プロの漫画家として作品を描き続けるためには才能だけではなく、雑誌など発表する場が必要だ。雑誌の休刊や連載の打ち切りのために、途中で断ち切られた物語は少なくないだろう。しかしそうした漫画の宿命から逃れ、新たな道を切り拓いている漫画家もいる。高野真之さんはその一人だ。
子どものころから漫画家を志していた高野さんは、広島から進学のために上京し、雑誌のイラストなどの仕事を経て漫画家のアシスタントとなった。その後、先輩作家に紹介された編集者から声がかかり、1999年に漫画雑誌で本格デビューした。
「それまで2~3本しかストーリー漫画を描き上げたことがなかったので、デビューできたのは本当にラッキーでした」と高野さんは当時を振り返る。好きな映画や漫画を参考にして身に着けたという構成力と、アシスタント時代に鍛えられた画力などの才能が買われ、人気ライトノベルの漫画化を任せられるなど、漫画家として順調に活躍していくかに見えた。
しかし、その後発表したオリジナル作品は評価されず、連載が打ち切られると、次第に経済的にも厳しい状況に陥っていった。
次の作品はどうしてもヒットさせなければならない。強い気持ちで描き始めたのが『BLOOD ALONE(ブラッド・アローン)』だった。同作は、吸血鬼の少女と小説家の青年を主人公に、少女を吸血鬼にした元凶の吸血鬼の行方を追うという異色のファンタジー。もともと高野さんが趣味的に同人誌で発表していたイラストや物語の断片から物語を再構築し、2004年から漫画雑誌での連載がスタートした。