起業して売却した経験があるため、起業の相談を受けることも多いのですが、その中でオススメの本を聞かれることが多いと思ったのでまとめておきます。
僕自身は起業する際には、短期的な急成長を求められるスタートアップだけでなく着実に長期間かけてビジネスを成長させるスモールビジネスという選択肢もありだと考えているので、スタートアップ関連の本だけでなくスモールビジネス関連の本もいくつかいれました。
ここに書き忘れてるけどオススメの本があるかもしれないので、皆さんのオススメも教えてもらえればうれしいです。
ドラゴン桜の作者が書く起業本:マネーの拳
マネーの拳はドラゴン桜の著者である三田紀房氏の起業漫画です。 元プロボクサーの主人公が今度はビジネスの世界でチャンピオンになろうと奮闘する漫画で、アパレル分野で起業し、苦難のスタートから上場まで果たすストーリーになっています。
三田紀房氏の漫画は、受験漫画であるドラゴン桜も就活漫画である銀のアンカーも投資漫画であるインベスターZも、直感には反するが正しいことが詰め込まれており、マネーの拳も商売、ビジネスの本質が名言として詰まっていると感じます。
勉強して知識を蓄えてから商売するというのは、 才能のないものの発する言葉だよ。
楽して儲けるのが本当の商売だ。苦労して儲けるなんて誰でもできる。人の2倍働けばいいだけのこと。ただがむしゃらにやればそこそこ稼げる。
「ビジネスは理詰めの世界。切羽詰まって破れかぶれの行動に出る人間は商売には向かない。」
無能な経営者は一見信用できそうな人間を欲しがる。社員も経営者の信用を得ようとする。結果、経営者の方しか向かなくなる。社長も、忠実で従順な社員達に満足する。これが会社をダメにする
「あんた・・・感情で商売してるんだよ。常に自分の願望を最優先してる。」「商売の成功には道理がある。感情を最優先すれば理屈が曲がる。理屈が曲がれば道から外れる。」「そんな商売は必ず失敗する。」
商売は自分がいかに楽な競争をするか・・・さらに・・・いかに競争をしないで済むかを考えるゲームだ
これらの言葉の多くはスタートアップの常識としても当てはまる言葉が多く、起業やスタートアップに関する知識がある人も楽しめると思っています。
起業する人のイメージをいい意味で覆す:ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)
- 作者: アダムグラント,シェリルサンドバーグ,Adam Grant,Sheryl Sandberg,楠木建
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2016/06/24
- メディア: 単行本
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この本も個人的に好きな本の一つで多くの人に勧めています。書評も下記で書いています。
この本も上記で紹介した三田紀房氏の本と同様に、直感的・常識的には一見正しいが実は違うことを紹介しており、天の邪鬼な自分はそこが気に入っているポイントかもしれません。例えば起業家といえばリスクが大好きでリスク許容度の高い人が起業家になると信じられていますが、この本では実は起業家はリスクが嫌いだということをデータから明らかにしようとしています。
アメリカの偉大な起業家もいきなりリスクを取ったわけではなく、サイドプロジェクト的に本業とは別に進めていたプロダクトが思いの外あたりそちらに専念するようになったという話が実例を元に書かれています。
また起業する上では優れたアイディア1つが大事だと思わているけど、実は成功の秘訣は大量のアイディアをカタチにすることだと書かれています。シェイクスピアやベートベンなど後世に残る天才たちも多くの名作の裏に多くの駄作を生み出していたそうです。起業で成功している人も実は多くのプロジェクトを検討して、実際にリリースしているケースは少なくありません。nanapiのけんすうさんも大量に出しているものの当たりは少ないということを語っています。
けんすう 一方で、むやみやたらに行動していれば、失敗例はめちゃくちゃ多くなるけど、失敗ってみんな覚えていないのでリスクはない。
尾原 特にネットは失敗のコストが低いから、何度でも失敗できる。
けんすう ぼくも全然当てていないです。そもそも打率が超低いですから。でも失敗したサービスってほとんど誰も知らないので、あまり困らない。
尾原 それはたくさんのサービスをつくりすぎだからだけど(笑)。上手な失敗のしかたみたいなことで心がけていることはありますか?
けんすう ウソをつかないとか、誠実にやることの価値がすごく上がっているので、そこを押さえておくと、だいたいの失敗は許されるというのはあると思うんですね。常に相手のため、誰かのために誠実にがんばる、というのは意識しています。
直感に反するスタートアップ的考え方の集大成:逆説のスタートアップ思考
プロダクトづくりにおいてはこの逆説のスタートアップ思考が非常に参考になります。書いてて思ったのですが個人的に、「常識的に正しいと思われているけど真実は別にある」的な本や部分が好きだなと改めて感じました。逆説志向は新しいサービスを生み出す上で役立っているのかもしれないなと思います。
この本に関しても下記で書評を書いています。
詳しくは上記のブログと実際に購入して読んでもらいたいのですが、最近自分が腹落ちした一節の一つが、「スケールしないことを長く続ける」ということです。スケールを焦ってマーケティングでのバズを狙ったり、製品ができた直後にセールスでガンガン売ろうとするのは悪手である可能性が高いということです。僕自身が最近見たプロダクトでも、ユーザーにまだ十分愛されたものではないのに、リリースは派手にやり最初はユーザーがつくもののすぐにユーザーが飽きて離脱してしまったプロダクトは少なくありません。
また作り込みが甘いにも関わらず、製品が完成した段階でガンガン営業をかけてしまい結果としてクレームの嵐と高止まりしたままの離脱率でスケールしないB向け製品もいくつか見ています。
直感に反するけど成功のために必要なことを続けるのは難しいものの、成功するためにはこうした長期スパンでの取り組みが不可欠だと改めて感じています。
成長し続けるだけが起業のカタチではない:小さなチーム、大きな仕事
小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/01/11
- メディア: 単行本
- 購入: 21人 クリック: 325回
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最近起業したいと相談を受ける人の多くが、起業というのはベンチャーキャピタルから資金調達を行い、リリースを派手にやり、世間から注目を受けるプロダクトを作ることだと考えている人が少なくないように思います。
この本も書評を書いているので詳しくは下記を読んでもらえればと思います。
この本にもある通り、スタートアップというのは起業の一つの形態にすぎません。そもそも多くの顧客は自分たちが使う製品がイケてるスタートアップが提供しているものなのか、大企業が提供しているものなのかそこまでこだわりません。ユーザーに価値を提供することができればどのような企業形態でもよく、自分が選択した領域とサービスがスタートアップが相性がいいのかスモールビジネスが相性がいいのかよく考える必要があります。個人的にはある程度どこに資金を投下すればスケールするのか見えるまでは自己資金で少数のユーザーに愛されるプロダクトを作るべきで、その後資金調達をするかどうかは自分が開発したプロダクトが属する領域の成長性、成長スピード、参入障壁などの観点からスピードが重要な領域であれば資金調達をして一気に勝負を決め、そうでないなら自己資金で小さく勝つのがいいのかなと考えています。
個人事業に近い中小企業も起業である: 僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語
僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語 (自分のビジネスを始めたい人に贈る二〇のエピソード)
- 作者: 和田一郎
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2015/09/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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有名ブロガーICHIROYAさんの2冊目の書籍で一冊目は下記です。
こちらも上記の小さなチーム、大きな仕事と同じくスモールビジネスに属する方の本ですが、事業の立ち上げについて生々しく書かれていて参考になります。このようにスモールビジネスを展開されている方でも最初は店舗を借りて大きく勝負しようかと考えていたことなどリアルな起業の実態も垣間見れるのがよいと思っています。
スタートアップ的ビジネスの始め方が網羅されている:起業の科学 スタートアップサイエンス
起業の科学は最近出版された本ですが、近年のスタートアップのトレンドおよび、そこから導き出される事業の作り方について体系的、網羅的にまとまっている点がよいと思います。また著者がベンチャーキャピタル出身のため、多くのスタートアップや起業にあこがれているだけでなかなか行動に移せない人と出会ってるのか、辛辣な言葉もところどころにあり面白かったです。
手順やり方や考え方のインストールはこの本を読むといいと思うものの、これを理解できたり共感できるのは自分自身がゼロからプロダクトを作ってそこそこのスケールまで持っていけたからかもしれないというのは感じています。人間、経験したことでなけれ本当に心から腹落ちするのは難しいからです。なのでこれからはじめての起業をする人はざっと全体を読んで、実際に手を動かす中で時々参照してみるという使い方がよいかもしれません。
資金調達まわりの知識が全てわかるようになる:起業のファイナンス
スタートアップで資金調達をする人は必ず読んだほうがいい名著です。一方で内容は結構ファイナンスの難しい部分を扱うため、最初から実感値を持って理解するのは難しいかもしれません。僕らも起業するときには確かに読んだはずなのにセオリーから外れた株主構成にしたりと、読んではいて知ってはいるものの、実務として活かせないという状態だったなと思います。この本も上記の起業の科学同様にざっと一通り読んで、手元においておき、実際に資金調達が必要になりそうなときに読んでみるのがいいかもしれません。
最後に
なんだかもっとオススメの本があったような気がするものの、自宅の本棚とKindleに取り敢えずあった中でオススメのものを紹介しました。これも必須でしょうというものがあれば紹介してください。
一方で冒頭のマネーの拳の名言でもあった通り、「勉強して知識を蓄えてから商売するというのは、 才能のないものの発する言葉だよ。」なので、走りながら考える、本で情報収集をするだけに満足しないことが起業する上では一番大事かなと思います。