国際的な“不信感”を放置する日本サッカー協会 W杯で好結果出ても抜本的改革は不可欠
解任劇を巡り、ハリルホジッチ氏の主張が“事実”として世界で認識されている現状
炎上したら黙して鎮火を待つ――それがいかに逆効果なのかは、アメリカンフットボールという隣の芝生を見れば、よく分かる。
もちろん、バヒド・ハリルホジッチ前日本代表監督の契約解除問題と、日大の反則タックル問題を同列に語ることはできない。だがタックルをした日大の選手と同様に、ハリルホジッチ氏の主張は国際的にもほぼ事実として報じられ、拡散している。ワールドカップ(W杯)開幕を前に、各国メディアは日本について「監督とベテランの主力選手が反目し、協会は選手の方を支持した」などと紹介しているのだ。
日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は、ハリルホジッチ氏の会見を「それで気が済むなら」と流したが、即座に反論をしなかったために、それを認めたというのが国際的な共通理解となった。当然そういう報道を日々目にする国内のファンも同じような捉え方をするから、現状でJFAは世界的な不信感を放置していることになる。
さすがに今回の代表監督の契約解除については、JFA側に止むに止まれぬ事情があったことは想像に難くない。ところが田嶋会長は決定的な要因を「コミュニケーション不足などの総合的な判断」と濁した。おそらく決裂を避けるための日本的な気遣いと推測するが、ハリル氏側としてはサッカーの本質的な部分で非がないのに、自分では良好なつもりだったコミュニケーションを理由にされ「不当だ」と感じたに違いない。実際にハリル氏自身も「(昨年12月の)韓国戦で大敗したからと言われれば納得した」と語っているわけで、JFAが真意をストレートに告げていれば、こんな事態にはならなかったはずだ。
成功とは呼べない4年間の代表強化と深刻な育成の停滞
今さらながら、もはや日本サッカーはJFAの一部幹部のものではなく、多くの登録者やファンによって支えられている。それを自覚するなら、最大の関心事である日本代表監督の契約解除理由は包み隠さず報せる義務がある。
また一方でJFAには、大事な代表選手たちを守る責務もある。このままでは本田圭佑や香川真司が、ハリル解任の仕掛け人だと思われているのだ。それが真実とかけ離れているなら、せめてW杯の結果が出る前に明確に否定しておく必要がある。
いずれにしても今回の代表監督交代劇では、日常的にあまりサッカーに関心を示さない層のハリルホジッチ氏への同情票も巻き込み、JFAは致命的なイメージダウンを招いた。そして不信感の根幹には、肝心な情報が狭い世界に止まり、人事も含めて透明性を欠く体質がある。いくら即席とはいえ、これで「オールジャパン」と呼ぶには無理があるし、4年ごとの総括も退任した責任者が個別のインタビューで答える前に、しっかりと開示していく姿勢や仕組みが不可欠だ。
もしロシアで好結果が出たとしても、この4年間の代表強化を成功とは呼べない。また代表メンバーを見ても、育成の停滞は深刻だ。今度こそ大会後には、悪戯に代表新監督の発表を急がず、こうした危機的状況を踏まえた上での猛省、さらには抜本的な体制改革へと踏み切るべきである。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)