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プロジェクトが完了したら、経験から得た教訓をチーム内で共有する「振り返り」を実施する。メンバーの成長を促すためには欠かせない取り組みだ。ただ、振り返り方に問題があるリーダーがいる。メンバーの問題点の指摘と改善策の指導ばかりする「ダメ出し型」の切れ者リーダーは、部下を潰してしまう。
リーダーの立場からはどうしてもメンバーの問題点が目に付く。振り返りで問題点を指摘して、反省を促したり、どのように改善すべきかを具体的に指導したりしたくなる。いわゆる「ダメ出し」だ。
ダメ出し型のリーダーの下では、メンバーはリーダーの意向に沿うような意見や行動を取ろうとする。短期的にはリーダーにとって統制しやすいチームになるが、メンバーは自分で考えようとしなくなる。そして、言われた仕事しかしない、挑戦せず無難に処理しようとするという行動様式になる。複雑な問題を解決する人材像から離れていくのだ。これは部下を潰しているも同然である。
振り返りそのものが悪いわけではない。メンバーの能力向上には、節目ごと経験を振り返り、知見を導き出し、得られた知見を試し、新たな経験をするというサイクルが欠かせない。この一連のサイクルを「学習サイクル」と呼ぶ。リーダーには、学習サイクルを適切に回すことが求められる。
冒頭のような振り返りは学習サイクルを回すには不適切。ダメ出しは百害あって一利なしだ。次のような兆候がある振り返りは、不適切な状態になっている。
- リーダーがメンバーを説教する
- 評論家的な発言が横行している
- 思ったことや感じたことを率直に口に出せない雰囲気がある
- 問題点のみがクローズアップされ、改善策が一方的に提示される
一方、適切な振り返りは、以下に挙げるような状態になっている。
- 上下関係を越えて話し合い、皆が考える場になっている
- 全員が当事者として参加し、最善を尽くしたという前提に立つ
- 各メンバーが体験したことや感じたことを率直に述べて、皆で共有しようとしている
- 良かった点を見つけ出し、スポットライトを当てている
- 問題点はその背景を深く考えて、改善策を共に考える
適切な振り返りとなるよう、リーダーが場を差配しよう。