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「日本のアニメは世界で戦えるコンテンツ」Netflixが今アニメに“本気”になる理由

大手スタジオと提携し、オリジナル作品を複数制作予定。今、日本アニメの可能性をどう捉えているのだろうか?

世界1億2000万人超の会員を抱える映像配信サービスが、日本発のオリジナルアニメーションを強化する姿勢を見せている。

3月には提携第1弾として「B: The Beginning」(Production I.G)、「A.I.C.O. Incarnation」(ボンズ)の独占配信を立て続けにスタートした。

「Netflixのミッションは、良質な作品を世界のお客さんに継続的に届けること」

「今回の提携は、日本発のアニメジャンルを本格的に充実させていく第一歩です」

そう話すのは、Netflixのアニメ部門を統括するディレクター、沖浦泰斗氏だ。

世界で戦うコンテンツとして、ジャパン・アニメーションをどう捉えているのだろうか?

作品単位ではなく、スタジオと中長期な連携を

Netflixでは、これまでも新旧多数のアニメ作品を配信してきた。今回の包括的提携は、従来の作品単位での配信契約ではなく、スタジオとの連携であることが特徴だ。

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『B: The Beginning』本予告編

沖浦氏は「複数年にわたり、複数作品を中長期的に配信できるようになったのが重要」と本提携の意義を語る(今後の配信作品数などは未発表)。

「よいアニメを作るためには、よいスタジオと一緒にやることが不可欠。日本に制作会社は多数あるとはいえ、トップレベルの作品を継続的に生み出せるスタジオはそうそうありません」

「Production I.Gとボンズ、名実ともに業界を代表する2社と、今後数年を見据えてコミットできるのは幸運なこと。両社とも『Netflixをうまく利用して新しい流れを作りたい』と挑戦に前向きな姿勢でありがたい」

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『A.I.C.O. Incarnation』本予告編

世界に向けた独占配信を担うと同時に、同社が制作資金を出資し、企画段階から関わることになる。

「強いストーリー、強いキャラクタ、そしてアニメならではのビジュアルインパクト。この3点は重視しますが、具体的に手取り足取り口を出すことはまずありません」

「あくまで仕事は環境作り。例えるなら、彼らが跳び箱で最大の跳躍ができるよう、一番いいポジションに踏切台をセットする、というイメージでしょうか」

アニメ視聴の9割は海外から

Netflixが日本発のアニメに力を入れる理由は、シンプルに「世界で戦えるコンテンツだから」。

例えば、アニメジャンル全体(キッズ向け教育番組なども含む)で見ると、90%の視聴が日本以外の国からだ。

フランス、ブラジル、イタリアなど古くから日本アニメの影響が知られる地域はもちろん、それ以外の国や地域でも幅広く見られているという。

同社が重視するのは、アダルトエンゲージング――つまり、大人が見て見応えがある作品であること。

海外では「アニメは子どもが見るもの」という既成概念が強い国も少なくないが「確実に変わってきているのでは」と沖浦氏は話す。

「ロサンゼルスやNY、フランスで開催されるアニメイベントは数十万人単位の参加者が集まり、コスプレを楽しむ人も多い。Netflixを通じて良質な作品を広く届けることで、さらにアニメに親しむ人の市場を広げられるのではと期待しています」

本格的にアニメ制作・配信に力を入れ始めた証として、2018年1月~3月にかけて、前述の2作品に加え「DEVILMAN crybaby」「ソードガイ The Animation」と日本発のオリジナルアニメを4作品リリースした。

「国内外問わず、反響はいずれも極めて上々です」

「『B: The Beginning 』『A.I.C.O. Incarnation』は原作の漫画や小説がないオリジナル脚本の企画で特にチャレンジングでした。どんな結果になるか緊張していたのですが、非常に満足のいく手応えでした」

海外ファンに作品を届けることに注力しつつ、国内でも積極的に「アニメのNetflix」をアピールしていく。

3月に「AnimeJapan 2018」に初出展したのも、アニメジャンルへの“本気度”を知ってもらいたいたかったからという。

「配信ラインナップはかなり充実してきたのですが、まだまだファンの皆さんには当社のアニメコンテンツの豊富さが知られていないと感じることも。『Netflix、やるじゃん』と思ってもらえるよう、少しずつ認知を広げていきたい」

Netflixは製作委員会方式を変えるか?

日本では、アニメ制作にあたってプロジェクト単位でテレビ局やコンテンツホルダー、広告代理店などが共同で出資する「製作委員会方式」を取ることが多い。

円滑な資金調達やリスク分散の点でメリットがあるものの、DVDなどのパッケージ売上が落ち込み、期待できるリターンが少なくなる今、新たなビジネスモデルが必要では? という声もある。

沖浦氏は、「ジョジョの奇妙な冒険」などを手がける制作会社デイヴィッドプロダクションの創業者だ。2017年秋に現職につくまで、現場サイドからアニメ制作に関わってきた。

製作委員会方式の是非について「特にコメントする立場にはない」と断りつつ、Netflixを始めとするネット配信ビジネスは「業界全体のエコシステムの成長に貢献できる選択肢では」と話す。

「制作者側だった頃から、もっと作品とのコンタクトポイントを増やしたいという気持ちが強くありました。事前に録画した番組を帰宅後にテレビで見るのと、口コミで気になった作品を通勤途中にスマホで見るのでは、視聴側のハードルがまったく違いますよね」

「時間や場所にとらわれずに見てもらえる環境は作り手としてもありがたい環境。ファンの裾野やビジネスチャンスを広げる糸口になりえると思います」

制作資金が潤沢って本当?

作品の質にこだわり、時にはハリウッド大作レベルの膨大な制作資金を投じることで知られるNetflix。

アニメにも同じように潤沢な制作資金が与えられるならば、ビジネスモデルや労働環境を改善できる可能性があるのでは?

“黒船”に対しそんな期待も見られるが、実際はどうだろうか?

「期待はありがたいのですが、若干誤解を修正すると、アニメにもハリウッド映画並みの予算がついているということは残念ながらありません」

「日本発の番組の中ではアニメはよく見られている部類ではありますが『ストレンジャー・シングス』や『ハウス・オブ・カード』など世界的に大ヒットしたドラマほどではない」

「国内の視聴者だけをターゲットにするよりも、最初から海外配信を前提としている分、ポテンシャルは大きくなります。その結果、通常の予算よりは多く確保できる傾向がある……程度でしょうか」

とはいえ、「従来のテレビアニメシリーズと比べると制作費が高いのは事実」だとも話す。

「その分、国内外の多くのファンの期待に答えるため、相応のクオリティが求められるということでもあります」

10年後も見られるクオリティを目指すNetflixの撮影現場では、実写映画の場合、4Kカメラをはじめ機材投資にもこだわる。アニメもまったく同じ条件というわけではないが「劇場版に近い品質を求めている」という。

「いい作品を作ろうと思えば、それなりにお金も時間もかかる。予算もアップしますが、作品作りに注ぐエネルギーや情熱も今までと変わらず必要になる。制作がタフな仕事であることには変わりありません」

「Netflixはコンテンツ作りにおいて、トップレベルのクリエイター、制作者を尊敬しています。制作費に関しても、彼らに最高の環境で最大限の力を発揮もらうための一助になればと考えています」