松本流みりん干し。色と照りが良い。みりん干しは良いものだ。
10年前に書いたナマコの記事で書きましたが、実家の干物屋(松本商店)が父の死去を機に廃業することになりました。でも折角美味しい干物が作れるのにもったいない。だけど店は続けられない。
そこで、干物作りのレシピを公開しようと思います。 四代、120年続いた干物屋のレシピ。営業上の秘密も含めて洗いざらい書いちゃいます。みんな、これを読んだら干物は買わずに自分で作ったら良いと思うよ。自分で食べる分を作るくらいなら簡単だから。 ※2008年10月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。
1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。
前の記事:「十万石まんじゅうを3D化するまでのお話」 人気記事:「 揚げ物に油をかけると、すっげーウマい」 > 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内 実家に帰ったついでに干物作りを習った今回干物作りを教えてくるのは、母。松本商店のしょこたん。写真を撮りながら、
「この写真、インターネットに載せても良い?」 と聞いたら、 「絶対ダメ」 と言われたので後ろ姿で失礼します。 母は元々東京でOLさんをやったり病院の事務をやったりする普通の女性だった。話を聞くと結構ナウなヤングだったりして、若干驚いた。みんなのお母さんやお父さんもナウなヤングだった時期があるだろうから、話を聞いてみるといい。 母の後ろ姿。こんなに小さかったっけか。
そんな彼女がケガをして小湊(松本商店がある港町)にあった接骨院に通っていたのを父が見つけた。父が母のことを気に入って見合いを申し込んだのだそうだ。
当初、母は乗り気じゃなく一度断ったそうだ。でも一度会ってみたら悪い人じゃなさそうだと言うことで乗り気に。しかし母の母、つまり祖母(既に他界)はその縁談に反対していたそうだ。 「あんた、生の肉も触れないじゃない。干物屋なんて無理よ」 そう、母は昔魚はおろか、生肉さえ手で触れなかったのだった。それでも、割りと楽天的な母は「どうにかなるでしょ」と結婚を決定。以後、35年以上に渡って干物屋、松本商店を支える柱の1本として頑張ってきた。 当然、今では干物作りのエキスパートだ。 今回は、そんな母を師匠に干物作りを習う。 魚をさばくための包丁。研ぐと目印に刃先を赤く塗ります。
素材を買います当然干物作りには魚が必要だ。営業していた頃は水産会社から魚を買ったり、漁港の入札に参加して競り落としたりしていた。安い時は材料の魚を1トン数百円で買えたりしたらしい。
その大量の魚を加工するには人手がいる。しかも、並外れた生産量を持つ人手が。それを失った今となっては、例え設備があっても営業を続けるのは困難なのだ。故の閉店。 と、話が逸れた。 魚は鴨川市のベイシアで買ってきた。小湊は過疎が進みすぎて鮮魚を買う店すら無い。鴨川産のアジ、サンマ、鯖を買った。イカはどこ産か不明。ついでにブリの切り身も買った。 美味しい干物になるだろうか? アジがたくさん売ってた。1匹90円くらいかな。
真アジ。アジは干物の王道だよね。
サンマ。1尾68円。そりゃ漁師もストやるわ、って値段。
鯖。丸まるしてます。258円。
ブリの切り身。みりん干しにしようかと思って。
まずはつけ汁作り干物を作るのに必要不可欠な物は魚ともう一つ、つけ汁。今回は普通の干物とみりん干しの2種類を作るので、それらのレシピを公開していきたい。まずは普通の干物。
■本当の材料
・塩分濃度8度の塩水(タル一杯) ・どこのご家庭にもあるトレハロース(1カップ) ・どこのご家庭にもあるシーフレッシュ(400g) ・どこのご家庭にもあるだししるべ昆布味(1kg) 作業場にあったつけ汁の材料。
いや、大体どこのご家庭にも無い材料だ。どれも普通の食品添加物だが、まぁ、要するに濃いめの塩水と旨味調味料があれば良い。例えば本だし昆布味とか。
と言うわけで、今回はレシピのスケールを変えて作った。 ■今回の材料
・水1リットル ・塩80g ・みりん大さじ1杯 ・昆布茶小さじ1杯 トレハロースやシーフレッシュは無くてもOK。商品として売らないならいらない。だししるべは直接味をみたら、要するにみりんと昆布ダシの味だったので代用した。
このつけ汁に開いた魚を漬ける。厳密には季節や魚の種類によって塩分濃度や漬ける時間が変わる。一部を紹介するとこんな感じ。 塩分計で計りながらの作業。
主に水温、魚の大きさ、身の質で条件が変わる。そういえば作った干物を食べて、「もう少ししょっぱくて良いな」なんて家族でやってたのを思い出した。試行錯誤の結果が上の表って訳だ。
いつもはこういうタルで干物を漬ける。100リットルくらいか。
次はみりん干しのつけ汁次はみりん干し用のつけ汁だ。これもまずは通常レシピから紹介しよう。
■本当の材料
・醤油(1.8リットル) ・砂糖(2.5kg) ・みりん(カップ1杯) 材料はどこのご家庭にもあると思うが、スケールがちょっとだけ大きい。これだと多すぎるので、1/6スケールにしてみた。
■今回の材料
・醤油(300ml) ・砂糖(416g) ・みりん(大さじ2) 主に醤油と砂糖です。
みりん干しなのにみりんはほんのちょっとしか使わない。母に聞くと、「そうよ、甘味は大体砂糖なのよ。」とサラッと言った。混ぜると結構ドロドロである。っていうか砂糖を入れながら、「こんなに入れるのかよ・・・。」と軽く引いた。お菓子を作ってる時と似た心境だ。
松本商店の干物が好きだった人が読んだら引かないか心配だが、あの味の秘密はこのレシピなのだから仕方ない。 次のページで魚を開いて漬けて干しますいよいよ開き工程に入る。長くなってきたので次のページへ。
最終的にはこんな干物が出来ます。
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