2017.1.11 (水) 07:00
コーヒー……ではない(「Brodo Broth Shop」にて)。
ニューヨーカーといえばその特徴の一つとして、歩きスマホならぬ「歩きコーヒー」というのがある。おしゃれなコーヒータンブラーを持っている人も中にはいるが、主流は使い捨て紙コップ。せっかちなニューヨーカーは、ストリートで電車でオフィスで、いつでもどこでも片手にコーヒーカップを握りしめ、飲みながらスタスタ歩いている。
しかし最近(この寒い時期は特に)、紙コップの中身が「あるもの」にシフトしつつある。
その中身はというと、ここ数年ニューヨークで話題のボーン(骨)ブロスだ。牛や鶏などの骨をグツグツ煮込んだ、あれである。日本だったら、豚骨ラーメンや水炊きのベースとしてよく使われるだろう。それがここ数年ニューヨーカーの間で話題なのだ。
なぜボーンブロスなのか? 注目されているわけを聞くために、昨年5月にオープンしたボーンブロスカフェ「Springbone Kitchen(スプリングボーン・キッチン)」を訪ねた。
2016年5月、マンハッタンのダウンタウン(グリニッチビレッジ)にオープンした「Springbone Kitchen」のボーンブロス。牛、鶏、野菜の各種ブロス(全9種)がそろう。
「ボーンブロスは、コラーゲン、ゼラチン、アミノ酸、ヒアルロン酸などが豊富に含まれています。美肌効果があり、関節や筋肉を強化し、腸の調子を整えて消化を助けたり、免疫力を上げてくれたりするんですよ」と説明するのは、同店のオーナー、ジョーダン・フェルドマンさん。
ジョーダンさんは説明を続ける。
「美肌によいものとしてコールドプレスジュースも話題ですが、それと比べても、ボーンブロスはカロリーや糖分が低く、プロテインが豊富に含まれ、そして値段も安いんですよ!」
これこそが、ボーンブロスが「万能の美容液」と言われている所以(ゆえん)だろう。
この店を開く前、不動産開発をしていたというジョーダンさん(オーナー)。自炊をする間もないほど忙しく、不健康な生活を送っていたという。「あの頃の生活は今では信じられない」と語る。
店のオープンにおいてボーンブロスに着目したきっかけを聞くと、「健康になれることを自ら実感したから」。
「テニスで膝の関節を傷め理学療法士のもとに6ヵ月間通ったが、一向に治らず焦っていました。2年前、友人に勧められてボーンブロスを寝る前に飲み始めたところ、ほんの数週間で膝の調子がよくなったんです。『店をするならこれだ!』と思いました」
ブロスは「チキン」「ビーフ」「野菜」の3種(各5ドル~)。鶏肉は放し飼いされたもの、牛肉は草のみで飼育されたものを使用。いずれもニューヨーク州とペンシルベニア州の契約農家と提携している。
早速、一番人気のチキンブロスの「Liquid Gold」(小6ドル)をいただいた。
オーガニックチキンのボーンブロスにタマネギやニンジン、セロリなどの各野菜、ココナッツミルク、ターメリック、リンゴ酢などが入っている。コクがあり、味わい深くまろやか。フーフーしながら飲み終わると、プハ~ッとほっこりする。極寒のニューヨークで、体の芯から温まった。
ジョーダンさん曰く、ボーンブロスはニューヨークのみならず、ポートランドなど西海岸の各主要都市でもブームなのだとか。
「Springbone Kitchen」では、ボーンブロスのほかに、ホールサムフード(ベジタリアン、ビーガン、グルテンフリー向けの丼ものやハンバーガーなど)も楽しめる。フードメニューの一番人気は、「Grandma’s Chicken Rice」(おばあちゃんのチキンライス、$10.50)。ジョーダンさんのポーランドにルーツを持つ祖母のレシピで作られたもの。
そもそも、ボーンブロスは誰でも自宅で手作りできるもの。ジョーダンさんに、うまく作るコツを聞いた。
「特に初心者は、簡単な鶏肉のブロスから始めるといいでしょう。フレーバーが豊かなので、どのように調理してもおいしく作れます。フレーバーは少ないけど健康の利点から考えると、ゼラチンの豊富な首もしくは足の部位は必ず入れること。見た目は気持ち悪いけど、そこはがんばるしかないです(笑)。もしくは、チキンの丸焼きを食べた後の骨を捨てずに使うのもいいでしょう。どちらにせよ、煮込んだりして約1日がかりの作業になります。またいい食材(骨)を調達することも大切です。作るのが面倒という方は…ぜひうちのカフェに寄ってください!」
ニューヨークを訪れることがあれば、温か〜いブロス・カップ片手に、ニューヨーカーよろしく街を闊歩してみてはいかがだろうか。
■「Springbone Kitchen」そのほかのイメージ
■まだあるNY市内のボーンブロス店
Springbone Kitchen
Brodo Broth Shop
Marlow & Daughters
(文・写真:安部かすみ fromニューヨーク)
世界の素敵な暮らしをお届け。『Global Lifestyle』
「ニューヨーク」の記事をもっと読む
■取材国:アメリカ・ニューヨーク
安部かすみ(あべ・かすみ)
2002年に渡米し、在ニューヨークの新聞社でのシニアエディター職を経て、2014年からフリーの編集者、ライターに。ニューヨークから食やエンタメ、テック系などのトレンドを発信中。編集者歴は日米で20年。
関連タグ
この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。
漫画『スラムダンク』新装再編版が6月1日より刊行開始! 井上雄彦がカバーイラスト描き下ろし
東京駅の新土産「PRESS BUTTER SAND(プレスバターサンド)」。行列必至の工房をレポート
部屋が見違えるほどオシャレに!? 書店員が教える、本棚レイアウトのテクニック5つ
「ルーヴル美術館展」国立新美術館で5月30日から。《美しきナーニ》ほか約110点が集結