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研究紹介

ヒトおよびウシレトロウイルスによる白血病発症機構の解明とその制御方法の確立

背景
牛白血病ウイルス(BLV)感染は全世界で急速に拡大していますが、有効なワクチンもなく、肉牛や乳牛などからの食料供給・安全性を脅かしています。
牛白血病の清浄化対策として感染牛の“摘発・淘汰”が有効ですが、経済的損失が大きすぎます。そこで、ワクチンによる感染予防や発症抑制等が強く望まれており、様々な観点から牛白血病ワクチンの作製が試みられています。

概要
私たちは、牛白血病の発症とウイルス量上昇に主要組織適合抗原(MHC)の遺伝子型が関与する事を発見しました。
そこで、スーパーコンピューターを用いたin silico技術を駆使して、プロウイルス量の多い感受性牛に最適化したエピトープを設計しました。
そのエピトープ配列のペプチドを、細胞性免疫および液性免疫を強く誘導する生分解性ナノ粒子である炭酸アパタイトに固定化して、新しい牛白血病ワクチンを作製しました。
このワクチンをBLV感染感受性牛に投与したところ、BLV感染牛のプロウイルス量を抑制させる事に成功しました。
この知見を基に現在、より免疫誘導効果の期待できる不活化ウイルスワクチンと、ウイルス様粒子ワクチンの開発をおこなっています。


1.白血病発症感受性個体を標的としたワクチン開発

図1 白血病発症感受性個体を標的としたワクチン開発 私たちは、牛白血病の発症とウイルス量上昇に主要組織適合抗原(MHC)の遺伝子型が関与する事を発見しました。

この遺伝子には、BLVの体内ウイルス量を上昇させ、牛白血病発症を促進する感受性アリルと、逆の効果を示す抵抗性アリルが存在します。

MHCは病原体の抗原エピトープを免疫細胞に提示する分子ですが、牛白血病発症感受性MHCをもつ牛は、エピトープとの親和性が低いため、免疫が効果的に誘導されていないことが分かりました。

そこで、この感受性MHCとの親和性を最適化したエピトープで免疫することで、より強い免疫を誘導できるワクチンの開発を行っています。

図1 白血病発症感受性個体を標的としたワクチン開発

2.エピトープの同定と改変
BLV遺伝子から計118種類の抗原ペプチドを設計し、感受性MHCと結合できるエピトープを同定しました。さらに、スーパーコンピューターを用いたin silico技術を駆使して、感受性MHCに最適化したエピトープp12-4R1とgp51pepR1を設計しました。これらをマウスに接種し、細胞性免疫誘導能があることを確認しました。
図2 エピトープの同定と改変


3.感受性牛を用いたペプチドワクチン投与試験

図3 感受性牛を用いたペプチドワクチン投与試験 エピトープ配列を含むペプチドを、細胞性免疫および液性免疫を強く誘導する生分解性ナノ粒子である炭酸アパタイトに固定化して、新しい牛白血病ワクチンを作製しました。

このワクチンをBLV感染感受性牛に投与し、BLV感染牛のプロウイルス量を抑制させる事に成功しました。


4.BLV不活化ウイルスワクチン

図4 BLV不活化ウイルスワクチン 不活化ワクチンは、ウイルスそのものを薬剤等で感染性を失わせたものを抗原として使用します。

生のウイルスに近いものをウシに接種することで、高いワクチン効果が期待できます。

現在、BLVの遺伝子に様々な改変を加えることで、野生型にはないより有用なオリジナルのワクチン株を作製しています。


5.BLVウイルス様粒子(VLP) ワクチン

図5 BLVウイルス様粒子(VLP) ワクチン ウイルスの粒子構造は、特定の蛋白質によって形成されます。
これらをVLPと呼び、ワクチン抗原として実用化されています。
BLVはGag蛋白質発現によりVLPを作ることができ、量産可能で安全なワクチン抗原として期待できます。
また粒子径が大きく、免疫担当細胞に認識され易いため抗原性が高いという利点があります。
私たちはさらに、BLV遺伝子に改変型エピトープ配列等を導入したらり、ウイルス粒子中にGag以外の抗原を取り込むことで、これまでにない新しいBLV-VLPの作製に取り組んでいます。

キット解説 大学院生リサーチアソシエイト(JRA)院生募集 HIV-1によるエイズ発症機構の解明および創薬研究 ヒトおよびウシレトロウイルスによる白血病発症機構の解明とその制御方法の確立 インフルエンザウイルスの複製機構の解明と創薬研究 動物MHC研究会のページ

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