固定価格買取制度(FIT)が生んだ太陽光発電バブルは、バイオマス発電、小型風力、そして温泉発電へと飛び火している。温泉地が不安を募らせるなか、日本一の泉源数と湧出量を誇る別府市が動いた。同市が6月議会に提案する条例改正案は、FITによる開発ラッシュに一石を投じるものだ。
「今回の条例改正は、日本を代表する温泉資源がある別府市からのメッセージ。一言に温泉といっても、泉質や文化的な背景、観光業への影響は様々。これを契機に、価値の高い温泉資源をいかに保護し、後世に引き継ぐのかを考えてほしい」。大分県別府市の猪又真介副市長は語る。
温泉の定義は、源泉温度が25度以上、または19の特定成分のうち1つ以上が規定濃度を超えていること。火山国である日本は、深く掘り進めれば、どこでも温泉が出るといっても過言ではない。
ただ、温泉の質は場所によって差が大きい。そこかしこで蒸気が立ち上り、源泉の温度が高く、特定成分が多数含まれる別府は、いわば五つ星だ。別府の主産業が観光であるのはもちろん、江戸時代から続く調理方法「地獄蒸し」など市民生活との関わりも深い。
「温泉は日本の文化。MANGAと同じように、海外ではONSENと言われている。温泉発電のすべてを反対しているわけではないが、生活に密着し、観光資源として活用されている温泉を、わざわざ発電に使う必要はない。その地域にあった活用方法を考えるべき」と猪又副市長は続ける。
猪又副市長の発言の背景には、別府市のジレンマがある。温泉発電のために、市内で新たに温泉を掘削する事業者がいても、市は止めることができないのだ。
温泉発電はFITの区分でいうと、15000kW未満の小型の地熱発電に相当する。いわゆる地熱発電は、地下深くに存在する熱水溜まり(貯留層)まで井戸を掘り、150度以上の高温高圧の熱水と蒸気を取り出し、これを使って蒸気タービンを回して発電する。一方、温泉発電は、地表近くの源泉から湧出する80度以上の温水や蒸気を使うバイナリー発電を指す。
温泉発電はFITにより、40円/kWh(税別)で15年間の買取が保証される。太陽光発電の買取価格が低下する中、温泉発電の条件は再エネ発電事業者にとって魅力的に映る。「県外の事業者が大分県や熊本県にやってきて掘削しているが、止めるためのルールがない」(関係者)。
温泉の新規掘削の許認可は都道府県が行うため、地元自治体は指をくわえて見ているしかない。環境省が管轄する「温泉法」には、温泉開発に制限のある「特別保護地域」などの定めがある。だが、制定から時間が経過しているうえ、掘削を止める強制力という面でも心もとない。
そこで別府市は、“抑止力”として条例を活用する方法を考えた。止めることができないなら、「面倒臭さ」で事業者に別府での開発を回避してもらおうという作戦だ。
「暗黙の了解」や「手続きを複雑にして諦めさせる」ような行政は正しくありません。
規制するなら基準を明確にして規制すべきです。
手続を煩雑にして人々の行動を誘導したり強制するのは
行政法の精神にも法治主義の精神にも反するものです(明確性の原則)。
さらにそれらを行政が公言するとは 国民をなめるにも程がある。
このような行政に対し、無批判な記事を残念に思います。(2018/06/07 17:23)