米カナダ、G7サミット前に対立先鋭化
関税回避へ「幻の首脳会談」、NAFTA合意寸前で物別れ

トランプ政権
北米
2018/6/5 18:00 (2018/6/5 22:32更新)
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 【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権の強硬な通商政策を巡り、隣国カナダとの対立が先鋭化している。5月末に首脳会談を開いて北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で合意する構想は実現に至らず、米国は関税を発動。カナダは報復関税を打ち出し、トランプ大統領が反論する事態となっている。両国の対立はG7(主要7カ国)の結束やNAFTAの先行きに暗い影を落とす。

 トランプ氏は4日、ツイッターに相次いで投稿し「カナダは米国の農産品にあらゆる貿易障壁を設けている。受け入れられない」などと批判した。鉄鋼とアルミニウムへの関税発動を受け、2日閉幕したG7財務相・中央銀行総裁会議でカナダが米国を批判する議長声明をまとめたことなどへの不満とみられる。

 米政権が5月31日に発表した鉄鋼関税にカナダは猛反発した。トルドー首相は同日すぐに会見を開き「カナダはノルマンディーの海岸からアフガニスタンの山まで米国と共に戦い、死んだ」と歴史を引きながら「安保を口実にした関税は信じられない」と非難した。

 怒りの背景には、トランプ氏が関税の適用除外の条件として求めるNAFTA再交渉の「譲歩」に、応じる構えをみせてきたとの思いがある。

 トルドー氏によると、NAFTAは合意寸前だった。米国が定めた5月末の関税の期限が迫る中、交渉をまとめるためワシントンを訪れようと計画していたという。米国が求める乳製品の市場拡大について「『柔軟性』を示そうとしていた」。

 しかしペンス副大統領から29日に電話があり「『サンセット条項』を事前に受け入れない限りは会談は開かない」と突きつけられた。同条項は5年ごとに協定を更新しない限り自動的に失効する仕組み。協定存続の先行きが不透明になり企業の投資が冷え込むとして「いかなるカナダの首相も署名する可能性はない」と断ったという。

 カナダは7月1日から鉄鋼やアルミ、オレンジジュースなど最大166億カナダドル(約1兆4千億円)の米国産品に最大25%の報復関税を課す。フリーランド外相は「カナダが戦後に取る最強の貿易措置だ」と強調。米経済に悪影響が及ぶと指摘し関税撤回を迫る。

 両国の対立は、トルドー氏が議長を務める8~9日のG7首脳会議でも尾を引きそうだ。米国はメキシコとも対立しており、NAFTAの交渉で妥協点を見いだすのも一段と難しくなった。

 米政権内で穏健派のクドロー国家経済会議委員長は「家族のけんかにすぎない」「トルドー首相は過剰反応しすぎだ」と火消しに躍起だ。今後も交渉次第で関税を外す可能性を示すが、冷え込んだ関係を立て直すのは容易ではない。

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