2016.6.11 (土) 07:00
ニューヨークでプライドパレードが最初に開催されたのは1970年と、歴史は長い(写真は昨年の様子)。
アメリカで毎年6月はLGBTQ(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー、およびこれらにカテゴライズできないジェンダークィア)のプライド月間。
LGBTQの人々はもちろん、そうでない人々も子どもから老人まで世代を超えて、レインボーカラーで染まるこの月を思いっきり楽しむ。
ニューヨークでは毎夏恒例のプライドパレード「The Gay Pride Parade」も開催。今年は6月26日(日)だ。この日LGBTQたちは、マンハッタンのミッドタウン(五番街と36丁目の角)からダウンタウンのウエストビレッジまでの間を、その名の通り「誇りを持って」マーチ(行進)する。
ニューヨークの夏の風物詩としてすっかり定着しているこのパレード。道路脇には、楽しげにレインボーフラッグを振る友人や恋人同士はもちろんのこと、子連れでパレードを見守る姿もよく見かける。「人は皆違って当たり前」「自分らしく」というメッセージを子どものときからこのように楽しげに見る機会があっていいなと思う。そういう子たちって、偏見のない大人に成長するんだろうな、と。
たくさんの人垣!
今年のプライド月間は先月31日、ホワイトハウスを通じてオバマ大統領が例年通りに発表し、キックオフ。今月は全米でパレードのみならず、さまざまな関連イベントが開催される。同大統領は2年前の2014年、LGBTの従業員を差別することを禁じた大統領令にサインもしている。
プライド月間の目指すべきところは言うまでもなく、偏見や先入観なき平等な国家である。プライドパレードもただのお祭り騒ぎではなく、理想の国家実現へのアピールであり、それに向けて前進しようとする一つの姿なのだ。
窓からの声援も。
ゲイバー、ゲイカフェ、ゲイホテル…。ニューヨークでは普段から、街を歩けばさまざまなLGBTQ関連のビジネスやサービスを見かける。また、恋人同士が道端でオープンに(時にロマンチックに)愛情を示し合う姿も、この街ではごくフツウの光景だ。
昨年末に人権団体のHRC(ヒューマンライトキャンペーン)が行った発表でも、ニューヨークは全米でもっともLGBTQにフレンドリーな都市とのこと。
ニューヨークがLGBTQの人々にとって生きやすい街だというのは自明のことである。とは言え、この街(アメリカ全体も含め)が真の平等に到達したわけでは決してない。
昨年、全50州で同性婚が憲法上の権利として認められたアメリカだが、マンハッタンにある文化センター「The Lesbian, Gay, Bisexual & Transgender Community Center」(通称、The Center)のエグゼクティブ・ディレクター、グレンダ・テストーンさんによると「特に若年層を中心にした同性愛者の中で、薬物問題、ホームレス、自殺などの問題が山積みとなっている」とのこと。同性婚の合憲判決は、本来はあるべき人権のひとつが認められただけに過ぎないのだ。
また、ニューヨークのつい最近のニュースとして、トランスジェンダーの従業員や賃貸住宅のテナントに対して、人称代名詞は本人が選んだものを使うことを義務付けるガイドラインがニューヨーク市人権委員会により5月末に発表されている。
例えば、英語で彼/彼女はHe/sheだが、ほかにもZe(複数はHir)という、性別を特定せず使える呼び方がある。今後は本人がそれを希望すれば会社や大家はそれに従わなければならなくなる。違反した場合の罰金は12万5000ドル(日本円で1360万円相当!)。 これらの新しい代名詞はハーバード大学などがすでに導入しており、今後アメリカ全体で使用される機会がもっと増えていきそうだ。
プライド月間中に関連イベントやパレードを体験する機会があれば、これら近年のLGBTQ事情も頭の片隅に置いておくと、もっと彼らへの理解を深められてよいだろう。
The Lesbian, Gay, Bisexual & Transgender Community Center
(文・写真:安部かすみ fromニューヨーク)
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■取材国:アメリカ
安部かすみ(あべ・かすみ)
2002年に渡米し、在ニューヨークの新聞社でのシニアエディター職を経て、2014年からフリーの編集者、ライターに。ニューヨークから食やエンタメ、テック系などのトレンドを発信中。編集者歴は日米で20年。
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