13.実況見分調書の入手法

実況見分調書の入手といっても、実物を入手できるわけではありません。

謄写という、コピーを入手することになります。

警察で作成された実況見分調書は、管轄の検察庁へ送致されます。

したがって、実況見分調書の入手先は検察庁です。

まず、警察の事故担当者(事故係)に送致先の検察庁、送致日、送致番号を聞きます。

次に送致先の検察庁(記録係)へ出向く、または電話し、送致日と送致番号を伝えて実況見分調書の謄写(コピー)を依頼(申請)します(謄写の入手だけでなく閲覧も可能ですが、入手しておくことをお勧めします)。

ただし、依頼した当日は閲覧・謄写(コピー)はできませんので、できる日を聞いて、後日改めます。

東京や大阪などの大都市の検察庁では本人が申請すれば謄写が可能なようですが、それ以外の地方検察庁では弁護士に依頼しないと謄写ができないようなので、事前に検察庁に確認しておきましょう。

閲覧は1件に付き150円ですが、謄写の場合は地方によって若干の料金の差があるようです。

とはいえ、カラーコピー1枚に付き数十円~数百円程度ですので、たいしたことはありません。モノクロとカラーを選べるのであれば、若干値は上がりますがカラーの方が見やすいのでお勧めです。

また、謄写を請求しない場合、検察庁によってはデジカメなどで写真撮影を認めているところもあるようなので、管轄の検察庁に事前確認しておいた方がいいでしょう。

交通事故証明書、身分証明書、認印を求められることがありますので、やはり事前確認しておいてください。

請求できるのは、原則として被害者本人、その親族、被害者の代理人の弁護士です。

実況見分調書は刑事記録という分類になります

刑事記録とは

①実況見分調書(事故の状況が記載)
②参考人供述書(目撃者の供述)
③被疑者供述書(加害者の供述)

の3つの事を指します。

加害者の刑(業務上過失傷害罪などの刑罰)が確定していれば②、③も閲覧・謄写が可能です。

加害者が裁判中、または不起訴処分の場合は原則として①の実況見分調書の閲覧・謄写しかできません。

通常、事故が起こってから(実況見分が終わってから)2~3ヵ月後が、加害者の刑事法上の処分(つまり、刑罰の確定、不起訴等)が決定されている頃なので、その頃に実況見分調書の謄写の入手手続きをされるといいと思います。

それまでは、加害者や保険会社が何と言ってこようと、示談交渉には応じないことです。

怪我の治療に専念し、「容態がもう少し回復したら話し合いに応じます」

などと言って、時間稼ぎしておきます。

また、この段階で、相手に「実況見分調書を入手するから待っておいてください」、などとは口が裂けても言わないことです。

最初のうちは交通事故に全く疎く、扱いやすい奴だな、と油断させておくのです。これは示談交渉において有効なテクニックのひとつです(私の常套手段です)。

もうひとつの理由は、必ずしも実況見分調書があなたの味方になるとは限らないからです。

実況見分では下手を打たないよう対策はしたはずですが、実際に調書を確認するまでは、その内容はわからないのですから。

下手をすると逆にあなたに不利な記載があるかもしれませんから。もちろんその場合は実況見分調書を利用するのはやめましょう。

※)事実と全く違ったことが記載されているのであれば、その事件(事故)の担当検察官に話を聞いてもらうよう要求してみることです。

また、加害者の不起訴処分をくつがえしたい場合などは再捜査を求めるべきです。

それでもだめなら検察審査会に審査の申し立てをする、という手段もあります。

検察審査会については裁判所のホームページに詳しい記載がありますのでご一読ください。

http://www.courts.go.jp/kensin/seido/sinsakai.html

さて、

②参考人供述書(目撃者の供述)

③被疑者供述書(加害者の供述)

が入手できれば最高なのですが、加害者が不起訴処分になることはかなり多いです。

加害者が不起訴処分になると、
参考人供述書(目撃者の供述)
被疑者供述書(加害者の供述)
の閲覧も謄写もできません。

しかし、実況見分調書(現場見取り図)だけでも入手できれば、その後の作戦を立てる上で有力な材料となります。

入手後は、その実況見分調書の謄写を120%使い倒して反撃を開始します。詳しくは『納得のいく過失割合獲得法』の章を参照ください。

また、事故の態様、被害者の対応等を考慮してか、保険会社お抱えの調査会社が警察の実況見分とは別に独自の調査(独自の実況見分)をすることがあります。

もちろん、警察ではありませんし、任意ですから拒否することもできるのですが、私としてはとりあえず応じておいていいのではないかと思います。

保険会社に対して、心象が悪くなるからです。

もちろん、示談交渉を開始すれば心象もへったくれもないのですが、交渉開始前は油断してもらっておいた方が何かとやりやすいものだからです。

そして、この独自の実況見分にはたいした効力はないのです。仮に警察の実況見分と異なった記載があったとしたら、まず間違いなく警察の実況見分調書が優先されます。

これは私が実際の調査会社の人間から証言をとっていますので間違いないです。

ですから、調査会社の実況見分はあまり気にすることはないのです。

もちろん、あなたは警察の実況見分で説明したとおり、全く同じように説明しなければなりませんので念のため。あっちとこっちで言うことが違っては信憑性がありません。いつでもどこでも主張にブレがあってはいけないのです。

保険会社は結構早い段階で過失割合の話を持ってきますが、前述しましたように、この実況見分調書を確認するまでは絶対に示談しないことです。

保険会社の提示してきた過失割合には、「納得できません。」「何で?」「検討してみます。」「やっぱり納得できません。私に過失はないと思いますが。」「とりあえず治療に専念させてください。」「容態がもう少し落ち着いてからにしてください。」

などと、抽象的なことを言って、時間稼ぎしてください。この実況見分調書を吟味した上で、納得のいく過失割合を獲得する方法を、次章で解説いたしますので。

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