バルト海に面する人口135万人の小国エストニアの首都タリンで4月下旬、北大西洋条約機構(NATO)による世界最大のサイバー防衛演習「ロックト・シールズ2018」が行われた。エストニアが国境を接するロシアなどからのサイバー攻撃の脅威に対抗するためだ。演習は、電気や水、情報通信などライフラインのインフラが攻撃されたと想定。日本を含む世界30カ国から集まった過去最多の軍関係者やサイバー専門家約千人はウオーゲーム(実戦演習)で迫真の攻防を展開した。(岡部伸撮影)
タリン市内の高層ホテル。
「B発電所が攻撃された。直ちに復旧を!」
「了解!」
宴会場に陣取った「NATOサイバー防衛協力センター」の被害対策ルームに緊張した声が飛び交った。
ロックト・シールズは、北大西洋に浮かぶ架空の島国「ベリリア」が影響力拡大をもくろむ「クリムゾニア」からサイバー攻撃を受け、NATOに支援要請するとのシナリオで始まった。
「クリムゾニア」はロシアを想定しているとみられる。
ロシアは、エストニアがタリン市内の旧ソ連の赤軍記念碑を撤去したため、2007年にこの国に世界初の大規模サイバー攻撃を仕掛けたとされる。
銀行、情報通信、政府機関、メディアなどが大混乱となり、エストニアは翌08年にこの防衛協力センターをNATOから誘致した。加盟国を中心に約20の参加国がサイバー防衛に取り組んでいる。演習はこの年から始まり今回で10回目を数え、世界最先端のサイバー防衛を可能にしている。
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