なぜ話し上手の人は「ふさわしい言葉」を選べるのか

「伝えたいことがうまくまとまらない」「ついつい長話をしてしまう」「自分の印象をよく見せたい」その悩み、すべて「20秒」で話せば解決します! 話し上手がしている話し方の秘密を、書籍『20秒で自分の魅力を伝える方法』より、ミス・ユニバース・ジャパンビューティーキャンプ講師の佐藤まみさんが解説します。

話し上手は「オノマトペ」を駆使している

話が上手な人は「オノマトペ」を駆使しています。オノマトペとは、「擬声語」を意味するフランス語で、擬音語と擬態語の総称です。擬音語は、モノが発する音や声を真似た描写したもので、「ドカーン」「パリーン」「ニャー」などが該当します。

擬態語は、状態や心情など音のしないものを表す言葉で、「デレデレ」「ドキドキ」「ニヤニヤ」「ホッカホカ」などがそうです。

オノマトペは五感に訴える言葉なので、伝える内容に臨場感をプラスすることができます。その証拠に、子ども向けの昔話や絵本には、オノマトペが多用されています。たとえば、桃太郎の昔話にはこんな文章があります。「おばあさんが川で洗濯をしていると、『ドンブラコ、ドンブラコ』と、大きな桃が流れてきました」「おじいさんとおばあさんが桃を食べようと『パカーン』と桃を切ってみると、元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました」。このようにオノマトペの入った文章は、イキイキと臨場感のある表現になります。仮に「ドンブラコ、ドンブラコ」「パカーン」といった表現を抜いてしまうと、一気に味気のない文章になってしまいますよね。

自分が話すときにも、オノマトペを積極的に活用することをおすすめします。たとえば、プレゼンで「売上がグングンと上がります」「社員の表情がキラキラとし始めます」とオノマトペを取り入れると、聞き手の五感に訴えることができます。

状況にふさわしい言葉を選ぶ

人前で話すとき、用意した原稿やメモを見ながら話すことがあります。そのときよくある失敗が、原稿通りに話して、状況にふさわしい言葉を選べないことです。新人さんがブライダル司会をすると、練習通りに進行することに夢中で、フレキシブルな対応ができないことがあります。たとえば、ケーキカットのあとで、新郎新婦が切り分けたケーキを互いに食べさせあう「ファーストバイト」という演出があります。セオリー通りだと、ファーストバイトのあとに司会者は「すてきな2人をカメラに収めてください」とコメントします。

このとき、新郎がわざとケーキに顔を突っ込んで、顔面が生クリームだらけになったとしたら、どうでしょう?

慣れていない司会者だと原稿通りにコメントすることに精いっぱいです。しかし、経験を積んだ司会者だと「生クリームが新郎の顔にべったりくっついています。さらに男前になられた新郎を写真に撮ってください」といったコメントをすることができます。このように状況に合わせて臨機応変に伝えられれば、場は盛り上がります。

状況に合わせた言葉を選ぶことの大切さは、プレゼンやスピーチなどの場でも同様です。練習通りに原稿を読み上げるような話し方だと、どうしても硬い印象になってしまい、キャラクターも垣間見えません。原稿通りに話すことも大切ですが、状況に合わせて言葉を足したり引いたりすることで、場に臨場感が生まれます

たとえば、新商品のプレゼンの場で、商品サンプルを見せたとき、クライアントから「おぉ、デザインがいいね」という声があがったとします。このとき、それをスルーして説明を続けるよりも、「ありがとうございます。そのデザインは消費者アンケートでも人気が高かったものです。デザインについてもあとでくわしく説明させていただきます」とリアクションをしたほうが、場の一体感が高まりますし、クライアントには好印象を与えられます。

「せっかく練りに練った原稿だし、何度も練習したから、原稿通りに言いたい……」という気持ちはわかります。しかし、その場の状況に適していなければ、それは独りよがりで、場違いの言葉になってしまいます。その場にふさわしい言葉を選ぶには、状況をよく観察しておく必要があります。下を向いて原稿を読み上げているだけでは、聞き手の反応や状況の変化に対応することができません。顔を上げて、聞き手に視線を送ることが重要なのです

話が上手な人は、アドリブが利きます。突発的な事態にもユーモアをまじえて当意即妙に話すことができたら、かっこいいですよね。アドリブが利く人もよく、まわりを観察しているものです。

ある披露宴での出来事です。新郎の上司がスピーチをすることになっており、その上司は事前に原稿を用意していました。そして、マイクの前に立つと、「原稿をつくってきたけど、もうこんなのはいらない」と言って、原稿をポケットにしまいました。というのも、披露宴の前に行われた教会式での誓いのキスのとき、新郎が突然、巨大なくちびるのおもちゃを取り出して、会場が爆笑に包まれたからです。上司は、そんな会場のくだけたムードを察知して、「真面目な話をしようと思って原稿を用意してきたけれど、新郎の〇〇くんには、そんな真面目な話は似合わないな」と言って、新郎のユニークなキャラクターをいじるようなスピーチにその場で変更したのです。披露宴の会場はさらにアットホームな雰囲気になったのは言うまでもありません。そのまま上司が真面目な原稿を読み上げていたら、きっと楽しい雰囲気に水をさす結果になっていたに違いありません。まさに、臨機応変なアドリブが功を奏したといえます。

私自身、それほどアドリブは得意なほうではありませんでしたが、まわりの反応をよく観察することによって、その場に合わせたアドリブが多少は言えるようになりました。

たとえば、セミナー講師として自己紹介するときに、「私は日本一暑い街、岐阜県の多治見市からやってきました」と自己紹介すると、会場が少しざわついたり、ニヤッとする人があらわれたりします。そういうときは、そのままスルーせずに、「本当に暑いんですよ。最近は暑さを逆手にとって、『日本一暑い街』として町おこしをしているんですよ」など、小ネタを披露します。聞き手を観察し、微妙な変化を逃さずにリアクションすることによって、ちょっとしたアドリブになります。これなら、それほどむずかしくないですよね。ぜひ試してみてください。

相手のメッセージを見逃してはいけない

少人数の商談や会議、打ち合わせなどでも相手を観察しながら話すことが大切です。ブライダル司会の仕事で、新郎新婦と打ち合わせをするとき、たいていは新婦の主導で話が進んでいきます。しかし、ときどき新郎が口をもごもごしたり、すぼめたりするなど不服そうな表情をすることがあります。そうしたサインを見逃さずに、私は「何か心配されていることはありますか?」と質問します。すると、「この演出は恥ずかしいからいらない」「もっと写真撮影の時間をとってほしい」といった要望が出てくることがあります。

あなたにも経験があると思いますが、「本当は言いたいけれど、わざわざ口を挟むほどではないから、黙っていよう……」というケースは少なくありません。こうした小さな不満は、必ずメッセージとして顔の表情や態度にあらわれます。それを見逃してはいけません。自分は言いたいことを伝えたつもりでも、実は、相手はストレスを抱えていた、という事態になりかねません。

目と目がよく合う、笑顔でうなずきながら聞いてくれているのであれば、あなたの話に興味をもってくれている証拠です。しかし、反対に相手が目を合わせない、目線が下がりっぱなし、あるいは口数が少ない場合は、他のことを考えていたり、話に興味がなかったりする可能性があります。その場合は、別の話をしたり、相手に質問してニーズを探ったりする必要があります。

相手を観察しながら話すことにより、その場にふさわしい対応をとることができるのです。くれぐれも手元の資料に目を落とした状態で話し続けないように。ときどき目線を上げて、目の前の相手を観察しましょう。

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20秒で自分の魅力を伝える方法

佐藤まみ

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