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日立製作所は2018年6月8日、東京都内で投資家向けの事業戦略説明会「Hitachi IR Day 2018」を開催した。鉄道ビジネスユニットのCEO(最高経営責任者)を務めるアリステア・ドーマー執行役専務が登壇し、「鉄道はまさにデジタル変革の時代に突入している」と切り出した。続けて「IoT(インターネット・オブ・シングズ)向けの基盤サービスである『Lumada(ルマーダ)』を含む当社の強みを生かして、鉄道のお客様にフルラインのサービスを提供できるようにしたい」と強調した。
日立の鉄道ビジネスユニットの売上高の過半は鉄道車両製造である。他に信号システムやメンテナンスサービスにも注力する。
デジタル変革に関する取り組みの一例として説明したのが鉄道車両のIoT化だ。日立の新型車両では車体やモーターなどに多数のセンサーを取り付けて、走行しながらデータを蓄積し、活用できるようになっているという。
ドーマー専務は「1編成(列車)当たり1日10ギガバイト以上という膨大なデータが集まる。このデータの解析結果を基に車両設計を見直し、より効率的に運行できる車両を作る取り組みも始めている。2018年以降は、英国などで車両保守業務にデータを生かす取り組みをさらに進めて、車両の製造販売以外の事業を拡大させる」と説明した。
2019年3月期の鉄道ビジネスユニットの売上高(売上収益)は6300億円を見込んでおり、うち83パーセントは英国を中心とした海外でかせぐ計画だ。日本国内の売上高はほぼ横ばいで、17パーセントにとどまる見通しだ。前期に受注した東海旅客鉄道(JR東海)向け「次世代新幹線N700S試験車両」や阪急電鉄向け「通勤車両1000系・1300系」などが今後の売り上げに貢献するとした。
人口減少が進む日本では、従来の鉄道車両製造販売で成長を見込みにくい。鉄道ビジネスユニットで日本とアジア太平洋を担当する光冨真哉執行役常務は「国内では特にIoTを含む付加価値が成長の源泉になる。既にJR各社とIoT分野で協業を進めている。国内のIoT分野の売上高は(別ユニットである)システム&サービス事業に計上されるため、鉄道ビジネスユニットの売上高に表れないが、日立全体としてはかなり大きな取り組みになりつつある」と説明した。