2016.2.28 (日) 10:00
(出典:Manila Social Club)
まるでジュエル箱から取り出した宝石のように、煌びやかでセレブリティーな光を放つ手の平サイズのリング。今年1月にメディアを騒がせたのは高級ジュエリーではなく、なんとドーナツだった!
Manila Social Clubで販売されている話題のGolden Crystal Ube Donut(1個100ドル、1ダース1000ドル)。毎週金曜日に店でのピックアップ販売のみ。(出典:Manila Social Club)
金のドーナツを発売したのは、ブルックリンの「マニラ・ソーシャルクラブ」というフィリピン料理の影響を受けたファインダイニング・レストラン。同店は、ディナーやブランチのみならずドーナツにもかなり力を入れている。
このドーナツは、贅沢なまでにびっしりと24カラットの金箔が張り付けられており、そのお値段1個100ドル(1万1000円相当)!! クリスタル・シャンパンのアイシングで覆われ、生地には紅山芋のムースとクリスタル・シャンパン・ジェリーが入っている。
試食したニューヨーカーの感想はさまざまで、「食べるとセレブになった気分になれる」というものから、「普通のドーナツの方がなじみがあっておいしい」や「100ドルの価値を感じない」という厳しい意見も。
(出典:Manila Social Club)
同店のエグゼクティブシェフで共同経営者のビョーン・デ・ラ・クルーズさんにより1つひとつが丁寧に手作りされ、毎週金曜日のみの限定販売。最近この金箔ドーナツ以外にも「Ube bae Donut」という、紫色の紅山芋ドーナツを販売し始めたばかり。こちらは1ダース40ドル(個別販売はなし)で金ドーナツよりは手頃だ。
とは言え、40ドルにしても100ドルにしても ドーナツにしてはかなり強気な価格帯。日々のおやつ用として気軽に手が届く値段ではないにせよ、一生に一度の記念や思い出の品としてなら、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ってみるのも悪くない、かも?
全米全体で見てみると、1950年創業の「ダンキンドーナツ」が最も一般的でポピュラーだろう。フランチャイズ化で大成功し、どこの州に行ってもだいたい見かける。
また、日本では人気のクリスピークリームは1937年の創業。かつてニューヨークでも大人気だったがここ10年くらいの間にビジネスが縮小。現在は市内でマンハッタンに1軒残るだけとなっている。
その変わりと言っては何だが、ここ数年でおいしくておしゃれなドーナツ屋が多数台頭し、鎬を削っている。
「Dough」「Doughnut Plant」「Doughnuttery」「Dun-Well Doughnuts」「Leske’s Bakery」「Peter Pan Donut & Pastry Shop」「The Doughnut Project」「Underwest Donuts」…。これらはほんの一部で、ほかにも数えだすとキリがない。
ニューオープンの店や市内の中心部にある店ばかりではないが、どの店も新商品を出したりコーヒーにこだわったりと、手を変え品を変え自社商品をアピール。例えば日本にも支店を持つ「Doughnut Plant」は、今年に入って抹茶やゆずなど日本のフレーバーを使ったシーズナルメニューを期間限定発売し話題となった。
Doughnut PlantのPassion Fruit Donut(1個3ドル50セント)。甘酸っぱいパッションフルーツ味が特徴。
また「The Doughnut Project」と「Peter Pan Donut & Pastry Shop」の2店は、最近『Thrillist』誌により「2016年全米のベスト33」内に選ばれている。前者は昨年秋にオープンしたばかりで、近年のドーナツトレンドを代表するにふさわしい店。オリーブオイルと黒こしょうの「Savory Bronx」などユニークなメニューも豊富。後者は約60年前に創業した老舗で、飾りけのないシンプルでクラシックな味を今も追求している。
金の高級ドーナツもジャパネスクなドーナツもそれらが企画・販売されるに至った背景は、これら近年みられるグルメドーナツの飽和状態が関係しているようにも思える。どの店も話題作りに必死なのだ。
(文:安部かすみ from ニューヨーク)
■紹介店舗の公式サイト一覧
Manila Social Club
Dough
Doughnut Plant
Doughnuttery
Dun-Well Doughnuts
Leske’s Bakery
Peter Pan Donut & Pastry Shop
The Doughnut Project
Underwest Donuts
世界の素敵な暮らしをお届け。『Global Lifestyle』
■取材国:アメリカ
安部かすみ(あべ・かすみ)
2002年に渡米し、在ニューヨークの新聞社でのシニアエディター職を経て、2014年からフリーの編集者、ライターに。ニューヨークから食やエンタメ、テック系などのトレンドを発信中。編集者歴は日米で20年。
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