2008年度全日本吹奏楽コンクール課題曲のすべて
SHOBI講師陣による課題曲講座
IV. 天馬の道~吹奏楽のために(片岡寛晶)
パート別ワンポイントアドバイス(パーカッション編/講師・日比一宏)
Timp.の音の設定について、スコアに書かれた指示から読み取れる、作曲者の設定ではG/A/C/Fで曲が始ま り、[D] に入った所でAをC、CをDに音換えをするようになっています。しかし、[D] の4小節の間(時間で約8秒)で、2台の音換えは、出来ない訳ではありませんが、少し忙しい感じになるでしょう。
そこで、最初にG/C/D/Fに設定しておき、[B] に入ったところでGをAに換え、[C] または[D] に入ったところでAをGにする方法はどうでしょう。これだと、音換え自体は2回になりますが、1回に1台だけなので、落ち着いて出来ると思います。
次に、打楽器の持ち替えと楽器の配置についてですが、スコアに書かれた割り振り通りに演奏する場合の配置は、次のようになります。
この場合で問題になる持ち替えは、[C] のSus.Cymb.からC.Cymb.と、終わり4小節前のT-tam.からXylo.への持ち替えです。前者は、S.Cymb.の音を止めてからの持ち替えで、1拍目で音を止めて3拍の間(約1,9秒)しかありません。
後者は4分音符で記譜されていますが、実際には2~3拍間位は音を残しておきたいところで、なおかつ、曲が終わった時に音を残さないよう、確実に音を止めてからの持ち替えです。3拍子に入った所から持ち替えるとして5拍の間(約2,2秒)しかありません。
も う1人増やすことが出来れば、その人がC.Cymb.T-tam.Maracas.を担当し、 さらに、Perc.2に出て来るSus.Cymb.を全てPerc.3が担当すると、よりスムーズに持ち替えることができます。その場合の楽器配置は、次 のようになります。破線から右側の楽器を、左側の前に移動し2列に配置することもできます。
冒頭のWind Chimeは、記譜通りに2拍間かけて、演奏しましょう。チャイムのバーの部分でも良いですが、吊るし紐をグリッサンドしても奇麗な音がします。やって見て下さい。
[A] B.Dr.のロールは、リムに近い部分で奏すると、豊かな響きが出せると思います。cresc.の先の一発はセンターが良いでしょう。
[B] 2小節前のS.Cymb.は、響きを残した方が自然でしょう。Piu mossoの頭と同じ扱いにして下さい。
[B] S.Dr.の2つの装飾音は、全てLL Rの手順で。「タカタン」というより「スタッ」といった感じが良いでしょう。B.Dr.は、打面を左手で抑えながら叩くと、響きをコントロールしやすいでしょう。
Clavesは、楽器を握りしめるように持っては良い音が出ません。そろえて軽く丸めた指の上に、楽器を載せる感じで持ち、楽器の下に空間があるようにすると良いでしょう。
[C] のXylo.の手順は、RLRLR RLRL Rで、アクセントを強調して下さい。
[E] 5小節目のTimp.は、なるべく短く、すぐに音を止めて下さい。前の小節でロールしたFの音も、すぐに処理しましょう。
[F] 9小節目、S.Dr.のrim shotは、p からのcresc.dim.ですが、少し強めに叩いて音色を聴かせます。あまりバチの細い部分でない方が、良いでしょう。
[G] のマラカスは、両手に持った楽器を水平に構え、手首を素早く動かすようにして演奏します。手の動きより一瞬音が遅れるので、上手くタイミングを計って下さい。
[H] Cymb.のmetal stickは、トライアングル用のバチで演奏しましょう。8分音符で記譜されていますが、とても短く、歯切れ良く演奏して下さい。
最後の小節は、音を残さないように注意しましょう。B.Dr.は裏側も止めて下さい。Timp.は、CとFを先に止めて、次にGとDを止めるようにします。文字で表すと時間があるように感じますが、一瞬でやって下さい。
【日比一宏プロフィール】
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。東京吹奏楽団 ティンパニ奏者の他、国内外のオーケストラ、吹奏楽団、スタジオ、テレビ、ミュージカル等で活動。現在、東京ミュージック&メディアアーツ尚美、東京学芸 大学音楽科 各講師。