袴田事件で東京高裁再審を認めず
昭和41年に起きたいわゆる「袴田事件」で、東京高等裁判所は、死刑が確定しその後釈放された袴田巌さんが求めていた再審・裁判のやり直しについて、静岡地裁とは逆に、認めない決定を出しました。
一方、4年前に地裁が認めた釈放については、年齢や健康状態などを踏まえ、取り消しませんでした。
昭和41年に今の静岡市清水区で会社役員の一家4人が殺害された事件では、従業員だった袴田巌さん(82)の死刑が確定しましたが、袴田さんは無実を訴え再審を申し立てました。
静岡地方裁判所は、4年前、犯人のものとされる衣類の血痕のDNA型が袴田さんと一致しなかったという弁護側の鑑定結果などをもとに、再審とともに釈放も認める異例の決定を出しました。
決定を不服として検察が抗告したため、東京高等裁判所でDNA鑑定が信用できるかどうかなどが改めて審理されました。
東京高等裁判所の大島隆明裁判長は、静岡地裁の決定を取り消し、再審を認めない決定を出しました。
決定では、「地裁が認めたDNA鑑定の手法の科学的原理や有用性には深刻な疑問が存在している。地裁の判断は不合理で認められない」という判断を示しました。
また、地裁が認めた釈放については、「本人の年齢や生活状況、健康状態などに照らすと決定が確定する前に取り消すのが相当とは言いがたい」として、取り消しませんでした。
いわゆる「袴田事件」で、東京高等裁判所が袴田巌さん(82)の再審・裁判のやり直しを認めない決定を出したあと、袴田さんは自宅のある静岡県浜松市内で午後2時ごろ支援者の前に姿をあらわし、支援者から決定が出たことについて説明を受けると、短く「ああ」と一言答えました。
また、支援者から「元気で」と声をかけられると「はい」と答えていました。
報道陣から「高裁の判断が出ましたが」と問われたのに対し、袴田さんは「そんなの嘘なんだよ。事件がないんだから。」と答えました。
袴田巌さんの再審を認めない決定が出たことを受けて、裁判所の前では袴田さんの支援者たちが「袴田さんは無実だ」「不当決定に私たちは断固抗議する」などと強く訴えました。
支援者の前で、西嶋勝彦弁護団長は「再審を認めないというとんでもない内容で、とても承服できません。巌さんが再び拘束されることがないように最大の努力をしていきたい。直ちに特別抗告する」と述べました。
袴田巌さんの姉のひで子さんは「残念でなりません。次に向かって進みます。みなさまのご声援をよろしくお願いいたします」と述べました。