今、自動車産業は異様な熱気に包まれている。その熱気の発生源となっているのがEV(電気自動車)と自動運転という二つのキーワードである。今や経済雑誌だけでなく、一般向けの雑誌においてさえ、EVや自動運転といった言葉を頻繁に目にするようになった。書籍の世界でも、タイトルに「EV」と入れるだけで、その売り上げは格段に上がるという。まさに世の中はEVブーム、自動運転ブームともいえるだろう。

 こうしたEVや自動運転は、自動車業界に「100年に一度の変化」をもたらすといわれている。“EVブーム”の火付け役となったのはEVベンチャーの米テスラだ。同社は2008年に自社初の量産EV「ロードスター」を発売した後、「モでルS」、「モでルX」、さらには低価格車種の「モでル3」へと商品ラインアップを拡充し、EV完成車メーカーとして、そのポジションを確立していった。テスラの成功が画期的なのは、それまで難しいといわれていたEVの商業化が成り立つことを初めて示したことだ。

 一方、“自動運転ブーム”のきっかけをつくったのは米国の国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency、略称DARPA)が2004~2007年に実施した無人車両レース「DARPAグランド・チャレンジ」(2004年、2005年)と「DARPAアーバン・チャレンジ」(2007年)だった。DARPAが無人車両レースを開催した目的は、無人軍用車の開発を促進するためであった。

 2004年の大会では完走車はゼロだったが、翌年の2005年の大会では、5台の自動運転車が与えられたコースを完走することに成功した。グランド・チャレンジは砂漠でのレースで、2007年のアーバン・チャレンジは米軍の基地施設を活用した模擬的な市街地の走行を競うものだった。そして、このアーバン・チャレンジで好成績を上げた米スタンフォーフォード大学と米カーネギー・メロン大学の研究者が米グーグルに転職し、2010年に、完成車メーカーに先駆けて自動運転車を開発中であることを発表した。これが、自動運転ブームの幕開けとなった。

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