日々、子どもに関わるソーシャルワークを行っているNPO法人フローレンスの駒崎です。
本当に悲しいニュースが飛び込んできました。
死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」両親虐待容疑
殺された5歳の結愛(ゆあ)ちゃんのメモにはこうありました。
ママ
もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっと あしたはできるようにするから
もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします
ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして
きのうぜんぜんできなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす
これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったい
やらないからね ぜったいやくそくします
もう あしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ
僕は、このメモを見て、大変恥ずかしながら泣いてしまいました。
自分にも5歳の息子がいて、毎日僕が帰ると「パパーっ!」と言って抱きついてきてくれて、そんな年頃の可愛い子どもが、覚えたてのひらがなで一生懸命「ゆるして」と書いたと思うと、涙が止まりませんでした。
しかし、僕は児童福祉の実践者の一人なので、悲しむだけで終わらせず、どうしたら良かったのか?を考えました。
後々の検証を読まないと確たることは言えませんが、しかしそれを待っていると数ヶ月、長い場合は1年以上かかるので、今ある情報に基づいて考えを書きます。
【事件の流れ】
事件の流れを最もよく書いているのは、以下のニュースです。
5歳女児死亡 両親「虐待発覚恐れ病院行かず」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180606/k10011466821000.html
タイムラインを簡易的にまとめました。
2016年12月 「家の外に出されたり、怪我をしたりして」一度めの一時保護
2017年3月 「家の外に出されたり、怪我をしたりして」二度目の一時保護
本件で2回書類送検
17年8月 体にあざがあるのを医師が見つけ、児童相談所に連絡。「パパに蹴られた」と開示。
17年12月 雄大容疑者(父)が仕事の関係で東京 目黒区に引っ越し、翌月には優里容疑者(母)と結愛ちゃんも雄大容疑者のもとに引っ越す
18年1月4日 「児童福祉司指導」を解除
18年1月 香川県児童相談所が品川区児童相談所に資料を送り、引き継ぎ
18年1月末 目黒区「今年の1月末から要保護児童対策地域協議会 個別ケース検討会議を開催する準備を進めていた」
2018年2月 引き継ぎを受けた品川児童相談所の担当者がアパートを訪問。優里容疑者(母)に「関わってほしくない」などと言われた
2018年3月 結愛ちゃん虐待死
【親権停止してたら救えた可能性】
タイムラインでは、四ヶ月間で二度も親から引き離し、一時保護しています。
これは、相当深刻度が高く、命に関わるシチュエーションです。
こうした場合、自動的に親権停止し、里親委託や特別養子縁組に移行する仕組みになっていたら、彼女は亡くならずに済んでいたでしょう。
しかし、日本の親権停止件数はわずか17件。ドイツが1万2000件以上、イギリスが5万件以上なのに対し、ほとんど行われていないレベルです。
出典:2012年度資生堂児童福祉海外研修報告書
http://www.zaidan.shiseido.co.jp/activity/carriers/training/pdf/vol_38.pdf
日本では長年、子どもの権利よりも親権が優先されてきた歴史があり、いまだにそれが続いてしまっています。
例えば児童養護施設に子どもを預けたまま、何年も会いに来ないケース。たとえ里親や養親さんが見つかっても、親がノーと言ったら、子どもに里親・特別養子縁組委託はできません。
【児相職員の専門性がもっと高く、もっと人数がいたら救えた可能性】
現場の児相職員の方々は、昼夜を問わず働いてくださっていて、心から敬意を持っています。
しかし、今回のケースは、2回も一時保護し、父親は2回書類送検され、さらには医療サイドからの通告もあり、子どもも「パパに蹴られた」と言っているわけで、明らかに一時保護から家庭に戻してしまってはいけないケースだったのではないでしょうか。
後知恵となってしまいますが、アセスメントが甘すぎたと感じます。
児相職員の方々の多くは、他の部署からの異動によって来られた方々で、数年経つとまた異動されます。それによって専門性が磨きにくい、という制度的な限界もあるでしょう。
また、ケースワーカーが持つケースも多すぎで、1人で100件近いケースを持つ場合もあります。
ちなみに東京都は人口約1300万人で11の児童相談所が管轄しているので、いち児相あたり100万人のエリア感。子どもの人口は約12%ですから、12万人以上の子どもを数人(4万人あたり1人の基準)で担当しています。
こうなると、常にケースに追いまくられるため、十分なアセスメントを行えなくなるのも必然です。