合格を見届けた星野さんの3年時の担任秋元敦子(あきもとあつこ)教諭(56)は、「本人の頑張り」と高く評価。飯塚仁(いいづかひとし)校長(59)は「同じような悩みを持つ人を勇気づける事例だと思う」と話す。

 現在、宇都宮市内で1人暮らしをしながら大学で森林の管理や保全について学ぶ星野さん。管弦楽やテニスなどのサークルに入り、人と関わって笑うことも増えた。今の状態を「ノイズが減った」と表現する。「良い意味で適当に振る舞えるようになったんだと思う。心も体も、以前よりずっと健康」とほほ笑む。