【それは誰も知らない御伽噺】
乱歩 


六月某日。


未だ梅雨明けはしていないものの、この日は澄み渡る晴天。
夏特有の少し湿った空気が、鼻腔に心地良い。



「どうしよう・・・」



隣町にある中規模パチンコ店の駐車場。
そこに設置された喫煙スペースで紫煙を燻らせながら、一人呟く。

時刻は17時。


現在の総投資・・・2250枚。



何とか500枚ほどの持ちメダルはあるものの、他に打てそうな台も見当たらない。

設定狙いのつもりだったけれど、狙えるような台か見当たらず、途方に暮れている現状。


正直なところ、取り返せるビジョンが見えない。

先ほどから何を打っても、500枚が関の山。
俗に言う〝ダメな日〟なのである。



長くなった煙草の灰が、自重に耐え切れずにアスファルトの上に落ちる。

残った火種を灰皿でもみ消し、店内へと戻る。



先ほどまで打っていた『バーサス』へ戻り、出玉をドル箱に移す。

この台自体、合算は悪くは無い。

けれど小役の落ちやゲーム中のハズレが少々心許ない。
さらには頼みの綱だったボーナス合算さえ、段々と落ちてきた。



仕事終わり、夜から稼動は伸びるだろう。
そうなるといよいよ動き辛くなる。

プラスでなくとも、せめて取り返せれば・・・そんな思いがプレッシャーとなり、のし掛かる。



しかし、ここら辺で僕の何かが吹っ切れる。



考えてたってメダルは増えないのだから、いっそのことこの500枚を無に帰すつもりで打ってやろう。


そう、例えば打ったことのない機種の勉強代として使うのも良いではないだろうか。


打ったことのない機種・・・





これに決めた!

パチスロ フェアリーテイル



その筐体のインパクトから、ホールで目に止まった方もおられるであろうこの機種。

店員目線の話しをすると、箱を下ろす時にすこぶる液晶が邪魔だったりする。
液晶を引っ込めるボタンもあるのだけれど、店員の為にわざわざそれを押させるというのも気が引ける。



取り敢えず座ってみる。
液晶画面は、CZ中やART中に伸びるらしい。

ドル箱のメダルを下皿に移し、打ち始める。
 

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