photo by iStock
社会保障・雇用・労働 人口・少子高齢化 格差・貧困 ライフ

シングルマザーが考察する「ワンオペ」と「日本の夫婦」の深い闇

原因は「ツーオペ」の失敗にあった

ワンオペ育児ってどうですか?

「松本さん、ワンオペ育児ってどうですか?」

と、編集者に聞かれたので考えてみた。「離婚されて、働きながらお子さん二人育てるのは大変でしょう。ほんと、細うで繁盛記ですよ、偉いですよ!」と、褒めてくださったのだが、時事ネタを絡めてくる質問の鋭さはさすが現代ビジネスの編集者だ。

と、そのとき隣にいらした『出会い系のシングルマザーたち』『されど愛しきお妻様』の著書である鈴木大介さんが、私の返事より先に「僕はそういう、『細うで』とか『女手一つで』っていう表現が大っ嫌いなんですよ!」と素早く抗議されるではないか。

確かにシングルマザーというのは社会的な弱者だ。なってみると、その立場の弱さは目眩がするほど(例えば養育費算定表の金額とか)。

「細うで」「女手一つ」と労って褒めてくださる人に悪意はないが、それが社会的に「美談」という風潮になると、「弱い立場でも我慢して頑張っててえらい」から「弱い立場に文句を言わず頑張らないといけない」のように、なぜか価値観が歪められて押し付けられることが多い(その結果、「養育費、毎月貰うたびにお礼を言ってますか?」とか、調停員に言われる羽目になる。もちろん元夫から養育のお礼を言われたことはないし、調停員がそれを元夫に求めることもない)。そしてそこに素早く反応できる大介さんはやっぱり超カッコイイ!

 

などと考えつつ、「そうですね、確かにシングルマザーは大変なんですけど。でも、それでも離婚してからの方が心も体も楽な気がするんですよね」と言うと、

「確かに松本さん、今の方が楽しそうですもんね。お仕事も順調そうだし……でもなんで? 離婚するほど色々あったんだから心はわかりますけど、ワンオペより、もう一人大人がいた方が体は楽ですよね?」と、驚かれてしまった。

私だってそう思う。本来はそうあるべきだ。でも実際、そうじゃない。

自由で気ままな、私(シングル家庭)のワンオペ生活

ワンオペとは、コンビニや外食チェーン店などで時間帯によって一人しかスタッフをおかず、全てのオペレーションをその一人に任せることを指す。牛丼チェーンの「すき家」の深夜時間帯がその過酷なワンオペ業務であると問題になり注目を集めた。

そこから派生したのが「ワンオペ育児」、シングル家庭やパートナーの単身赴任など、なんらかの理由により育児(と家事)にまつわるオペレーションを一人で担当する状態を意味する言葉だ。

我が家には小学校3年生と年長の娘二人がいる。大人は母親の私だけ。シングル家庭なうえ、実家も近くにはないので確かにワンオペ育児に違いない。

「大変か?」と聞かれると、まあ、楽ではない。

毎朝起きて、洗濯機を回しながら(超簡単だけど)朝ごはんを用意し、二人を起こして、口頭で持ち物チェックをして、娘たちがご飯を食べてる間に、自分の身支度を済ませ(ている間に小学生は登校していき)、洗濯物を干し、食器を洗い、保育園に送って行って、仕事に取りかかる。

photo by iStock

夜は保育園のお迎えをすませたら、子供たちがお風呂に入っている間に夕飯の支度をして、二人がのんびりご飯を食べている間に、調理器具を洗い、自分もご飯を食べ、宿題の丸付けをする。食後は食器を洗いながら、宿題の直しを見たり、翌朝の準備ができているか口頭で確認したり。最後、寝る前に歯磨きの仕上げをして「おやすみなさい」だ。

毎日4時間くらいは家事と育児に費やしている計算になるだろうか。

楽ではないが、もう二人ともだいぶ手がかからなくなってきたので、以前ほどの大変さはない。ゴミ捨ては上の娘が担当してくれるし、食器洗いは下の子が得意で手伝ってくれる。二人とも洗濯物も干すのも畳むのも上手だし、掃除機だってクイックルワイパーだってかけられる。

ちょっと教えたらあっという間にできるようになり今では立派な戦力だ。ダメな部分を指摘しても逆ギレすることなくちゃんと上達する姿は親バカながら、偉いな、と思う。

もちろん、ワンオペならではの難しさもある。家に大人が一人しかいないのでリスク管理が難しい。

子供が病気になっても私が病気になっても仕事が滞る。私はフリーランスなので、仕事を受ける際には、万が一にでも会議や打ち合わせなどに穴を開けないようチームを組むことも多い。

また、自身の体調不良も困るので、心身のコンディション維持にはかなり気を使っている。ストレス要因はできるだけ排除し、よく眠るし、決して無理しない。

新メディア「現代新書」OPEN!